─ 安倍×プーチン 北方領土交渉の真相
北方領土問題の解決を目指し、積み重ねた27回の首脳会談
安倍とプーチンは、なぜ歩み寄れなかったのか
激動の10年間を最前線で追い続けた北海道新聞取材班の記録―
第1章
一気に返還、外れた目算
2018年11月14日。安倍はプーチンとの会談で、対ロ外交の歴史的な転換に踏み切る。それは女房役の菅もいない密室で決められていた。
- 序章 安倍の告白
- プロローグ
- 1話 2分の会見
- 2話 隠された方針転換
- 3話 割れた報道
- 4話 無条件の平和条約締結
- 5話 会見後の電話
- 6話 密室の決定
- 7話 まさかの選択
- 8話 読み違えたシグナル
- 9話 プーチン提案の真意
- 10話 引き渡しの条件
- 11話 広がる楽観論
- 12話 河野の釈明
- 13話 「オキナワ」発言
- 14話 想定外の抗議
- 15話 相次ぐ「前提条件」
- 16話 譲れぬ主張
- 17話 故郷シコタン
- 18話 プーチンの回答
- 19話 幻の共同声明案
- 20話 ロシアへの「配慮」
- 21話 中国の影
- 22話 失われたテンポ
- 23話 四島経済活動の壁
- 24話 渡航枠組みで対立
- 25話 妥協のプレス発表
- 26話 広がる脱力感
第2章
関係強化、プーチンの誘い
シンガポール会談の6年前。安倍は、日本の首相として10年ぶりの公式訪ロを果たし、対ロ外交に前のめり姿勢を強めていく。そこにはプーチンの巧みな誘いがあった。
第3章
米ロの対立、強まる逆風
ロシアのクリミア併合で崩れたプーチン来日のシナリオ。米ロの対立が強まる中、安倍は外務省を遠ざけ、「1強政権」の下で官邸主導のいびつな外交を強めていく。
- プロローグ
- 1話 ウクライナ政変
- 2話 米国の踏み絵
- 3話 苦しい綱渡り
- 4話 クリミア併合
- 5話 初めての非難
- 6話 外相の訪ロ延期
- 7話 谷内の極秘訪ロ
- 8話 中ロの接近
- 9話 政府内の亀裂
- 10話 マレーシア機撃墜
- 11話 プーチンの不信感
- 12話 誕生日の電話
- 13話 アメとムチ
- 14話 初の一対一会談
- 15話 経済対話の再開
- 16話 岸田の疑念
- 17話 高まる愛国ムード
- 18話 緩む包囲網
- 19話 流し網漁禁止
- 20話 オバマへの通告
- 21話 相次ぐ揺さぶり
- 22話 隠し続けた岸田訪ロ
- 23話 夕食会の極秘提案
- 24話 プーチン来日再延期
- 25話 再訪ロへの始動
- 26話 56年宣言を巡る溝
- 27話 リップサービス
- 28話 アイスブレイク
- 29話 新アプローチの真相
- 30話 パンドラの箱
- 31話 異例の経済協力相
- 32話 プラスアルファ
- 33話 安保条約からの除外
- 34話 共同経済活動の誤算
- 35話 理事長の遺志
- 36話 スケープゴート
- 37話 帰属先送り
第4章
重ねた対話、埋まらぬ溝
協力深化に向け、首脳会談を重ね、対話を加速させる日ロ両国。島の主権問題が置き去りにされたまま、安全保障や経済分野での根深い溝が顕在化する。
第5章
譲歩のツケ、消えた熱意
シンガポールでの歴史的な譲歩が空振りに終わった安倍。強硬姿勢をエスカレートさせるロシアに対し、戦略を立て直せないまま、熱意も失われていく。
第6章
安倍路線、総括なき終焉
安倍路線の継承を掲げながら、対ロ外交に距離を置く菅と岸田。2島返還路線は総括されず、ロシアのウクライナ侵攻で日ロ対話も断絶した。そして、結末は突然やってきた。
- プロローグ
- 1話 改憲の波紋
- 2話 しぼむ対ロ外交
- 3話 米新政権の後ろ盾
- 4話 訪米前の電話会談
- 5話 二つの衝撃
- 6話 プーチン論文
- 7話 首相の択捉訪問
- 8話 機密文書の公開
- 9話 在任一年で退陣
- 10話 総裁候補の誤認
- 11話 岸田政権発足
- 12話 ウクライナ緊迫化
- 13話 安倍とのせめぎ合い
- 14話 ウクライナ侵攻計画
- 15話 安倍発言の波紋
- 16話 米ロ協議不調
- 17話 北京五輪の会談
- 18話 米大使の圧力
- 19話 ちぐはぐな対応
- 20話 アジアへの波及
- 21話 異例の安保会議
- 22話 ウクライナ全面侵攻
- 23話 非難の嵐
- 24話 対ロ関係見直し
- 25話 譲れぬ権益
- 26話 原点回帰
- 27話 平和条約拒否
- 28話 対立の連鎖
- 29話 シンガポール合意消失
- 30話 見えぬ「終止符」
次の道
隣国 問われる針路
終わらないウクライナでの戦争。日ロ両国の水面下では対話を模索する動きも始まったが、行方は見えない。「近くて遠い」と言われる両国は、隣国としてどう向き合っていくのか。
─ 安倍×プーチン 北方領土交渉の真相
北方領土問題の解決を目指し、積み重ねた27回の首脳会談
安倍とプーチンは、なぜ歩み寄れなかったのか
激動の10年間を最前線で追い続けた北海道新聞取材班の記録―
プロローグ
2018年11月シンガポール会談
私とプーチン大統領の手で 必ずや終止符を打つ。
日本政府が交渉の軸足を
「四島」から「2島」
へと大きく転換した
瞬間だった
1956年の日ソ共同宣言を基礎に位置付け、平和条約交渉を加速させる
今回の合意の上に、 私とプーチン大統領のリーダーシップの下、 戦後残されてきた懸案、平和条約交渉を 仕上げていく決意であります
今回の合意の上に、 私とプーチン大統領のリーダーシップの下、 戦後残されてきた懸案、 平和条約交渉を 仕上げていく決意であります
歴代政権が重視してきたこと
- 1956年日ソ共同宣言
- 平和条約を締結後、
歯舞群島、
色丹島を日本に引き渡す
- 1993年東京宣言
- 領土問題を「歴史的・法的事実」に立脚し、諸文書と「法と正義の原則」を基礎に、四島の帰属問題を解決する
しかし、この会談では
あえて東京宣言には触れず
日ソ共同宣言を
平和条約交渉の基礎に位置付けた
日ロ交渉の軸足を
