1989年に記念すべき1作目がリリースされて以降、時代と共に様々なプラットフォームを舞台に活躍を続けてきた『サガ』シリーズ。その歩みは途絶えることなく、2024年にも完全新作『サガ エメラルド ビヨンド』が登場するなど、その展開は今もなお続いています。
実に35年もの歴史を積み重ねてきたシリーズですが、過去作の中でも独特の切り口で話題となり、他に類を見ない唯一無二の作品として知られているのが、1993年に発売された『ロマンシング サ・ガ2』(以下、ロマサガ2)です。
シリーズの特徴を受け継ぎつつ、色濃く独自性も備えたこの作品は、ファンの間で長らく語り続けられただけでなく、2010年には携帯電話向けのアプリ版が、2016年にはスマホやPS Vitaで遊べるリマスター版が登場。さらに2017年には、リマスター版がニンテンドースイッチやPS4といった現行機にも進出し、時代を超えてなお愛される『ロマサガ2』の人気ぶりを示しました。
そして、来る2024年10月24日、『ロマサガ2』初のフルリメイク作品となる『ロマンシング・サガ2 リベンジオブセブン』(以下、ロマサガ2 ROTS)が、ニンテンドースイッチ/PS5/PS4向けにリリースされます(Steam版は10月25日配信)。往年の名作はファン待望のリメイク化を迎え、今一度新たな形で復活を迎えました。
オリジナル版から数えて31年越しの登場となる『ロマサガ2 ROTS』は、スーパーファミコン版やリマスター版を遊んだ人にとっては懐かしく、その名を知りつつも未経験のユーザーにとっては興味深い1作として映っていることでしょう。
果たして『ロマサガ2 ROTS』は、どのような魅力を放ち、いかなるプレイ感を与えてくれるのか。発売に先駆けて本作を遊ぶ機会に恵まれたので、その実体験を通じて、本作が持つ特徴や魅力をレポートとしてお届けします。
なお、今回プレイしたのはPS5版です。また、プレイする際の楽しみを奪わないよう、物語についての言及は序盤の展開に留めますが、そこまでのネタバレを一部含んでいるのでご注意ください。
■『ロマサガ2 ROTS』の主人公は「皇帝」であり、歴史そのもの
一般的なRPGは、主人公やその仲間たちを深く描き、彼らが立ち向かう冒険の一部始終を描写することがほとんどです。これは『サガ』シリーズにおいても概ね当てはまり、過去作の多くは主要人物を中心に物語が描かれてきました。
しかし、『ロマサガ2』──ひいては『ロマサガ2 ROTS』の主人公は流動的で、特定の個人だけをひたすら描き続けるゲームではありません。本作の主人公は、バレンヌ帝国を治める「皇帝」の地位に就くもの。逆を言えば、(選択可能な)誰であっても「皇帝」になれば、その時代の主役を務めることになります。
ゲーム開始当初こそ「レオン」が皇帝を務め、第二皇子の「ジェラール」が後にその座を引き継ぎます。しかし、ジェラールから後の皇帝は、ゲーム的に定められていません。候補となるキャラクターの中から、プレイヤーが任意で次代の皇帝を決定します。
つまり本作の主人公は、特定の個人ではなく代々の皇帝であり、プレイヤーはその長い歴史を俯瞰で見る立場にあります。その意味では、主人公は個人ではなく「帝国の歴史」そのものと言ってもいいかもしれません。
■「皇帝」として、いかに版図を広げるのか
また本作の自由度は、主人公の選択だけに留まらず、物語の展開にすら介入できる余地があります。大まかなゲーム進行としては、帝国が版図を広げるのがひとつの目安になりますが、半島状の「北バレンヌ」が最初の領土なので、まずは隣接する「南バレンヌ」への進出から始まります。
マップ上に描かれた街道を辿っていくと、南バレンヌの中で最も近く、北ロンギット地方と隣接する「ヴィクトール運河」を攻略するのが、地理的に見て順当な展開と思われます。
しかしプレイヤーの判断次第で、さらに南方に位置する「ニーベル」やルドン地方に進み、飛び地のように版図を広げることも可能です。実際に今回のプレイでも、筆者はニーベルを攻略し、格闘家を仲間に加えて勢力を伸ばしました。実際の統治として考えると不便この上ないでしょうが、「自分なりの帝国史を刻めた」と妙な満足感を覚えます。
ちなみに、ニーベルを領地とするやり方もひとつだけではありません。かの地で支持を集めている格闘家たちの面子を保つようにこちらが動けば、彼らから前向きな協力を得ることができます。
一方で、格闘家たちの要請を聞き入れず、住民からの信頼を帝国がもぎ取ることもでき、その場合もニーベルが帝国の統治下に納まります。この流れだと格闘家たちの協力を得ることはできませんが、彼らが倒すはずだったボスモンスターを討伐し、アイテムを入手することが可能です。