- HOME
- 雑誌
- BRAIN and NERVE
- BRAIN and NERVE Vol.76 No.9
特集 治療可能な認知症としてのアルツハイマー病
ISSN | 1881-6096 |
---|---|
定価 | 3,080円 (本体2,800円+税) |
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 特集の意図
- 収録内容
特集の意図
開く
特集 治療可能な認知症としてのアルツハイマー病
アルツハイマー病治療は新たな夜明けを迎えている。2023年9月に国内で初めてアルツハイマー病疾患修飾薬であるレカネマブが承認され,2024年7月の時点ですでに2,800例以上の人に投与が始められている。2024年7月にはdonanemabが米国で承認され,本邦でも今後の承認が見込まれており,これら新規薬剤への期待は大きい。レカネマブの投与には早期診断が必要であることから,患者は早期から病名告知を受けることになり,適切な支援が不可欠である。また,アミロイド関連画像異常(ARIA)など副作用への対策が求められ,APOE遺伝子検査をめぐる臨床倫理上の課題もある。新時代に対応した診療のストラテジーを構築したい。
アルツハイマー病疾患修飾薬の現状 佐藤謙一郎 , 岩坪 威
超高齢社会にあって,アルツハイマー病に対する疾患修飾療法の開発が急務とされてきたが,2023年になってようやく,抗アミロイド抗体薬が正式に医薬品として承認されるようになってきた。本論では,抗アミロイド抗体薬のうち特にaducanumab,レカネマブ,donanemab,remternetug,trontinemabについてこれまでの開発・臨床実用の状況,課題や今後の展望などについて概説する。
レカネマブの光と影—早期受診者への診断後支援 津野田尚子 , 橋本 衛
レカネマブの登場は患者や家族のみならず社会全体の希望の光である。しかしレカネマブの効果には限界があり,さらに治療対象者への告知が必要となるため,早期診断,早期絶望がこれまで以上に強調され,患者の人生に影を落とすことが懸念される。このような状況において,レカネマブ治療によって延長する “認知症患者として生きる時間” を,可能な限り有意義なものにするための診断後支援が重要視されている。本論では,早期受診者への診断後支援として筆者が取り組んでいる「軽度認知症患者,家族へのピアサポート活動」を紹介する。
アルツハイマー病疾患修飾薬の適応と効果判定 岩田 淳
抗アミロイドβ抗体薬レカネマブが上市され,新しいアルツハイマー病治療が始まった。いままでの認知症医療とは異なり診断方法,評価方法,そして副作用,どれも新しい概念での投与が必要な薬剤である。特に,進行を止める薬剤でない以上その薬効の評価は極めて重要な課題となる。厚生労働省発出の最適使用推進ガイドラインを紹介しながら私見も交えて今後の課題を議論していきたい。
アルツハイマー病疾患修飾薬によるアミロイド関連画像異常(ARIA)の病態と対策 冨本秀和
抗アミロイドβ抗体薬レカネマブの副作用として,アミロイド関連画像異常(amyloid-related imaging abnormalities:ARIA)がある。治療対象の患者の約2割で認められ,大部分は無症候であるが一部の患者で重篤化する場合があり,その管理・対策が課題として残る。本論では,ARIAの関連病態や発生機序について考察しその対策について概説する。
アミロイドPETの臨床実装—アルツハイマー病の診断と治療における最新知見と実践的アプローチ 木村篤史 , 島田 斉
アミロイドPETは,アルツハイマー病の早期診断と疾患修飾薬の適応判断において重要な役割を果たす。高感度・特異度,低侵襲性,空間的評価能力といった利点をもち,認知症医療の最適化に貢献するが,限界を理解したうえでの適切な使用と結果の解釈が不可欠である。無症候者への適応には慎重な判断が必要だが,前臨床期における先制医療や個人の高精度リスク推定が確立すれば,臨床的意義がさらに拡大する可能性がある。
抗アミロイドβ療法時代のAPOE遺伝子検査の意義と対応 下畑享良
アルツハイマー病の日常診療において,APOE遺伝子検査はこれまで推奨されるものではなかったが,抗アミロイドβ療法の安全性に関する情報を提供することから重要な意義を持つようになった。このため米国のレカネマブの適正使用ガイドラインでは,APOE遺伝子検査を施行すべきと明記してある。しかしその施行に伴い,臨床倫理的,法的,経済的問題が生じ得る。本邦でもこれらの問題にどのように対応するか包括的議論を開始すべきである。