「四島」から「2島」
へと大きく転換した
ことを意味する
プーチン大統領は 2島なら返すはずだ
しかし…
しかし…
日ソ共同宣言には、引き渡す用意が あるとだけ記されているが、 どんな条件の下、どの国の主権下に 置かれるかは書かれていない
日ソ共同宣言には、 引き渡す用意があるとだけ 記されているが、どんな条件の下、 どの国の主権下に置かれるかは 書かれていない
新たな交渉カードを切ったものの、
ロシアの要求は領土問題の解決なしに
受け入れられる条件ではなかった。
模索の末に平和条約交渉は
完全に行き詰まる…
27回の首脳会談。重ねた妥協…
膨大な政治エネルギーを注いだ末に、
残ったのは「負の遺産」だった。
北方領土交渉の現場で
何が起きていたのか?
2万枚を超える取材メモから
浮かび上がる交渉の真相
第2次安倍政権以降の主な出来事
安倍首相とプーチン大統領との首脳会談は通算27回にも上った。
第2次政権発足から退陣までの主な出来事をまとめた。
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2012年12月26日
第2次安倍政権が発足
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2013年4月28~30日
日本の首相として10年ぶりにロシアを公式訪問し、プーチン氏とモスクワで会談
会談時間 3時間10分 クレムリンで昼食会を含む
平和条約交渉の再開で合意。10年ぶりの政治文書となる共同声明を発表し、平和条約交渉で「双方受け入れ可能な解決策を目指す」ことで一致。2プラス2を創設
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6月17日
英国・北アイルランドで会談
会談時間 約40分 G8首脳会議に合わせ
秋のラブロフ外相の訪日や、次官級協議の早期開催で合意
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8月19日
モスクワで日ロ次官級協議
平和条約交渉が再開
- 6
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9月5日
ロシア・サンクトペテルブルクで会談
会談時間 約40分 G20首脳会合に合わせ
プーチン氏を山口に極秘招待。11月に東京で2プラス2を初開催することで一致
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10月7日
インドネシア・バリ島で会談
会談時間 約40分 APEC首脳会議に合わせ
プーチン氏がソチ冬季五輪に安倍氏を招待
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11月2日
東京で初の日ロ2プラス2開催
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2014年2月7、8日
ロシア南部ソチの冬季五輪開会式に出席し会談
会談時間 2時間5分 大統領公邸で昼食会含む
秋のプーチン氏訪日で合意。4月の岸田外相の訪ロ、6月のG8首脳会議での首脳会談に合意
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3月18日
プーチン氏がウクライナ南部クリミア半島の一方的な編入を宣言
欧米や日本が対ロ制裁を発動
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10月17日
イタリア・ミラノで会談
会談時間 10分 ASEM首脳会議に合わせ
困難な状況下でも対話を継続することを確認
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11月9日
中国・北京で会談
会談時間 約1時間半(1対1は10分) APEC首脳会議に合わせ
初の1対1会談。プーチン氏訪日を、15年の「適切な時期」に先送りすることで一致し、日ロ共同声明に基づいて平和条約交渉を進めることを確認
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2015年7月
日本漁船も操業するロシア200カイリ内のサケ・マス流し網漁を16年1月から禁止する法案が発効
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9月21、22日
岸田外相がモスクワを訪れ外相会談
ロシア側が、国際約束による四島共同経済活動を極秘提案
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9月28日
米ニューヨークで会談
会談時間 40分(1対1は10分) 国連総会に合わせ
プーチン氏の訪日は「ベストな時期」を目指すこととし、16年に先送り
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11月15日
トルコ・アンタルヤで会談
会談時間 30分 G20首脳会合に合わせ
安倍氏をロシアの地方都市に招待
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2016年5月6日
ロシア南部ソチを訪れ会談
会談時間 3時間10分(1対1は35分) 大統領公邸で夕食会含む
安倍氏が「新たなアプローチ」で四島での経済協力を極秘に打診。安倍氏が、平和条約交渉を「新アプローチ」で進めるとともに、8項目の経済協力プランを提案。12月のプーチン氏訪日も確認
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9月2、3日
ロシア・ウラジオストクを訪問し会談
会談時間 3時間10分(1対1は55分) 東方経済フォーラムに合わせ、夕食会含む
12月のプーチン氏訪日を正式発表
