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(2018.1制定)
まず最初に言っておきます。コスパだタイパだと普段から口にして疑問に思っていないあなた、就活もその後の人生もつらい思いをすることになりかねないので、すこし考え直してみませんか。
そりゃ、ちょっとした得な気分になりますよね。同じようなものを安く手に入れられたり、時間を有効活用できたりと。それ自体、賢い生活手段であり、創意工夫の楽しみとしても問題があるわけじゃないのですが、そういう気持ちが働き方、生き方までおよぶとなると、あなたの人生は安値安定で推移するんじゃないかと、端から見ていてヒヤヒヤしてしまいます。
働くことのコスパってことを考えてみましょう。つまりそれは「同じ給料ならより少ない労働量がいい」、もしくは「同じ労働量なら給料が高い方がいい」ってことになりますよ。日々の仕事でも「同じタスクをより少ない労働でこなすのがいい」「収入に見合った仕事量を考える」って方向性、それが働くことにおけるコスパ・タイパです。
もちろん、日本型の働き方の課題として効率性の低さが指摘されて久しいので、タイパ・コスパの観点から効率性を求めることは、正しい考え方であり、大いに取り組むべきことではあります。
しかし、それはむしろ組織全体で取り組むべき事柄で、働く個人がタイパ・コスパを意識しすぎると「楽をする」ことを求める気持ちを生んでしまう危険があります。たとえば、「ここまでやればいいだろう。これ以上は給料に反映されないからコスパが悪い」と、より高い水準の成果を目指さなくなります。「やってもやらなくても大差ない」「こっちの仕事の方が楽にできそうだ」「面倒だけどポイントにならない仕事はほかの人にやってもらおう」と、楽な道はコスパ・タイパの面からは自分を正当化できます。人間は実に弱いものです。
効率性と楽な道、この線引きは実に難しいというか、10年くらい同じ仕事をしてみないと無理でしょう。
じゃぁ、その楽な道に知らず知らずのうちに踏み込んでしまったらどうなるか。
まずはあなた自身の問題です。
特に20歳代の初期キャリアにおいては、仕事を通じて学んでおくべきことは山ほどあります。そしてそれは、目標が明確に定められているものでも、業務に関連することとは限りません。チームや社内の人間関係、人との接し方、ものの頼み方、社内外でのマナー、1日の過ごし方、会計や人事総務の基礎知識、会社や事業の構造、そもそも働くことの意味、喜びとは何か。こうしたことは、右も左もわからないまま働いているうちに何となく身に着けていくものです。
暇な時間、アフターファイブでの人付き合いも貴重な場になります。斬新なアイデアなどは雑談の中から生まれることも多いとか、親しくしている社内外の知り合いに助けられたとか、仕事を進めるうえでの影のキーマンはだれかとか、効率性や合理性とは無縁ではあるが、間違いなくあなたを高める機会やちょっとした知識は、いろんなところに転がっているものです。
つまり、あなたが無駄だ、タイパ・コスパが悪いと切り捨ててしまったところにも学ぶべきことはたくさんあるのです。逆に、目の前に与えられた業務に精通することが成長だと考えてしまうものですが、それは優秀な処理機械になったに過ぎません。その会社でしか通用しない優秀な処理機械になったところで、転職市場で評価されるとは限らないし、会社の中では処理機械としての評価待遇しかされないでしょう。
企業選びの場面ではどうでしょう。
就活の中ではいくつもの魅力的な企業との出会いがあります。興味がある事業領域である、経営者に魅力を感じた、今後の成長が期待できる、そのポイントはさまざまですが、これにタイパ・コスパの視点が入ったらどうなるか。
給料がいい、働く時間が短い、短期間にいろんな経験ができる、(回り道することなく)希望の職種につけるといったタイパ・コスパの切り口が想像できます。
まず、初任給は分かりやすいコスパの指標になりますよね。特に就活生は1万2万の違いが、大きな差に見えてくるものですが、これはよくある落とし穴です。
見えない最大の差は、住居費負担です。社員寮があるところ、住宅補助があるところ、まったく何もないところ、あまり意識されることがありません。しかし、首都圏でそれなりの利便性のあるところに住もうとしたら、住居関連だけで月に12万円は必要になります。転勤が多いとそのたびに出費がかさんでいくことにもなります。
住居費以外にも、資格取得などの学習関係への補助、健康管理、休暇の取りやすさ、保養所、食費や食事の提供、財産形成など、総称してフリンジベネフィットと呼ぶのですが、金銭に換算しにくい「第2の給与」のことはあまり意識されません。
もっと根本的な要因としては、仕事量と勤務時間、仕事によるストレスや疲労度、成果に対する報酬体系など、仕事に見合った額の給与であるかは、実際に働いてあなた自身がどうとらえるかでしかないのです。例えば超激務の35万円と余裕ある生活が営める27万円のどちらのコスパがいいのか、あなた以外には正解は出せません。
初任給の多寡は、せいぜい人並みにもらえるのか、生活に行き詰まるかどうかを確認するくらいのとらえ方をすべきです。
タイパの面でも同じです。最近は就活生のニーズに応えるように、職域限定、配属先指定、ジョブ型採用など、経験を積むための遠回りをせずに済む人事制度を売り物にしている企業が増えています。まさしくキャリアのためのタイパがいいとアピールしています。希望の職種からスタートできるのだから、やる気も違うでしょうし、採用側も早期退職が減ることを期待できます。
優れた制度であることは認めた上で、ですが、かえって遠回りになっちゃう就活生も少なくないのではないかと考えています。
就活生は働いた経験がありません。それでも職種を選ぶには想像を巡らせながら希望を絞っていくしか方法がないのですが、じゃぁそれらの仕事の本質的な部分や自分に合っているかどうか、そもそも会社によっても職種の役割や働き方は違うこともあり、結局は実際に現場に立ってみるまで分からないのです。
ジョブ型採用で現場に配属されたのはいいが、思っていたことと違う、自分には合わないと分かったところで、スタート地点は自分で決めたのだから、ある意味自己責任です。
ならば、従来の方法、人事担当者が自らの経験を元に、本人の適性を判断して配属を決めた方が、就活生の潜在能力を引き出すきっかけにもなります。むしろタイパはよいかもしれません。
就活でも社会人生活でも、タイパ・コスパは結構あてにならない判断基準だということ、ご理解いただけたでしょうか。
じゃぁどうするのか。
人生、あらゆるところで運に左右されて生きる道があっち行ったりこっち行ったりするものです。いい時も悪い時もあります。だから面白いのだし、可能性が広がるのです。
偶然の出会いを増やす、そして出会った偶然を受け入れる。これこそが豊かな人生を目指すための近道、結果的にタイパ・コスパに優れた考え方だと、少なくとも私はそう考えています。
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