家売るオンナ 第2話のあらすじとコラムです。引きこもりが1LDKの部屋を貸し出すことで、100歳までサバイバル可能と提案する三軒家 万智(北川景子)。本当に引きこもりニートはサバイバル可能なのか?不動産投資の観点から検証していきます。
更新日:2016年08月18日
イエシルコラム編集部
株式会社リブセンス
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・北川景子演じるチーフの三軒家 万智(さんげんや まち)は、テーコー不動産の新宿営業所でチーフを務める凄腕の営業マン。ちっとも家が売れない部下の営業マン庭野を毎日叱っているが、なかなか成果が出ない。そんな庭野に、ある日1本の電話が。住替えを考えているという城ヶ崎夫婦のアポを取り付け、実際に売却査定のため家に訪問する庭野。
・城ヶ崎家は綺麗な一軒家で、査定金額は5000万円ほど。しかし不審な点がいくつか。2Fからはトイレの水が流れる音がするし、開かずの間があって見せてもらえない。
・実は引きこもりの息子、良樹が開かずの間に住んでいた。20年前に仕事で失敗して以来、ひきこもりニートになり、両親も顔を見たのは20年ぶり。オッサンになっていて両親が見ても誰か分からない状態。
・息子のために、自分たちが死んだ後の生活を確保してあげたいと願う城ヶ崎夫婦。北川景子演じるチーフの三軒家 万智(さんげんや まち)は、住み替えプランとして2LDK2500万と1LDK2000万の中古マンションの購入を提案。
・単純にお金を残すだけでなく、城ヶ崎夫婦がいなくなった後も餓死せず生きていけることが大事、100年引きこもれる「最強サバイバルプラン」が必要だと力説する三軒家(北川景子)。
・2LDKに自分たちが住み、1LDKの部屋を賃貸として貸し出すことで、月11万の家賃収入を得て、生活基盤を作ることが大事だと三軒家(北川景子)。引きこもりの良樹と直接対峙して提案し、合意を得る。(良樹はダンボールの中にこもって対話)
・実は引きこもりブロガーYOSHIKIとしてブログを書いていた良樹。最強サバイバルプランで1LDKを貸し出し、引きこもり大家ブロガーとなることを決意し、住替えを決定。ただし人とは絶対に会いたくないので、引っ越しは親と荷物が日中に引っ越し、良樹は深夜に徒歩で引っ越し。
・3年後、引きこもり評論家としてベストセラー作家になる良樹。TVの取材を受けて満面の笑みを浮かべてハッピーエンド。
・社会人になった後、20年間引きこもっていた(築20年以上)
・査定金額は5000万
・間取りは3LDK~4LDKと思われる
以上の条件であてはまるエリアを調べてみると、
一番物件数が多いのは世田谷区。次に練馬区、大田区、杉並区と続きます。
新宿店に電話が来たことを考えると、おそらく世田谷区に住んでいたと思われます。
現在似た条件で売りが出ているのは、世田谷区の桜2丁目や船橋1丁目、桜丘3丁目など。
小田急線の経堂または千歳船橋のあたりにある可能性が高いです。
住み替えで購入した2500万の物件は、どのようなものがあるのでしょうか?
対人恐怖症で、誰にも合わないように夜中に引っ越しをしていたことから、
新しい物件は徒歩で歩いていける距離にあると思われます。
経堂や千歳船橋近辺で、2500万円の2LDKだと、たとえばこのような物件があります。
※実際に売却している物件ではありません。
※売却時の査定金額ではなく、イエシル独自の参考査定価格です。
もしこのようなマンションを買ったとすると、
新築価格で3600万程度のものを、2500万で購入したことになります。
築20年を超えて価格の下落も穏やかになっていますし、
建物価格が減っても世田谷エリアなら土地としての価値が残りますから、
資産価値としても比較的安定していると言えるでしょう。
家売るオンナ第2話の中では、北川景子演じる三軒家 万智(さんげんや まち)が
「100歳まで引きこもれるサバイバルプラン」として、
・2LDKを自宅として居住
・お隣の1LDKを家賃11万で貸し出す
というプランを提案していました。
それでは、実際にこのプランで生活することは可能なのでしょうか?
