東京五輪終わっても「サマータイム」恒久的運用へ 議員立法による成立を目指す
安倍晋三首相(63)は7日、2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策などを含め、国全体の時間を夏の間だけ2時間早めるサマータイム(夏時間)制度について検討するよう自民党に指示した。当初は19、20年の2年に限る案もあったが、五輪を契機に恒久的に夏時間を運用する方針であることも党幹部らへの取材で分かった。安倍首相と官邸で会談した大会組織委員会の森喜朗会長(81)によると、安倍首相は「国民の関心は高い。やるならば国民生活に影響する」などと語ったという。
猛暑対策の一つとして、2年後に開催される東京五輪・パラリンピックを契機に「夏時間」が制度化される可能性が出てきた。
自民党幹部によると、秋の臨時国会で制度・設計に向けた議論を行い、議員立法による成立を目指す。当初は夏時間を19、20年に限る案も浮上していたが、その都度、必要になるIT関係のシステム変更に伴う負担などが大きいとして、東京五輪後も恒久的な制度とする方針。野党とも合意を取りながら、議論を進めていくとしている。
安倍首相は自民党に導入に向けた検討を指示した一方で、森氏との会談では「慎重に見極める必要がある」とも述べた。森氏は夏時間に省エネ効果が見込まれると指摘した上で「五輪のためにやるということではなく、日本政府が地球環境保護に取り組むという観点で進めてほしい」と求めた。組織委は、20年7月24日に開幕する東京五輪での暑さ対策の「切り札」と位置づけている。
党内での議論は会談に同席した遠藤利明元五輪相(68)=大会実施本部長=らを中心に進める。遠藤氏は官邸で「20年までにやるとすれば、秋の臨時国会で何らかの形をつくらないと難しい」と話した。また、公明党の山口那津男代表(66)も導入は国民の納得が前提になるとした上で「酷暑対策は柔軟に幅広く検討する必要がある」としている。
夏時間は先進国を中心に70か国以上で導入され、日本でも環境省などが検討を進めてきた。例えば2時間のサマータイム制の場合、始業時間9時は現状の7時となる。導入のメリットは省エネや温室効果ガス削減があり、酷暑への対策もしやすい。明るい夕方の時間が増えるため、観光、ボランティア活動なども活発になる。日本生産性本部は、2004年に約9700億円の経済波及効果があると試算している。
一方でデメリットは、コンピュータープログラムの変更による負担増、航空・交通・信号の変更や調整も必要となる。企業にも経済的負担がかかり、労働時間が増える可能性がある。また、体内時計が順応するのに約3週間かかるとの調査もあり、睡眠障害を引き起こす可能性も指摘されている。
かつて連合国軍総司令部(GHQ)指令によって「夏時間法」が制定され、1948年から実施されたこともあるサマータイム。しかし、過重労働や慣習になじまないとされ、廃止となっている。
◆夏時間への切り替え方 導入初日を4月の最初の日曜日とした場合は午前2時に2時間進め午前4時に合わせる。夏時間が始まる日曜日は 1日が22時間になる。10月最後の日曜日をサマータイムが終わる日とした場合は午前4時に2時間戻し午前2時に合わせる。この日は1日が26時間となる。
◆サマータイム 昼間の明るい時間が長い期間(4~10月)に全国の時刻を標準時より早める制度。起床・就寝時間や労働時間はこれまで通りだが、明るい夕方の時間が増えるため、有効活用できる。夕方の照明や朝の冷房用電力の節約につながる。第1次世界大戦から英国など欧州で実施され、70か国以上で実施されている。