次の休みにやりましょう!
パソコンはWindowsか、Macか? もちろんほかにもLinuxなどの選択肢はあるものの、一般的にはほぼ2択の世界ではないでしょうか? でも、このところChromebookの存在が気になっているという人はけっこう多いはずです。すでに海外では、もっとも売れているラップトップに名指しされる勢い。そろそろデビューしてみたいなとか、次に買い替えるときは選択肢の一つにしてみたいなって気持ちがうずいてませんか?
ちなみにChromebookが登場した当初は150ドル(1万円台)程度のお手頃モデルが続々と発売されて賑わっていたのですが、最近は高級化の波が押し寄せているようです。5万円前後のモデルが買いとされており、日本のAmazonをのぞいてみても3万円台が最低価格に。この価格帯になると少し悩んでしまいます。
というのも、同じ価格帯でWindows 10を搭載するラップトップを検索してみるといろいろヒットします。もちろんこのレベルのスペックではWindows 10をバリバリと動かすのは苦しく、同じスペックでもChromebookならサクサクと動くはず。しかし下手をすると、Microsoft Officeがセットで新品のWindowsラップトップが3万円代で選べてしまうことを考えると、同じ値段でChromebookという冒険をしてもよいものだろうか? そもそもWindowsラップトップを、2万円弱で購入できることだってありますしね?
ついつい二の足を踏んでしまうケースは、意外とありそうです。これがもし1万円台でChromebookを買えますだったら、なんのためらいもなくポチれるんだけどな~。じゃあ、いっそのこと自作してしまいましょうか? うまくいけば無料でChromebook体験だってできそうですし。それで本当に気に入ったら、今度こそ大枚をはたいてでも気に入るスペックのChromebookを購入すればいいわけでして。
USBメモリからChromebookを作ろう
Chromebookと一言でいっても、要はChrome OSというシステムが搭載されたラップトップのことです。メーカーによっては、ほぼ同じモデルのラップトップにWindows 10を搭載して売り出すと同時に、Chrome OSを搭載してChromebookとして販売しているケースも見受けられます。つまりは自分でOSをインストールし直しさえすれば、いま持っているラップトップをChromebook化できるのです。
本来、素人が簡単にChrome OSをポンと入れられるほど甘くはないのですが、便利なツールが存在します。USBメモリから自前のラップトップをChromebook化してくれる「CloudReady」です。 ニューヨークに本社があるNeverwareが、Chrome OSと同じオープンソースアーキテクチャのChromium OSを、USBメモリから起動可能な形にして提供中。通常は有料なのですが、サポートなしのHome Editionであれば自由に無料でインストールして使えます。
CloudReadyのシステム要件は、2007年以降くらいに発売されたラップトップでメモリ2GB以上のスペックであればほぼどれでも動く、というなんともざっくりした内容。USBメモリさえ用意できれば、使えなかったらあきらめればいいわけでして、動けばラッキーくらいな気分でトライしてみることにしましょう。Windows 7以降のOSが搭載されているラップトップを購入して使っていた人なら、挑戦してみる価値があるのではないでしょうか?
ボクはAcer(エイサー)の「Aspire V5」を、Windows 8からWindows 10へとアップグレードして使ってきました。このところ更新を重ねるごとに動きがカクカクして使いものにならなくなっていました。すでにメインマシンは別のものになり、ほとんど眠っているので、こちらでトライしてみることにします。搭載されているメモリは4GBと、スペック的にはCloudReady向けにも十分のようです。
CloudReadyのホームページを開いたら、USBメモリをChromebook化ツールに仕立ててくれる「CloudReady USB Maker」のダウンロードリンクを見つけましょう。なお、CloudReady USB Makerは、Windows 7以降のOSが搭載されたWindowsマシン上であればどれでも動くので、Chromebook化を試してみたいマシンとは別の環境で作業することも可能ですよ。
CloudReady USB Makerをダウンロードして開きます。8GBないしは16GBのUSBメモリを差し込み、ボタンを押して20分ほど待つだけ。特に難しい作業は必要なく、あっさりできあがりました。
手持ちのラップトップがChromebookに!