■表面利回りと実質利回り(ネット利回り)とは
家賃11万というと、年間で132万円の家賃収入になるので、
利回りは家賃収入132万÷物件価格2000万=6.6%となります。
銀行の利息がほとんどゼロですから、比較すると非常に高い利回りに見えますね。
ところがこの6.6%という利回りは、「表面利回り」と言って、
・一切の経費がかからず
・退去などが全く起こらなかった場合
の利回りなので、現実的には達成できない数字です。
そこで実際の不動産投資の時には、
・もろもろかかる経費と
・退去による空室期間
などを加味した上での、「実質利回り」を算出して、採算を考えます。
■管理費 (建物管理)
今回買うのはマンション1棟ではなく、1部屋ずつの区分マンションなので、マンションの管理規約で決められた管理費が毎月かかります。
管理費は建物の居住環境や共有設備を維持するため、管理人の人件費や清掃費、大規模修繕などに使われます。
設備が豪華になったり築年数が古くなるほど、維持管理にお金がかかるので管理費は高くなりますが、今回は毎月1万円と仮定します。
■管理費 (賃貸管理)
また建物を管理する費用とは別に、賃貸管理するための管理費も必要です。賃貸物件として不動産屋にお客さんの募集やクレーム対応をしてもらうためには、不動産屋に管理会社として管理をお願いする必要があります。この時の管理費はだいたい家賃の5%程度なので、家賃11万の部屋なら毎月5500円ほどです。
(今回は大家として隣の部屋に住んでいるので、管理会社にお願いせず、自主管理を行うことで管理費を浮かすことも可能ですが、引きこもりということなので自分で対応することは難しいでしょう)
■固定資産税
さらに不動産を持っている場合、固定資産税が毎年かかります。
固定資産税は土地・建物それぞれ別にかかってくるため、毎年の評価額によって変わりますが、今回は毎年5万円とします。
家賃11万でずっと退去がなければ、年間の家賃は132万円ですが、
実際には引っ越しによる退去があり、その後は空室期間が発生します。
各エリアの空室率は、総務省統計局の住宅・土地統計調査から調べられますが、
今回は簡単のため20%とします。
年間の家賃収入=11万×(1-空室率20%)×12ヶ月=105.6万円
賃貸を行う上での年間費用は、先ほど求めたように
管理費(建物管理):1万円×12ヶ月=12万円
管理費(賃貸管理):5500円×(1-空室率20%)×12ヶ月=5.28万円
固定資産税:5万円
ですので、家賃収入からこれらの費用を引くと、
トータル83.32万円が手元に残る収益になります。
この収益を物件価格で割り戻した利回りが、実質利回り(ネット利回り)と呼ばれるものです。
実質利回り:83.32万÷物件価格2000万=4.16%
このように、表面利回り6.6%の物件でも、手元に残るのは実質利回り4.16%となりますので、物件を購入する時は表面利回りだけで判断しないことが必要です。
年間の収益83.32万円は、月間で言うと6.94万。
つまり、家賃11万の部屋を貸しても、実際に手元に残るのは6万9400円だけ!
しっかり計算しておかないと、いざというときお金が足りない事態になりますので注意しましょう。
それでは、年間83万円の手残りで、日々の生活費はまかなえるのでしょうか。
生活していくうえで次のような費用が発生したとして試算してみましょう。
国民健康保険料:9.3万/年
住民税:1.7万/年
所得税:4.1万/年
光熱費:12万円/年
通信費:12万円/年
自宅(2LDK)の管理費:12万円/年
自宅(2LDK)の固定資産税:6万円/年
これらの合計は約57万円。
83万円の手残りから57万を引くと、残りは26万円になります。
年間で26万円なので、月に直すと約2万2000円ほど。
この月額2万強で、食費や雑費、嗜好品などすべてを賄わなくてはなりません。
一人暮らしの大学生の食費は平均2万7000円という調査もあるので、
家賃収入11万だけでは、かなりつつましい生活となるでしょう。
当然、自炊は必須。家族と顔を合わせたくないなら、ダンボールをかぶって料理するしか手はありません。
また、趣味の買い物などは厳禁。食費以外のことにはお金を一切使わないぐらいで、ようやく生活していけそうです。
もちろん、収入が低いので生活保護を検討する、両親が亡くなるまでは経費を負担してもらうなど、多少マシになる手段はありそうですが、単純に1LDKの家賃だけで暮らしていくことは難しいでしょう。
さらに10年、20年単位で先を考えると、
・建物の老朽化による取り壊し
・築古物件になることにより、貸しても売っても価格が下落
・高齢により医療費が増大
など、リスクは増えていきますので、ドラマのようにベストセラー作家にならないかぎり、ひきこもり生活が破綻すると言えそうです。
【結論】無理。
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