災害時に役立つ!
ガジェットの評価を左右する決め手のひとつがバッテリー性能。すぐにへたってしまったり、頻繁に充電が必要だったりするとテンション下がりますよね。特に「充電が切れやすいウェアラブル」なんて最悪です。使うのも億劫になって、タンスの肥やしになってしまう可能性大…。
ですが皆さん、ここで朗報です。ある科学者チームが、伸縮性と自己回復機能を備えた完全リサイクル対応の「熱電発電装置」式ウェアラブルのコンセプトを生み出したのです! いつの日か、ウェアラブル自身が「モノのインターネット」にパワーを供給してくれるかもしれません。
学術誌『Science Advances』に掲載された論文によると、科学者チームがポリイミンと液体金属の配線を熱電モジュールチップと組み合わせることで、柔軟性のある機械アーキテクチャを生み出すことに成功したとのこと。
体温からエネルギーを集めて発電できる仕組み
これはつまり、伸縮性の高い素材にチップを搭載したことで、自己修復可能なのはもちろん、複数のアーキテクチャに再配置可能(レゴみたい)なデバイスのコンセプトができたということです。さらに、1cm²あたり1ボルトという、非常に高度な開回路電圧も実現したそう。
これをひと言でいうと、「熱を集めて大量の電力を得られるようになる! 硬くて頑丈な入れ物じゃなくても耐久性の心配もなし」ってことです。 熱電発電機のすごいところは、「熱からエネルギーを集めて発電」できるかもしれないという点。これが実現すれば、ガジェットは大きく進歩することになるでしょう。まるでマトリックス(ディストピアの要素は薄め)。
理論的には熱電技術を使用すれば体温を電気に変換し、デバイスに電力を供給することも可能に。充電そのものの必要性がなくなるわけで、そうなればスマートウォッチなどウェアラブルのバッテリー問題はすべて回避できます!(あくまで理論上、ですが)。
柔軟性のある素材にチップを入れることで、壊れにくいのにフレキシブル
ただウェアラブルデバイスやその内部センサーには、現段階の熱電発電機が生成可能な電力よりも多くの電気が必要です。これが問題。しかもスマートウォッチやウェアラブルって、意外と過酷な環境にさらされることも多いですよね。ウォッチつけたまま食器洗ったりして…。これって電気製品にフレンドリーじゃない。
エクササイズ中の「跳んだりはねたり」にも耐えてもらわないといけないし、あらゆる体型の人に合うように柔軟で強くなければいけない。これまで熱電発電機のチップは「硬くて脆い」が定説でしたが、今回科学者チームは壊れにくく伸縮性のある素材にチップを入れる方法を発明した、というので、これは大きな一歩です。
また、約6cm×25cmのいわゆるスポーツ用ウェアラブルなら、歩くだけで5ボルトの電力を生成できるそうで、これもまた嬉しい情報です。これなら「無線周波数通信で低電力センサーノードを直接駆動する」のに十分だと科学者チームは言っています。まだまだ成長段階とはいえ、実現可能なスタートだと言えます。
破損しても自分で回復。異なる構成に繋ぎ直すことも可能
しかし、この発明の本当にすごいところは、デバイスが自己修復する点です。液体金属配線を使用しているため、万が一破損した場合でも、約90分もあればふたつの部品を繋げて導電率を回復させることができるのです。これはある意味、デバイスをカットしていろいろな構成に繋げ直すこともできるということ。
また、このデバイスはポリイミンでできているので、特定の溶液に浸すことで簡単に個別のコンポーネントに分解できます。そしてその溶液を使って新しいポリイミンフィルムを作り、再び熱電発電デバイスを生成できるのです。
これは電子製品の廃棄物削減の観点から見て、非常にエキサイティング。今のバッテリーは環境に優しくありませんし、大手のウェアラブルメーカーは1、2年に一度は(大して必要でもない)アップグレードを顧客に強制していますから。もう携帯電話メーカーと同じくらい罪深いです。
一部のガジェットメーカーはスマートフォンやスピーカーのリサイクルプログラムを導入していますが、フィットネストラッカーやスマートウォッチではそれほど一般的ではありません。今回の発明はバッテリーへの依存度を低下させることに加えて、リサイクル可能な側面もありますから、将来的にはこの技術を活用し、メーカーが使用済みウェアラブルを回収してコンポーネントを再利用する時代が来るのかも。
将来的に幅広いデバイスに実装されるかも! いや、してほしい!
誤解されるといけないのですが、次機種のApple Watchが体温から電気を作るということではありません。研究はまだ初期段階で、大手ウェアラブルメーカーが消費者向け製品にこれを採用するかどうか、保証はありません。実装に至るには、費用対効果が高く、スケーラブルで、かつ消費者が扱いやすいデバイスでなければなりません。とはいえ、これは間違いなく今後さらなる研究価値のある興味深いソリューション。続報を待ちたいと思います!