グッバイ、クッキー!
Googleが長年にわたって進めてきたクッキーの廃止計画が1月4日、実行に移されました。Chromeウェブブラウザを利用しているユーザーのうち1%、約3000万人に対してクッキーを無効化。そして今年の年末までに、すべてのChromeユーザーのクッキーがなくなるとのことです。すべてのクッキーではなく、廃止されるのは追跡をするサードパーティークッキーです。
クッキーの役目って?
プライバシーを守りたい人たちにとって、インターネットの元凶とみなされているクッキー。ほとんどのウェブでクッキーは、テック企業がオンライン上での私たちの行動を追跡する方法となっていました。ターゲット広告や他の多くのトラッキングには、Googleのような企業が作成したクッキーが必要となってきます。これは「サードパーティクッキー」として知られ、インターネットのインフラに組み込まれていて、どこにでも存在しています。
2019年、GoogleやFacebookなど多くのテック企業のプライバシー違反に関するよろしくないニュースが大きくなったことで、シリコンバレー全体で対処しなくてはいけなくなりました。
Chrome、ついに廃止へ
Googleは、ほとんどの収益をオンライン広告表示と私たちの行動追跡から得ていますが、Chromeでサードパーティクッキーを廃止するプロジェクトに取り組むことを発表したのです。約60%のインターネットユーザーがChromeを使用しているため、Googleがこれを廃止することは、実質的にはクッキーの存在自体がほぼ消滅するということになります。「私たちは、ウェブ上の無料サービスやコンテンツを利用する人が増えていくなかで、インターネットの機能において最大級の変更を行なっています。プライバシーサンドボックスチーム全体の使命は、無料でオープンなインターネット世界でみなさんのアクティビティをプライベートに保つことです。『情報は誰でもアクセス可能で、便利であることを確認する』という企業ミッション自体にも通じることです」」とGoogleのプライバシーサンドボックス担当Victor Wong氏は2023年4月のGizmodoのインタビューで述べています。
そんなこんなで2024年1月4日が、Googleの壮大なクッキー廃止計画の最初のフェーズ開始となりました。自分が3000万人の一人かどうかを見分ける方法、ご紹介します。
無効化されているかチェック!
Googleが自分のクッキーを無効にしたかどうかを確認する方法として、まず「トラッキング保護」に関するChromeのポップアップが出るかどうかです。ポップアップは反射的に閉じてしまってメッセージの内容を見落とすことがよくあるので、気をつけてくださいね。
ポップアップを無意識に閉じてしまった、もしくは覚えていない人にはほかの方法もあります。トラッキング保護がオンになっている場合、アドレスバーの隅っこに目のロゴが表示されます。そのロゴをクリックすると、特定のウェブサイトでクッキーを使用することを許可するかどうかが選択できます。クッキー無効化によって壊れるウェブサイトがあるため、許可選択することが必要な場合があります。Chromeにはウェブサイトに問題があるとトラッキング保護を無効にしてくれる新しい機能も追加されました。
ブラウザの設定で確認することもできます。Chromeの設定を開くと「プライバシーとセキュリティ」セクションの下にクッキーに関する設定とコントロールが表示されます。それがすべてオンになっていて、自分で変更をした覚えがない場合は、おそらく3000万人の一人である確率が高いです。
追跡はまだ続行だけど、ちょっとはマシに?
