【2024年】大関・琴桜、祖父超え初 叶えた「夢」 来年は「綱」

報知年間最優秀力士賞に選出された琴桜 報知年間最優秀力士賞に選出された琴桜

  報知新聞社制定「令和6年(2024年)第67回報知年間最優秀力士賞」に大関・琴桜(27)=佐渡ケ嶽=が24日、初選出された。都内で行われた選考委員会では初の年間最多勝(66勝)や14勝を挙げた九州場所で、高いレベルの成績で初優勝を果たしたことなどが評価された。祖父で先代師匠の元横綱・琴桜も届かなかった栄冠を後押しに、来年初場所(1月12日初日、東京・両国国技館)では初の綱取りに挑む。同場所初日には表彰が行われ、スポーツ報知杯、賞金が贈呈される。
◆満足していない

 横綱昇進に挑む新春の土俵を前に、琴桜に吉報が届いた。年6場所制となった1958年から始まった報知年間最優秀力士賞受賞者には大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花、白鵬ら歴史に名を残した横綱たちが居並ぶ。そこに名を連ねたことに「すごい面々。うれしいですね」と笑顔を見せた。元横綱の先代・琴桜は優勝5回を誇るが、同賞受賞経験はない。番付で肩を並べる前に、一つ“祖父超え”を果たした形だ。

 飛躍の1年だった。初場所では決定戦で敗れて初優勝こそ逃したが、13勝を挙げ場所後に大関昇進を決めた。新大関の春場所は、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)から継いだしこ名を大関にしたい思いで「琴ノ若」のままで土俵に上がり、夏場所から「琴桜」を襲名。少年時代、生前の祖父と交わした「大関になったらいいぞ」という固い約束をついに果たした。

 ただ優勝には手が届かず、その間に新鋭の尊富士や大の里が賜杯をつかみ“ちょんまげ旋風”を巻き起こした。琴桜は「悔しくないことはない」と振り返る一方で「他人を気にしても仕方がないですから。やることは変わらずに」と愚直に自らと向き合う姿勢を貫いた。

 そして一年納めの九州場所で歓喜の瞬間が待っていた。14勝1敗で念願の初優勝。祖父と同じ大関5場所目、27歳で初賜杯を抱いた。ただ「良かったですが(初場所のV逸など)悔しい思いもしましたし、満足はしていないです。1回優勝して終わりではないですから」と飽くなき向上心を見せる。

 そんな1年を表す一字には「夢」を選んだ。「大関昇進や初優勝という夢がかないましたし、(横綱という最大の)夢に向かうポイントではないですが、そういうのもつくれましたので」と理由を語った。

 来年の目標とする一字には「綱」と、したためた。目指すは最高位ただ一つ。「(チャンスは)転がり込んでくるものではないですから。つかみ取らないと」と気合。加えて「生半可な気持ちでは戦えないのはわかっています。人生を懸けて臨むぐらいの気持ちでいきます」と語気を強めた。2025年は、さらに大きく羽ばたいていく。

 ◆琴桜 将傑(ことざくら・まさかつ) 本名・鎌谷将且(かまたに・まさかつ)。1997年11月19日、千葉・松戸市生まれ。27歳。2歳から相撲を始め、埼玉栄中、高を経て佐渡ケ嶽部屋に入門。琴鎌谷として15年九州場所で初土俵。19年名古屋場所で新十両に昇進し、琴ノ若に改名。20年春場所、新入幕。24年春場所で新大関。得意は右四つ、寄り、押し。189センチ、181キロ。

 ◆選考経過 選考会では、宮田委員が「お2人の中でどちらにするか」と口火を切ったように、早い段階で琴桜と大の里に候補が絞られた。だが琴桜が66勝で初の年間最多勝に輝く一方、大の里は年間優勝回数最多タイの2度に加えて年間勝ち星数はわずか1差での2位。甲乙つけがたい状況に議論は白熱した。最終的には挙手で選考委員5人中3人が琴桜を推し、初受賞が決まった。

 能町委員は「最後まで迷ったが、年間最優秀というと最初から上位にいて成績を残した琴桜かなと思う」。大関や関脇で安定感を誇り、九州場所では14勝の高いレベルでの初賜杯、初場所でも決定戦で敗れ優勝は逃しながらも13勝を挙げた点を評価した。依田委員も「大関を5場所務めて成績を残した」と続いた。柳沼委員も意見に同調した上で「白星が1つ多かったということも加味した」と話した。

 大の里は受賞を惜しくも逃したが、初場所の新入幕から破竹の勢いで大関まで駆け上がった実績は、遜色がないとの意見が各委員から挙がった。刈屋委員は「大の里の新入幕からの活躍は、50年に1人くらいの価値を持つ1年だったと思う」と称賛。また宮田委員は、石川県出身である大の里の活躍が、能登半島地震の被災地に勇気を与え続けたことも高く評価していた。

 ◇選考委員 宮田亮平(金属工芸家、前文化庁長官、元東京芸術大学学長)、刈屋富士雄(立飛ホールディングス執行役員、元NHKアナウンサー・解説主幹)、能町みね子(文筆家)、依田裕彦(報知新聞社代表取締役社長)、柳沼雅裕(報知新聞社執行役員編集局長)

◆霧島の成績

場所 成績
東関脇 13勝2敗 技
西大関 10勝5敗
西大関 11勝4敗
名古屋 東大関 10勝5敗
東大関 8勝7敗
九州 東大関◎14勝1敗

※◎は優勝。初場所は優勝同点、春場所までは琴ノ若、夏場所より現しこ名、技は技能賞。

◆年間成績

順位 力士名 所属 成績 勝率
1 琴桜 佐渡ケ嶽 66勝24敗 .733
2 大の里 二所ノ関 65勝25敗 .722
3 豊昇龍 立浪 61勝26敗3休 .678
4 阿炎 錣山 51勝39敗 .567
5 大栄翔 追手風 50勝40敗 .556
5
若元春 荒汐 50勝37敗3休 .556
5 隆の勝 常盤山 50勝40敗 .556

※勝率の休場は負けで計算。

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