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11月19日
ペルー・リマで会談
会談時間 1時間10分(1対1は35分) APEC首脳会議に合わせ
プーチン氏が会談後の記者会見で、安倍氏が共同経済活動を提案したことを明らかに
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12月15、16日
プーチン氏が大統領として11年ぶりに公式訪日し、山口と東京で会談
会談時間 4時間50分(1対1は1時間35分) 山口で夕食会含む
会談時間 1時間10分 東京で昼食会含む
四島共同経済活動の検討開始で合意。プレス向け声明を発表し、共同経済活動の検討開始と、北方領土墓参の負担軽減で合意。四島を巡る安全保障問題が表面化
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2017年4月27日
モスクワを訪問し会談
会談時間 3時間10分(1対1は50分) クレムリンで夕食会含む
5月中にも四島に官民調査団を派遣することや、空路墓参の6月中の実施で合意
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6月27日~7月1日
北方四島での日ロ共同経済活動に向けた初の現地調査団を派遣
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7月7日
ドイツ・ハンブルクで会談
会談時間 50分(1対1は15分) G20首脳会合に合わせ
四島での現地調査を踏まえ、共同経済活動の法的枠組みの議論を進めることを確認
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9月6、7日
ウラジオストクを訪問し会談
会談時間 3時間5分(1対1は20分) 東方経済フォーラムに合わせ、夕食会を含む
共同経済活動で「海産物の増養殖」など5項目を優先分野とすることに合意
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9月23、24日
航空機を使った初の北方領土墓参
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11月10日
ベトナム中部ダナンで会談
会談時間 1時間5分(1対1は15分) APEC首脳会議に合わせ
空路墓参の継続を確認
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2018年5月24日~27日
モスクワを訪問し会談
会談時間 2時間半(1対1は35分) クレムリンで夕食会を含む
共同経済活動の具体的事業で一致できず。日ロ交流年の開会式を開催
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9月10日~13日
ウラジオストクを訪問し会談
会談時間 2時間35分(1対1は15分) 東方経済フォーラムに合わせ、夕食会を含む
プーチン氏が無条件での平和条約締結を提案。共同経済活動の具体化に向けたロードマップで合意
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11月14日
シンガポールで会談
会談時間 1時間25分(1対1は40分) ASEAN関連首脳会議に合わせ
安倍氏が事実上の2島返還に転換。1956年の日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速することで合意。官邸は大阪G20サミットでの「大筋合意」を模索
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12月1日
アルゼンチン・ブエノスアイレスで会談
会談時間 45分 G20首脳会合に合わせ
両国外相を責任者とする平和条約交渉の枠組みで合意
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2019年1月21、22日
モスクワを訪問し会談
会談時間 3時間(1対1は50分) クレムリンで夕食会を含む
シンガポール合意に基づいて交渉を進めることを確認したが、歴史認識、安全保障問題などで溝が浮き彫りに
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6月29日
大阪で会談
会談時間 2時間半(1対1は30分) G20サミットに合わせ、夕食会を含む
平和条約交渉が行き詰まる。四島共同経済活動で「観光ツアー」と「ごみ減容」の2分野で試験事業を行うことで一致。日ロ交流年の閉会式
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9月4~6日
ウラジオストクを訪問し会談
会談時間 1時間半(1対1は20分) 東方経済フォーラムに合わせ
最後の直接会談。平和条約交渉を「未来志向」で進めることを再確認。11月のチリAPECでの再会談を約束したが中止に
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10月29日~11月2日
北方領土への初の日本人観光ツアーが国後、択捉両島を訪問
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2020年7月1日
領土の割譲禁止を明記したロシア改正憲法の賛否を問う国民投票。8割近い支持を得て、4日に発効
領土問題の解決がより困難に
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8月28日
安倍氏が退陣を表明
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