安全に狂う方法
アディクションから掴(つか)みとったこと
人を殺すか自殺するしかないと思った。
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そんなわたしに女性セラピストは、このうえない毅然さと丁寧さでこう言った。「あなたには、安全に狂う必要が、あります」──そう、自分を殺しそうになってまで救いたい自分がいたのだ。そんな自分をレスキューする方法があったのだ。著者はあらゆる生きづらさの底にアディクションを発見するが、「アディクション=依存症」ではないと言う。それは物との恋愛であり、思考への固着なのだと。愛と思考とアディクションをめぐる感動の旅路!
シリーズ | シリーズ ケアをひらく |
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著 | 赤坂 真理 |
発行 | 2024年06月判型:A5頁:260 |
ISBN | 978-4-260-05693-9 |
定価 | 2,200円 (本体2,000円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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プロローグ 魂を救うこと
人を殺しそうになったことがある
それをしないためには死ぬしかない
そう思いつめたことがある
でも本当に死にそうになったとき
命はどこまでも生きていた
けなげにかわいく
変わり果てた姿でもかわいく
過去も未来もなく
今輝いていた
ふるえていた
わたしひとり
ただ脆弱な皮膚につつまれて
ああごめんなさいわたし
わたしは死にたいというか
生きてませんでした
ごめんなさいわたし
わたしの
魂
必ず救います
“なんで真理さんは身体を使った表現をするようになったのですか?”
と聞かれて
うまく答えられなかった
でもこういうことが関係あるのはまちがいない
自分のためのレスキュー
きっとほんとは自作自演
必死の自作自演
死ぬかもしれない自作自演
自分のためのレスキュー
そうして助けを呼びこむこと
それがどういうかたちをとるかは
本人にもわからなく
わからないなりに必然
必然のアイコニックな姿をとって
わたしの前に現れる
わたしが
わたしを殺しそうになったのは
わたしの執着(アディクション)
しかしわたしを殺しそうになってまで
救いたいわたしがいたのだ
アディクションを考えることは
実に
複雑で
誤作動多き人類の取り扱い説明書を
手探りでつくるようなこと
わたしのすることはそういうこと
目次
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プロローグ 魂を救うこと
第一章 アディクションの世界
1 依存症とアディクション
2 なりたいものにすぐなれる
第二章 わたしはひとりのアディクトである
1 愛と思考とアディクション
2 あなたには、安全に狂う必要が、あります
3 ひと夏の食と石牟礼道子
4 愛の技術
第三章 なじめない人たち
1 失われた楽園
2 祭りのような何か
3 仮面を付けること、取ること
4 この刃を自分に向けていた
5 祝福の旅
第四章 浮遊霊よ、表現すればいい
1 インターネットという人災
2 浮遊霊が生き霊に変わるとき
3 生き霊を社会が引き受けるために
4 表現への渇望がスパークする
第五章 祝祭へ
1 めばがくれた詩
2 死にながら生きる方法
3 うっかり神はやってくる
あとがき
書評
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新聞で紹介されました
《自殺の回避のために、「時間をかけて死にながら、生きる」「小さく死んで生き延びる」といった逆説的な方法を提示して、生きる意味をつつましくも毅然と説いた。》──伊古田俊夫(脳神経外科医)
(『北海道新聞』2024年7月28日「読書ナビ」より)
雑誌で紹介されました
《目の前の時間を消したいと思うことは、私にも覚えのある事だった。指で時計の針を押し進めるように、この時間から逃れたいと思うことがよくある。私の場合は、それをタバコや睡眠に引き渡す。……〈アディクションとは、死にながら生きる、そんな複雑な方法だ〉と著者は言う。》──伊藤亜和(文筆業・モデル)
(『AERA』2024年8月5日号より)
Webで紹介されました
『Addiction Report』で、著者赤坂真理さんへの3回にわたるロングインタビューが掲載されました。
インタビュアーは編集長の岩永直子氏。
《「依存症者」はだらしないとか、ダメ人間だとか、世間が持つイメージというのは、ことごとく違っています。……私がアディクトを好きなのは、彼らが弱さでつながっているからです。》
(第1回 「回復」に殺されないために──アディクションの手段を持たない作家の赤坂真理さんが探す「安全に狂う方法」より)
《アディクションは人類最古のトラブルだと思うのです。恋でも愛でもいいですが、何かに囚われる。……書き終えて自分自身楽になりました。なんであんなに悩んでいたのかなと。》
(第2回 人生を諦めていないのがアディクト──「依存は『切ない努力』なのだと理解してほしい」より)
《わたしは、自分と似た心の動きを、犯罪者の手記に見つけることになります。中でも「黒子のバスケ」脅迫事件の渡邊博史受刑者は、途中まで自分かと思ったくらい。》
(第3回 必要なのは、身体を使うこと、他者との関わりより)