あとはUSBメモリをChromebook化したいWindowsマシンのUSBポートへ差し込み、そのUSBメモリからパソコンを起動させられれば、あっという間にCloudReadyが立ち上がります。
PCのモデルによりますが、電源を入れてすぐにF12キーなどを押すとブートメニューが立ち上がります。そこからUSBメモリを選べば、CloudReadyが起動するはず。しかし最近のWindowsの場合、USBメモリからOSを起動するには高速スタートアップ機能を無効化しなければならなかったり、UEFI/BIOSの設定をいじらなければならなかったりするケースが多いです。ブートデバイスの起動優先順位でUSBメモリが上にくるように設定しておきましょう。
無事にUSBメモリから起動できると、こんな画面でCloudReadyが立ち上がっていきます。
起動ロゴからこちらのWelcome(ウェルカム)スクリーンに切り替わったら、なんともChromebookっぽい設定画面が表示されますよ。右下の各種アイコンの表示エリアをクリックするとWi-Fiにつなげられます。後ほど接続することもできますが、ここで設定しておくとスムーズでしょう。基本的にインターネット常時接続が必須となるChromebookで、やはりWi-Fiは命綱のようなものですからね。
なおこのとき、パソコンの本体ストレージにCloudReadyをインストールするアイコンが見つかります。今回のようにWindows環境はそのままにし、USBメモリを差して起動したときだけChromebookとして使いたいという場合は絶対に押さないようにしましょう。メインドライブのWindows OSが完全に消去されてしまって、CloudReadyのクリーンインストールに進んでしまいます。もうWindowsとしてはそのマシンを使わないという覚悟が定まっている人ならいいですけど、その後の保証はありません。以前はCloudReadyとWindowsのデュアルブート環境をセットアップできた時代もあったようなのですが、いまは単体でしかインストールできないようになっていますよ。
ChromebookとGoogleアカウントは切っても切れない関係です。逆にGoogleアカウントさえあればもうそれでChromebookの利用はスタートしたようなもの。ただここで日本のユーザーにとって最初にぶつかる難関は、CloudReadyのデフォルト設定がUSキーボードのレイアウトという点でしょう。Googleアカウントに「@」の入力は欠かせないと思うんですけど、いつも押してる場所で@が出てこないんですよ…。英語配列のキーボードでは、Shiftキーを押しながら「2」キーで、@を入力できるので、これだけはCloudReadyのセットアップにあたって覚えておきましょう。
無事にこの画面までたどり着いたら、あとはスタートボタンを押すだけで、いよいよなんちゃってChromebookが使えるようになります。
こちらの画面が表示されたら、CloudReadyの設定が完了し、みごと正常に立ち上がったサインです。めでたし、めでたし~。ちなみに今回のChromium OSのバージョンは83で、最新のChrome OSの安定版と、ほとんどギャップを感じることなく使えるみたいです。
CloudReady、どこまで使える?
晴れてWindowsラップトップがCloudReadyによって、なんちゃってChromebookへと生まれ変わりました。さてさて、このUSBメモリからの起動で、いったいどこまで使えるものなのでしょう? 過去にもメインドライブへインストールすることなくCD-ROMやUSBメモリからLinuxなどを起動して使ってみたことはありますけど、あまりにも遅かったり、動作が不安定だったりで、日常使用には耐えなかった苦い思い出があります。CloudReadyも、やっぱりその類なのかな?
まずはCloudReadyが立ち上がったら、最初に日本語が使える設定に切り替えましょう。言語で日本語を選び、キーボードで同じく日本語を選ぶだけで、あっさりとUSキーボードの呪縛から解き放たれました。これさえ終えれば特に日本のユーザーでも、大きなストレスを抱えることなく使えるのは便利です。
Chromeブラウザを立ち上げてブラウジングしてみました。Wi-Fiの接続も安定していて、いたってスムーズにページの閲覧ができます。というか、Windows 10の環境よりもサクサクと動くことに感動してしまいましたよ。これってなかなか使えるんじゃ?
素のままのChromebookは、ほとんどなんにも入っていません。まずはほしいものをChromeウェブストアからドシドシとダウンロードしていきたいと思います。LINEとかOfficeとか、Chrome拡張機能で使えるものってかなりあるんですね~。
Chromeのテーマをカスタマイズすると、自分好みのデザインで使えて楽しいです。それにしてもいまや選びきれないくらい豊富なテーマがそろいましたよね。
基本はなんでもChromeブラウザ上で使っていくのがChromebookの強味でもあり弱味でもあるのですが、よりPCライクにアプリをダウンロードしていくことも可能です。Office系や画像編集、ゲームアプリなどもそろっており、かなりのことはCloudReadyだけでも済ませられそうですよ。
意外に使えるなと思ったのは、Windows 10の環境のドライブへもすべてCloudReady側からアクセスできるようになっていたことです。Windowsに保存したファイルを、Windowsを立ち上げることなく扱えます。
いま多用するようになったZoomもアプリから驚くほど快適に使えます。CloudReadyの動作はアップアップになっていたWindows 10の動作よりも圧倒的に軽快なので、できるならばWindowsには戻らずCloudReadyだけを使っていきたいなと正直に感じられる高い完成度でしたね。
注意しなければならないのは、CloudReadyの終了のさせ方でしょうか? いきなりブチッとUSBメモリが抜かれたり、電源ボタンを長押しして強制終了させたりしようものなら、また最初から設定をし直さなければならなくなるようです。きちんと「電源を切る」から終了するのが大切です。あと、画面は暗くなってもUSBメモリへのアクセスが続いていることもあるので、電源が完全に落ちる前に焦ってUSBメモリを抜いてしまわないようにしましょう。
きちんと終了さえできていれば、次からはこのようなログイン画面が立ち上がり、自分のデスクトップ環境が復元されていきます。そうはいってもUSBメモリからの起動には変わらないので、Chromebookがウリにしている超高速起動とはいきません。でも、それ以外は、あまり不満なところが思い浮かばないくらいの快適ぶりでした。というか、どれだけWindows 10が重くて古いマシンに負担をかけていたのかってことなのかもしれませんけど。
高速起動でAndroidアプリも使いたいなら
CloudReadyで完成するChromebookもどきのラップトップを、Windows 10が残されたまま望むときだけ楽しむ…。その願いはかないましたが、CloudReadyには重大な欠点があります。それは、最新のChromebookがGoogle Playストアに対応しAndroidアプリを使えるようになっているのに、CloudReadyでは未対応なこと。Androidアプリが使えないと、Chromebookの魅力は半減してしまうなという人には、やや不満が残りそうです。あとUSBメモリからだと、起動が遅くなってしまいますしね。
手持ちのラップトップから完全にWindowsを消し去って、CloudReadyをメインドライブにクリーンインストールしてしまえば、高速起動にまつわる問題は解決されます。ただそこまで大胆に踏み込んでしまうのは?とためらってしまう人だって少なくないことでしょう。むしろ理想はHDDの余っている領域に別のOSをインストールし、デュアルブート環境を築くことなのでは?
