植樹が逆効果に? 木の種類を間違えると夜間の気温が上がるかも

  • author Kenji P. Miyajima
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植樹が逆効果に? 木の種類を間違えると夜間の気温が上がるかも
Image: Shutterstock

昼間に日陰をつくればいいってもんでもないんですね。

温暖化とヒートアイランド現象のダブルパンチで暑くなる一方の都市部。できる限り緑を増やして、アスファルトやコンクリートの地表面が熱くならないようにすれば、気温上昇を抑えられると考えがちですが、やたらめったら木を植えればいいというわけにはいかないみたいですよ。

樹木には昼間の気温を大幅に下げる効果

都市部に街路樹を植えれば、昼間の気温を大幅に下げられる一方で、夜間には逆に気温が上昇しちゃう可能性があることを、ケンブリッジ大学の研究チームが明らかにしました。

同大学建築学部のRonita Bardhan准教授らの研究グループは、17の気候帯にまたがる世界110都市を対象とした182本の研究結果を抽出して、2010年から2023年までの調査データを総合的に分析した研究結果を学術誌Nature Communications Earth and Environmentに発表しました。

研究結果によると、街路樹には歩行者レベルの高さにおける日中の気温を最大で12度も下げる効果があることが判明しました。この気温低下は、樹木による太陽光の遮断葉の気孔を通じた水分蒸発、そして樹木の葉による気流の変化によってもたらされるといいます。

調査対象となった都市の83%で、樹木の冷却効果によって快適な気温とされる26度以下に抑えられたそうです。

夜間の気温は上げてしまうかも

しかし、夜になると話が別で、樹冠が地表から宇宙へ向かう長波放射を閉じ込める場合があるそうです。これは、空力抗力(空気の力学的な抵抗)と、熱や乾燥ストレスに反応して葉の表面の気孔が閉じる「気孔閉鎖」によるもので、最大で1.5度の気温上昇を引き起こすことがわかりました。

気温への影響は気候帯によって大きく異なることも判明。熱帯雨林気候またはサバンナ気候の地域では、ナイジェリアのように日中の気温が最大12度も低下した一方で、夜間の気温は0.8度上昇しました。

都市構造によっても違いが

都市構造による影響も明確になっています。温帯や大陸性気候、熱帯気候の開放的な都市構造を持つ地域では、落葉樹と常緑樹を組み合わせることで、約0.5度の追加的な冷却効果が得られます。これは、異なる高さの3D的な冷却効果と、季節に応じた日陰と日光のバランスが取れるためとされています。

一方、カイロやドバイのような乾燥地帯の建物が密集している市街地の気温を下げるためには、常緑樹が効果的です。

高いビルが立ち並ぶ都市部の「ストリートキャニオン」と呼ばれる街路空間では、樹冠被覆が高くなりすぎると、歩行者レベルの高さで熱がこもりやすくなるといいます。気温が高い地域ではこの傾向が特に顕著なのだそう。このような場所では、樹種を絞って、まばらに植えたほうが効果的とのこと。

研究チームは、気候や都市構造のデータに基づいて冷却効果を推定するデータベースとインタラクティブマップを開発しています。

それによると、温暖湿潤気温の日本(なぜか佐賀市)は、落葉樹が適しており、昼間は最大で2.7度の冷却効果があって、夜間の気温は変化しないとなっています。都市や街づくりによっても違うでしょうけど、2.7度は大きいですね。

Bardhan氏は、温暖化に伴って都市部の暑さが深刻化する中、計画的、戦略的に樹木を植える重要性について、プレスリリースで次のようにコメントしています。

「私たちの研究結果は、ただ緑地を増やすだけでなく、冷却効果を最大限に発揮するために、適切な木を最適な場所に植える必要があることを示唆しています。都市計画担当者は、暑さに強く冷却効果を維持できる樹種を選択することで、将来の温暖化に備えなければなりません」

同時に、研究チームは都市の気温低下を木だけに頼ってはいけないと強調しています。日よけや反射素材など、他の暑さ対策と組み合わせることが重要だとしています。

世界的な温暖化が進む中、都市部の熱ストレスは、もうすでに深刻な健康被害や死亡事例、電力消費の急増、熱関連の社会的不公平、都市インフラへの悪影響など、多岐にわたる問題を引き起こしています。温暖化とヒートアイランド現象による都市部の暑さを少しでも和らげるために、最も必要な場所にフルパワーを発揮してくれる木を植えるような都市計画をつくってほしいですね。

Source: Li et al. 2024 / Nature Communications Earth and Environment

Reference: University of Cambridge (1, 2)