Googleはもちろん、クッキーを廃止して自社のビジネスをつぶすつもりはありませんし、広告で収益を上げている企業を傷つけるつもりもありません。現在Googleは、規制当局と独禁法違反の訴訟中だからです。
クッキーは廃止してもGoogleはユーザーを追跡する新しい方法「プライバシーサンドボックス」を採用していきます。Chromeブラウザ自体がオンラインでの私たちの行動を追跡をするのですが、それをGoogleやほかのどこかに送るのではなく、デバイス自体にデータを保存。Chromeはその後、私たちユーザーがどのような人物であるかグループに分類します。
ウェブサイトや広告会社はChromeに私たちがどのグループにいるかを尋ねることはできます(例えば、高性能自動車部品が好きな人、脱毛製品が好きな人など)。ただ、企業が我々のブラウジング行動について教えてもらうにはGoogleのルールに従わなくてはいけません。
これは現状の数十億ものセンシティブな情報がインターネット中に飛び交っている状況よりも、だいぶいい方法だと言えます。ただ私たちはそれでもやっぱり追跡はされているため、プライバシーが守られているとは言えません。Firefox、DuckDuckGo、AppleのSafariなどの他のブラウザは、ずいぶん前にサードパーティクッキーをブロックしていますが、代わりに新しい追跡ツールを入れ込むことはしていないんです。
ただ、アメリカやEUなどでの独禁法違反の調査が継続中のため、現時点でデータの流れをすべてカットしてしまうことはできません。なので代替案のプライバシーサンドボックスが出てきたわけです。Googleも最大限がんばってはいるようですが、プライバシーを守りたい人たちはChromeの新しいデータ体制に完全に満足しているわけではありません。
プライバシーサンドボックスにも不満の声はある
非営利組織電子フロンティア財団は「Googleとその子会社は、これをユーザーにとって有益なものとしてマーケティングするという、今やおなじみの手法を使いながらインターネットイノベーションの首を締め上げています。Googleのプライバシーサンドボックスはトラッキングを1つの強力なブラウザであるChromeに限定し、それに対して支払いをしたい広告主に提供するのです。これはブラウザをユーザーエージェントから広告エージェントへ変える過程にすぎません」と批判しています。
電子フロンティア財団はChromeユーザーに対して、ブラウザ拡張機能「Privacy Badger」のインストールをすすめています。これはChromeの新しいトラッキング設定を自動的に無効にし、ウェブを使用する際のさまざまなデータ収集をブロックするツールです。
多くの広告会社はGoogleの新しいプライバシーサンドボックスにすでに参加していますが、一部の企業はプライバシーサンドボックスを自社ビジネスへの脅威と見ています。プライバシーサンドボックスとChromeの新しい変更は、プライバシーが守られすぎて困るテック企業もあると同時に、まだまだプライバシーが守られていないと批判するプライバシー擁護者もいるということです。
去年、米ギズがGoogleのVictor Wong氏に、いろんな人たちを怒らせることになるだろうプライバシーサンドボックスプロジェクトに着手することについてどう感じているか尋ねました。
Wong氏は「私たちが正しいことをしているというサインだと思います。私たちはより広範なエコシステムの一部であるだけなので、すべての人にとってバランスのよい方法を取ることにしました。私たちは消費者の生活と、起業家、パブリッシャー、クリエイター、開発者たちの生計を改善しようとしています。こういった異なるグループが一つの戦略に完全に同意することは決してありません」と回答しています。
結局、クッキーって完全になくなるの?
答えはノーです。ネットを使っていて、クッキーが実際に何なのか気になる人は多くないと思います。クッキーは基本的にはテキストファイルで、その文字・数字列はユーザーそれぞれに対して一意の組み合わせとなっています。ウェブサイトはこのクッキーをブラウザに保存し、サイトを訪れるときにそのクッキーを認識できるかどうかを確認します。ユーザーに関する情報のデータベースを確認するために使用されているのです。
「ファーストパーティクッキー」は、その時見ているウェブサイトによって操作されるクッキーです。これは無害だとされていて、逆に役に立ってくれることさえあります。ファーストパーティクッキーは、ログインしていることを記憶しておいてくれたり、ショッピングカートに追加したものを覚えていてくれます。これはネットを使うにあたってユーザーにとって大変便利なので、この種のクッキーはなくなる予定はありません。
そして今回廃止されるサードパーティクッキーは、これまで説明してきた通り、私たちをスパイするために使用さています。サードパーティクッキーはオンライン広告会社が私たちが訪れたすべてのウェブサイトと、そこでおこなったことを追跡するクッキーです。というわけで、長くなりましたがGoogleが廃止するのは、こっちのスパイクッキーの方です。これまであまり気にしていなかった方もクッキーに詳しくなっちゃいましたね!