マルチブート環境の構築は基本的にリスクが伴います。自分で適切にパーティションを切る(ストレージの領域を複数のOS用に分割する)など、慣れていないと誤って必要なデータが消えてしまう手順が付き物でした。
ただ時代は大いに進み、Windows上でファイルを実行するだけで簡単にAndroid OSとのデュアルブート環境を築ける選択肢がそろっています。そのなかでも注目は、インドで進行している「PrimeOS」のプロジェクトでしょう。もとは「Andorid-x86」のプロジェクトがベースになっているPrimeOSは、インドの教育業界に低価格かつ低スペックでも快適に使える「Primebook」なる新ラップトップの普及を目指して立ち上げられました。要はAndroid OSが載ったラップトップを、Windowsマシンの代わりにグイグイとインドで広めていこうとの理念でプロジェクトが進んでいるのです。そのPrimeOSが一般ユーザー向けにも無料提供されているんです!
PrimeOSはスペックに応じて3種類のラインナップが用意されています。2014年以降に製造されたCPUを採用する比較的新しいラップトップ向けには「PrimeOS Mainline」が、それ以前のラップトップ向けには「PrimeOS Standard」が合うとのこと。僕のAspire V5には、PrimeOS Standardが良さそうです。 この2つはいずれも64bit版ですけど、もっと古い2011年以前のCPUが搭載されたラップトップ向けに32bit版の「PrimeOS Classic」も用意されていますよ。
CloudReadyと同じようにOSをUSBメモリへインストールし、USBメモリから起動させることも可能です。ただ今回の目的は、メインドライブへインストールし、Windows 10とのデュアルブート環境を構築すること。ダウンロードするのは「Windows Installer」のほうを選びましょう。デュアルブートさせたいマシン上でダウンロードします。
ダウンロードしたファイルを開くと「PrimeOS Installer」が自動で立ち上がります。もしWindowsのセーフモード(セーフブート)が有効になっているとそのままではデュアルブート環境を構築できないため、最初に解除しておきましょう。
PrimeOS Installerの醍醐味は、PrimeOSのために割きたい容量を選ぶだけで、WindowsのCドライブの空き容量を自動で計測し、自動でパーティションを切ってくれる敷居の低さにあります。推奨最低容量は6GBとなっていますけど、HDDの空きが豊富にあるならば、ここは豪勢に割り当ててあげてもよいかもしれません。
インストールが無事に終了すると再起動を求められますが、その後に立ち上がるのはこんな怪しい白黒の英語の画面です。Linuxをデュアルブートさせていた人には懐かしいGRUBを用いたブートローダーで、なにもしなければPrimeOSが、カーソルを下に動かすとWindows Boot Managerが起動する仕組みになっています。
PrimeOSのセットアップが無事に終わると、こんな感じのデスクトップが立ち上がります。CloudReadyとの大きな違いは、ドドンとトップにアイコンが配置されたPlay Storeの存在でしょうね。これでガシガシとAndroidアプリをインストールしては、キーボードとマウスで使いまくれますよ…。
まず最初にインストールすべきは日本のユーザーなら「Google日本語入力」でしょう。
ボクのAspire V5はタッチスクリーンになっているので、Android OSとの相性は抜群でした。どうしても使いたいAndroidアプリがあるってときはPrimeOSのほうがいいかな? もちろん本体ストレージにインストールしているため、起動も速いです。
再起動をかけてWindows 10へ戻ってくると、PrimeOS用にパーティションが切られているのがわかります。あとユニークなのは、Windowsデスクトップの「Prime Switcher」をダブルクリックすると、ここからでもPrimeOSへ切り替えが可能な点でしょうか。
どうしてもWindowsでしか使えないソフトやタスク以外は、CloudReadyやPrimeOSでも十分だと感じました。日に日にWindows離れが進んでいく自分が怖くなりそうです。Chromebookデビューを果たす前に無料で試せるなんちゃってChromebook化は、外出自粛中の暇つぶしにも最適かもしれません。
Source: CloudReady、PrimeOS