[スタッフVoice vol.12]
グリーンピース・ジャパンで働くメンバーのご紹介:アクションコーディネーター、M・Oさんのインタビューをお届けします。

グリーンピースのスタッフが入職するまでの経歴は、人によってさまざまです。
NGOやNPOといった非営利団体を歩んできた人、民間企業ひと筋だった人、グリーンピースでのインターンからスタッフとして就職した人など。M・Oさんは、理念に共感できるNGOや民間企業を経て、そこで得た経験を活かしながら、アクションコーディネーターという職種にチャレンジしているところです。

NGOでも民間企業でも、大切にしてきたのは何を目指すかというヴィジョン

NGO職員として途上国で子どもたちの支援をしたり、日本のスタートアップ企業に勤めたり、M・Oさんの幅広い経歴ですが、そこにはそのときどきの彼女の問題意識が強く反映されているという一貫性があります。仕事内容や待遇、職場環境は、転職を考える際に重要なポイントですが、M・Oさんは理念やヴィジョンに共感できるか、そこに貢献したいと思えるかを重視してきました。

M・OさんがNGOの活動に最初に触れたのは、アメリカの大学で社会福祉を学んでいるとき。
授業の一環としてボランティア活動が必須だったため、子どもたちの施設や老人ホームを訪れたり、ホームレスの人たちへの炊き出しをしたりといった活動に参加しました。そこでNGOやNPOが、どのような課題に取り組み、どのような活動をしているのか、肌で知ることができました。

そもそも子どもに関わる仕事がしたいと考えていたM・Oさんは、大学卒業後、途上国で子どもたちのための活動ができないか模索します。その後、フィリピンのNGOでのインターンシップに参加、さらにウガンダのNGOでも活動するなど、経験を重ねていきます。

活動を通してM・Oさんが目の当たりにしたのが、貧困の連鎖という厳しい現実。女性が若くして子どもを産んだり、育てるのが難しいほど多くの子どもを産んだりすることが、貧困が連鎖する原因のひとつであることを知ったのです。M・Oさんは、性教育に高い関心を抱きながら、帰国しました。

そんなM・Oさんが日本で就職先に選んだのは、性を誰もが楽しめるものにするというミッションを掲げ、事業において性に関する啓発的な側面を持っている先進的な企業。企業の代表が語る理念や価値観に感銘を受け、充実した仕事をしていましたが、業務をするなかで、環境問題に対する新しい気づきを得ることになります。

「日本の商品のローカライゼーションを担当していたのですが、日本とヨーロッパでは商品の製造にまつわる法律やルールが全然違うんです。ヨーロッパでは使い捨てのものは販売できても環境に配慮していない商品は人気がないプラスチックの透明のパッケージも使い捨てプラスチックを使いすぎていて、ダサいというイメージがあります。。日本と海外との環境意識の違いを強く感じました」

もっと環境問題に関わりたいと考えたM・Oさんは、廃棄ゴミなどを使用したヴィーガンレザーのスタートアップ企業へ転職します。けれどもCEOが変わると、環境に対する理念が揺らぎ、このままではグリーンウォッシュに加担するようなことになるのではと転職を決意したことが、グリーンピースへの入職につながります。

NGOと民間企業、両方で働いた経験を経て、民間企業のスピード感や、成果を計り評価する仕組みなどに違いを感じるところはあるものの、特に働きやすさややりがいに違いは感じていないと言います。ただ、M・Oさんが経験したように、民間企業の場合は経営者が変わることで大きな方針転換をする可能性はあるでしょう。

目の前の業務の内容だけでなく、所属する組織のめざすところである理念やヴィジョンを重視していることが、グリーンピースでの働きやすさにつながっていると、M・Oさんは感じています。それは、グリーンピースが掲げるミッションに共感できることはもちろん、環境問題に対して高い意識を持って働いている同僚たちの存在があるからなのです。

創造力と想像力を使いながら、さまざまな人と共にアクションを起こす

M・Oさんのポジションであるアクションコーディネーターとは、デモやスタンディングといったアクションに必要な人やモノ、場所などをコーディネートし、実行に移す役割を担っています。さまざまなアクションを通して、問題や解決策をアピールし、政府や企業、そしてたくさんの人に働きかけることが目的です。

それまでのNGOでは、直接支援する活動に携わってきましたが、「問題そのものを解決するには、政府や企業を変えていかないといけない」という気づきがあったこともあり、アクションコーディネーターに応募しました。未経験ではあるものの、フィリピンのNGOでの活動から、人が集まって行動を起こすことに対する熱い思いを持っていました。

「フィリピンで、児童養護施設や保護施設に住んでいる子どもたちをエンパワーメントするための活動として、100人ぐらいの女の子たちにダンスを教えて、みんなでフラッシュモブをしたんです。大人数で踊ると、子どもたちも生き生きとするし、とても感激するんです。そうやって、たくさんの人が集まって一緒に何かをすることから生まれるパワーを信じているようなところはありますね」

アクションを実施するまでには、企画を立て、準備をし、そして実行に移すというプロセスをひとつひとつ踏んでいかなければなりません。目標の達成にはどんなアクションがいいのか、ブレインストーミングなどをしてアイデアを出し、その中からアイデアを選び、企画が決定すると、いよいよ準備に入ります。

アクションを行う場所の決定や必要な資材の手配、場所や内容によっては許可をとる必要があることも。さまざまなリスクを想定するリスクアセスメントは、トラブルを防ぐため細かく入念に行うほか、マスコミなどへの対応のためのFAQの作成や、緊急事態が生じたときの対応の準備など、こまごまとした作業が生じます。

アクションコーディネーターは、クリエイティビティに長けた人が向いている職種ではありますが、「創造力(クリエイティビティ)だけでなく、想像力も必要」とM・Oさんが感じるのは、リスクなどを想像し、万が一に備え、丁寧に準備しておかなければいけないからです。

同時に、アクションボランティアと呼ばれるボランティアの人たちなどをチームとしてまとめる調整力や、常に思いがけないことが起こるため、臨機応変な対応力も求められると感じています。ただし、アクションをどのように実施していくかは丁寧な研修があったため、未経験でも問題はないそうです。

そんなM・Oさんが手がけたアクションが、今年7月にお台場で実施した「学校断熱展示会〜暑すぎる教室体験してください〜」です。机や椅子、黒板などを置いて学校教室を再現し、断熱改修が行われていない教室を擬似体験できたり、教室の暑さの理由や解決策としての断熱改修について知らせたりしました。

「場所を使用するために許可をとったり、大道具屋さんみたいなところで黒板や学校の机などを借りたりもしました。3日間実施したのですが、梅雨時季だったので雨も心配でしたし、夜間に黒板などを保管する場所を確保する必要もありました」

何となくアイデアを思い付いたとしても、実施するにはさまざまな細かい準備が発生し、それらをひとつひとつ丁寧に対応することが、アクションを成功に導きます。このアクションでは、見た目のインパクトやお台場という場所がらもあって、外国人観光客も含め、たくさんの人が足をとめ、学校断熱の必要性をアピールできたそうです。

「忙しすぎると頭が回らなくなるから」と、しっかり休みもとりながら、仕事のクオリティを上げられる働き方を目指しているM・Oさん。クライミングやボルダリング、スノーボードや登山(グリーンピースには登山好きのスタッフが多いのです)といったアクティブな趣味で息抜きすることも忘れず、日々の業務に励んでいます。