史学専攻では、歴史を個々の人間の営為の積み重ねととらえ、歴史を学ぶことは、人間とその生きた社会を知ることと位置づけています。そのために、時には対象とする地域や時間、あるいは、旧来の学問の枠を越え隣接科学の成果も踏まえるなど、より多くの学びを求めています。
特に日本史学分野で重視しているのは、日本史の研究を国内史に狭くとどめることなく、国際的な視野に立って検討することと、現代の目から見るだけでなく、その時代の人々の視点や思考に即して歴史を捉えるように努めることです。古代の社会を日中の史料の比較から、中世の経済を東アジアの交易圏に組み込まれた形で、キリシタン時代の社会を地球規模の動きの中で、「鎖国」時代の国内問題を国際関係の視点から、近代の国内市場の動向を植民地・諸外国に向けた対外取引との連関に注目しつつ、それぞれ捉えるのが、前者の例としては分かりやすいでしょう。古代の人々の仏教との関わり方を階層ごとに掬い取る、中世の人々の貨幣観念を復元する、近世の人々の多様な信仰の実態を探る、近代の地域経済をその担い手である商人や農民の活動から掘り下げ発展の構造を分析するなどの研究は、後者の方向性から生まれてくるものです。
いずれにしても学生は、歴史学のもつ広範な領域と方法を学ぶことになるはずです。そして、このような目的を達成するために良質な史料を活用し、それにより実証的な研究を進めるよう指導しています。大学院修了後には、学界などでも広く通用する日本史研究者や博物館学芸員、中学校・高等学校で教鞭をとる歴史教育者を育成できるよう努力しています。
授業は7名の専任教員と若干名の非常勤講師が担当しています。修士課程では毎年10科目前後が開講されています。それらは史料講読を中心とする科目(日本史特殊講義演習、古文書学特殊講義)と、講義を中心とする科目(日本史特殊講義)に大別され、修士論文の作成が必修とされています。また、後期博士課程では研究論文の作成支援を行うほか、史料講読を主とする日本史特殊研究が5科目前後開講されています。後期博士課程の学生には、学位論文(課程博士)を提出して博士(史学)の学位を取得する道が開かれています。
修士課程と後期博士課程はともに、古代から近現代に至るまで各時代の科目を満遍なく開講し、可能な限り多様な対応を試みています。授業はいずれも学生5~6名前後の少人数で行われ、授業科目によっては史料調査、博物館・文書館・遺跡の見学などを行います。
日本史学専攻
キリシタン史、中国天主教史
日本史学専攻
日本中世史