タウPET—各種疾患における応用 高畑圭輔 , 久保田 学 , 黒瀬 心 , 樋口真人
タウPETは,タウ凝集体に対して選択的に結合するトレーサーを用いて脳内タウ沈着を可視化する病態イメージング法である。2010年代初期に最初のタウPET薬が撮像されて以降,さまざまな改良が重ねられている。タウPETはアルツハイマー病およびその他のタウオパチーの診断や予後予測に有用である。しかし,タウPET薬の結合プロファイルは疾患によって大きく異なるため,タウPET所見の解釈に際しては疾患ごとの特性を理解しておく必要がある。
血液バイオマーカーの現状と展望 池内 健
次世代の認知症診断ツールとして血液バイオマーカーの臨床実装が期待されている。血漿アミロイドβ比率とリン酸化タウは,アルツハイマー病で生じる脳内病理を反映する血液バイオマーカーである。また神経変性,神経炎症を反映する血液バイオマーカーの開発が進んでいる。血液バイオマーカーの課題として,検査の頑強性や交絡因子の存在がある。汎用性がある血液バイオマーカーは,認知症診療の中で適正に活用される必要がある。
アルツハイマー病に対する新たな治療戦略 富田泰輔
アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)患者脳の病理学的特徴である老人斑および神経原線維変化の生化学的解析を嚆矢とした分子病態の理解と,家族性ADの解析に始まる遺伝学的解析が相まって,アミロイドβ(Aβ)の凝集および蓄積がAD発症機構における重要なプロセスの1つであることを示した。凝集Aβに対するレカネマブの成功はその結実とも言える。一方,ADおよび各種タウオパチーの原因分子としてのタウに対する創薬研究が徐々に進みつつある。さらに遺伝学的解析から示唆されたグリア細胞の炎症応答がAD病態の修飾因子であることが明確となり,炎症制御という新たな治療戦略も考えられるようになった。本論においてはこれらADに対する新たな治療戦略について最新の知見をまとめる。
アルツハイマー病以外の認知症に対する疾患修飾薬 宮崎峻弘 , 東 晋二 , 新井哲明
認知症の原因の多くを占める神経変性疾患では,蛋白質の凝集が病理機序の上流にあり,疾患修飾薬の開発における治療標的となっている。アルツハイマー病以外の神経変性疾患では,特にα-シヌクレインとTDP-43が原因凝集蛋白質としての頻度が高い。α-シヌクレインではいくつかの免疫療法の臨床治験が第Ⅱ相まで進んでおり,他にも低分子療法の開発も行われている。一方でTDP-43では凝集蛋白質を標的とする免疫はまだ研究段階であるが,関連原因遺伝子を対象にした治療薬開発がいくつか行われている。どちらの疾患修飾薬も,効果判定のためのバイオマーカー検査の開発が必要であり,まだ多くの課題を残しているが,両蛋白ともに多くの認知症性神経変性疾患例の脳内に凝集蓄積することからその治療的意義は高く,今後の研究開発の進展が期待される。
収録内容
開く
医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 治療可能な認知症としてのアルツハイマー病
アルツハイマー病疾患修飾薬の現状
佐藤謙一郎,岩坪 威
レカネマブの光と影──早期受診者への診断後支援
津野田尚子,橋本 衛
アルツハイマー病疾患修飾薬の適応と効果判定
岩田 淳
アルツハイマー病疾患修飾薬によるアミロイド関連画像異常(ARIA)の病態と対策
冨本秀和
アミロイドPETの臨床実装──アルツハイマー病の診断と治療における最新知見と実践的アプローチ
木村篤史,島田 斉
抗アミロイドβ療法時代のAPOE遺伝子検査の意義と対応
下畑享良
タウPET──各種疾患における応用
高畑圭輔,他
血液バイオマーカーの現状と展望
池内 健
アルツハイマー病に対する新たな治療戦略
富田泰輔
アルツハイマー病以外の認知症に対する疾患修飾薬
宮崎峻弘,他
■総説
神経疾患の画像サイン
百島祐貴
●スーパー臨床神経病理カンファレンス
第8回 15年にわたる緩徐進行性の認知症を伴う小脳性運動失調を認めた55歳女性例
鈴木幹也,他
●原著・過去の論文から学ぶ
第6回 疾患概念の確立は症例報告から始まる──筋萎縮性側索硬化症と前頭側頭葉変性症──湯浅・三山病
吉田眞理
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。