A Picture of Little Girl Standing on Toilet

3歳の少女が便座の上に立つ悲しき理由

3歳の娘が便座の上に立つ1枚の写真。面白がった母は写真を撮って夫に送ったりもした。しかし、便座に立つ理由を娘から聞いた母は戦慄した。
3歳の少女が便座の上に立つ悲しき理由

Words: Masako Iwasaki

子どもはいつも、大人には予想もつかない行動に出るものだ。

ミシガン州トラヴァースシティに住む、育児グッズ販売会社「Silikids」の創業者 兼 CEO、ステイシー・ワーマン・フィーリーさんも、3歳になる娘がトイレの便座の上に立ってじっとしている様子を見て、最初はおもしろがっていた。かわいいイタズラだと思い、写真を撮って夫に送りもした。

しかし、便座の上に立つ理由を娘から聞いたワーマンさんは戦慄することになる。

少女の通っている幼稚園では「ロックダウンドリル」と言われる侵入者対策訓練が行われていた。犯人から逃れ、トイレに隠れた時に何をするべきか。

「下から覗かれたときに見つからないように便座の上に立ち、息を潜めてじっとしていなさい」

そう教えられた少女は、自宅で便座に立って復習していたのだ。

フィーリーさんはFacebookで便座の上に立つ娘の写真と共に、政治家に向けてメッセージを発信した。

「政治家の皆さん、ご覧ください。これはあなたの子どもであり、孫であり、ひ孫であり、将来生まれてくるすべての子どもの姿です。この子たちはあなたたちの決定によって成り立つ社会で生きていくのです。銃規制が犯罪を100%抑止できるとは誰も思っていません。しかし、もしかしたら1%か2%、ひょっとしたら50%くらいは防げるかもしれません。やってみない限り、これは誰にもわかりません」

「なぜ(銃を購入する際に)身元調査をしないのですか。銃登録のデータベースはどこにあるのですが。なぜ大容量マガジンが軍隊だけではなく、一般への販売も許可されているのですが。本当にそれは身を守ったり、狩猟をしたりするために必要なのでしょうか」

米国では銃による犯罪が後を絶たない。フロリダ州オーランドのナイトクラブで起こったテロでは49人が死亡し、史上最悪の銃乱射事件となってしまった。いつ、どこで銃声がするかわからない社会では、幼児といえども自分の命を守るための訓練をしなければならないのだ。

この憂うべき現実を変えるため、フィーリーさんは厳しい銃規制を求めている。

「行動することが必要です。私はクリス・マーフィー上院議員のような政治家に拍手を送ります。でも、多くの政治家は動いてはくれません。変えるなら、まず自分から動かないといけないのです。どれほどスマートなテクノロジーが銃を安全なものにしてくれるのかを知りたいのです。公共の場所における高度なセキュリティ、データベース、精神疾患歴のチェック……何でもです!起業家、イノベーターの方はいませんか?私にできることはないでしょうか。サポートを提供させてください」

民主党のクリス・マーフィー上院議員は6月16日(米国時間)、銃を規制する法案の採決を求め、15時間にわたる演説でフィリバスター(議事妨害)を行った。長時間の演説ではあったものの、マーフィー議員のスピーチは多くの人の心動かした。銃販売の際に身元を確認することを義務づける修正案と、テロ監視リストに挙がっている人物が銃を購入できないようにする法案は支持され、議員は可決を確信して勝利を宣言したが、上院は20日の採決でこれらを否決した。

オーランドの銃乱射事件は、オバマ大統領が涙を流しながら銃規制の必要性を訴えた演説の2週間足らず後に起こった。銃規制反対の急先鋒、全米ライフル協会(NRA)は「銃規制法案には何の効果もない」として、銃規制反対の姿勢を貫いている。

銃社会の闇を雄弁に語る一枚の写真は、世論を動かすだろうか。