情報セキュリティ
公開日:2017年10月2日
最終更新日:2024年12月10日
独立行政法人情報処理推進機構
セキュリティセンター
ガイド別冊:第2版(2023年12月版)を公開しました。更新内容については資料のダウンロードをご覧ください。
IPAセキュリティセンターは、重要インフラや産業システムの基盤となっている制御システムのセキュリティを抜本的に向上させるのに重要な位置付けとなるセキュリティリスク分析を、事業者が実施できるようにするためのガイドを作成し、公開しました。
従来、制御システムは固有のシステムで構成され、外部ネットワークや情報系システムとは接続されていなかったことから、セキュリティの脅威は殆ど意識されてきませんでした。しかし近年、WindowsやUNIXといった汎用のプラットフォームや通信プロトコルの活用、ネットワークや外部メディアの利用といった環境の変化の下で、セキュリティ脅威の増大と実際のサイバー攻撃事案の発生が増加してきており、一方で制御システムは社会や産業における重要なインフラとしての位置付けも大きくなっており、そのセキュリティへの対応の重要性が非常に高まっています。
この様な状況を受け、IPAでは2008年より制御システムにおけるセキュリティへの対応状況と基準や評価認証制度に関して調査を開始し、セキュリティ基準であるIEC 62443の活用の推進やそれをベースとした評価認証制度の立上げ等を推進してきました(脚注1)。また、2014年からは、様々な分野の重要インフラを支える制御システムのセキュリティリスク分析を実施してきました(脚注2)(脚注3)。
これらの活動を通して、システムのセキュリティレベルの抜本的な向上を図るのに不可欠な位置付けにあるセキュリティリスク分析が、制御システム分野や重要インフラに関わる多くの事業者において、十分もしくは詳細には実施されていないのが実態であることが分かってきました。その背景には、脅威の実認識やセキュリティ投資といった経営的な側面もあるものと推察していますが、もう一方には以下の様な根源的な課題もあると推測されます。
【課題A】リスク分析の具体的な手法や手順が分からない
【課題B】リスク分析には膨大な工数を要する(と言われている)ので回避したい
この点を解決したい、というのが、本ガイド策定の背景となっています。
本ガイドによって制御システムを活用する事業者のセキュリティリスク分析への理解が深まって、制御システムのリスク分析に取り組んでいく組織が増加すること、結果として各組織におけるセキュリティレベルの抜本的な向上と継続的な維持見直しが達成されることを期待します。本書は制御システムのセキュリティリスク分析のガイドの位置付けですが、詳細リスク分析の手法自体は、情報システムでも共通であり、情報システムのリスク分析においても参考になるものと考えます。また、9章の特定セキュリティ対策は、全てのシステムのセキュリティ検討に適用が可能です。
なお、本書は、2017年4月1日にIPA内に発足しました「産業サイバーセキュリティセンター」(脚注4)における人材育成事業や安全性・信頼性検証事業等において、教育の素材としても活用しています。
本ガイドは、以下を目的としています。
本ガイドでは、各システム資産に対する精緻な評価、及び攻撃者視点での実際の攻撃シナリオの評価の観点から、以下の2通りの詳細リスク分析の手法を解説しています。一方だけでもそれぞれで有効な評価結果が得られますが、相互補完的な役割も果たしています。この2手法はIPAが実システムで適用した手法を解説しており、特に(2)の手法に関しては具体的な手引きが他に存在していませんので、詳細に解説しています。
(1)資産ベースのリスク分析
保護すべきシステムを構成する各資産を対象に、その重要度(価値)、想定される脅威の発生可能性、
脅威に対する脆弱性の3つを評価指標として、リスクを評価する分析手法。
(2)事業被害ベースのリスク分析(攻撃シナリオと攻撃ツリーによる分析)
システムで実現している事業やサービスに対して、事業被害とそのレベル、事業被害を引き起こす攻撃ツリーの発生可能性、攻撃に対する脆弱性の3つを評価指標として、リスクを評価する分析手法。
両リスク分析において、リスク分析は資産の数やシステムの複雑さや攻撃ルートの網羅で大きな工数が必要となりますが、本ガイドでは、リスク分析の実施にあたって、資産のグループ化の方法や評価すべき攻撃ルートの絞り込み方法の考え方も合わせて解説することで、工数削減の実現を図っています。
本ガイドでは、モデルシステムに対するリスク分析を実際に実施していく具体的な手順を解説することで前述の【課題A】に、また、リスク分析を補助する以下の素材を提供することで【課題B】に応えるようにしています。
本ガイドではリスク分析結果の活用方法として、リスク値の解釈、及びリスク低減のための対策強化策の検討方法を解説しています。また、リスク分析後に必要に応じて実施を検討することが考えられるセキュリティテストに関しても解説しています。
本ガイドの活用促進のため、制御システムを保有する事業者向けにセミナーを実施しています。
制御システムのセキュリティリスク分析ガイド 第2版
ガイド別冊:制御システムに対するリスク分析の実施例 第2版
補足資料:「制御システム関連のサイバーインシデント事例」シリーズ
早分かり 活用の手引き 第2版
2017年10月に公開した第1版を基に、制御システムのリスク分析を実施する事業者(内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が定めた重要インフラ分野のうち数業界の各1~2事業者)を、IPAは支援してきました。ここで得られたフィードバックや寄せられたご意見・改善点を反映しました。
資産ベースのリスク分析 - 分析手法の簡略化による工数の削減
第2版では、事前準備段階で資産のグループ化を一括実施すると共に、資産種別のみを基に各々の資産に対する脅威と対策候補を抽出することで、分析手順を簡略化して工数を削減できるよう、分析の方法を見直しました。
事業被害ベースのリスク分析 - 分析対象の選定基準の提示による工数の削減
第2版では、攻撃が成功した場合の事業被害が大きく、攻撃者に狙われる可能性が高い重要な攻撃ツリーを選定して、優先的に分析を行うことで、分析の有用性を確保しつつ工数を削減できるよう、分析の方法を見直しました。
リスク分析における基本的な評価指標とその評価値、リスク分析を実施した結果得られるリスク値(リスクレベル)の意味を厳密に定義しました。
IPA セキュリティセンター
2024年12月10日
『制御システムのセキュリティリスク分析ガイド』 と国際規格との比較を公開
2023年12月1日
ガイド別冊 第2版(2023年3月版)を公開
2023年3月27日
ガイド本冊 第2版(2023年3月版)、ガイド別冊 第2版(2023年3月版)、活用の手引き 第2版(2023年3月版)を公開
2022年9月30日
ガイド別冊:制御システムに対するリスク分析の実施例 第2版(英語版)を公開
2021年4月26日
IPAリスク分析手法の紹介(英語版)を公開、セミナーページへのリンクを修正
2021年3月12日
製本版の価格を総額表示に修正
2020年3月16日
ガイド本冊 第2版(2020年3月版)、ガイド別冊 第2版(2020年3月版)を公開
2019年10月28日
活用の手引き 第2版(英語版)を公開
2019年9月18日
セミナーお申込み受付終了を掲載
2019年7月31日
補足資料:「制御システム関連のサイバーインシデント事例」シリーズを公開