探査兎さん、餅つき機能はありませんか?
1月3日の朝、中国の探査機「嫦娥(じょうが)4号」が、月の裏側に人類史上初めて着陸に成功し、その約10時間後に搭載していた探査車「玉兔(ぎょくと)2号」を発進させることにも成功しました。これも史上初めてで、移動できる小型探査車が月の裏側で活動する、という快挙となりました。
中国中央電視台CCTVとAP通信によりますと、「玉兔2号」が放たれたのは北京時間の1月3日木曜日、午後10時22分だったとのこと。月の表面は柔らかく雪が積もったかのような状態で、「玉兔2号」が「嫦娥4号」の伸ばした延長レールからが降り、キャタピラの跡をつけながら進んだ様子が届きました。
宇宙征服の第一歩となるか?
これは中国国家航天局(CNSA)だけでなく、急成長している中国の宇宙計画にとっても大きな成果となりました。月探査プロジェクトの主任デザイナー、Wu Weiren氏はCCTVにこう語っています。
探査車にとっては小さな一歩ですが、中国にとっては大きな飛躍です。これは私たちの宇宙探査と、宇宙の征服にとって決定的な動きとなります
“宇宙の征服”とはなかなかの爆弾発言ですが、ここは直訳すべきではなく、おそらくその真意は「自然を凌駕していく人類の成長」ということじゃないかと思われます。映画『星珠大戦』よろしく、銀河帝国を築き上げようということではない……と願いたいところです。
月の裏側初の近接写真

「嫦娥4号」が撮影したこの写真は、6輪のローバーが月面に2本の轍を残して走り出している様子が写っています。しかし「玉兔2号」の進行方向に、クレーターと思われる巨大な穴が見えますね……大丈夫でしょうか?
この画像と続くもう一枚も、着陸当日に撮られたものです。月の裏側というのは地球から絶対に見えない場所で、これらの写真は史上初のもっとも月の裏の地表に近い場所で撮影されたものになります。

余談ですが、ピンク・フロイドの名作『狂気(The Dark Side of the Moon)』のお陰なのか? 月の裏側は「暗黒面(ダーク・サイド)」とも呼ばれています。ですが地球からだと一面しか見えないだけで、実は公転に伴い太陽光を受けるので、この呼称は厳密には間違いだったりするんですよね。
探査車の能力
AP通信によりますと、「玉兔2号」の6輪はそれぞれ独立して動くので、1つかそれ以上の車輪が突然故障しても動き回ることができるとのこと。
そして高さ20cm以下の障害物を乗り越えられ、20度までの勾配を登ることが可能です。そして最高速度は時速200mくらい。時速1kmの5分の1なので、人の歩行速度(時速4〜5km)の20〜25分の1ほどでしょうか。かなりゆっくりですね。
またAP通信いわく、「嫦娥4号」はかつてなかった画期的な技術を使い、着陸前に月面を自動スキャンし、着陸場所を選んだとCNSAが話している、と報じています。
1号の活躍と2号の目的
2013年、中国は今回の「嫦娥4号」の先輩にあたる3号から、1号機である「玉兔号」を月の表側に展開しています。これは1973年にソビエト連邦が打ち上げた、ルノホート2号以来初めての、月面軟着陸となりました。しかし「玉兔号」は、月面で2晩経ったのちに活動を停止してしまうトラブルに見舞われたのでした。
ですが2号はいまのところ上手く行っているようですね。「嫦娥4号」と「玉兔2号」はいずれも、月面からサンプルを採取し、科学者たちに太陽系の初期の状態を分析させるお手伝いをします。もしかしたら氷が見つかるかも知れませんし、太陽風と月面の関係性も判明するかもしれません。
CNNいわく、この探査機には植物も載せられており、低重力下でそれがどのように育つのかも実験しつつ探査が行なわれるほか、カイコの卵も乗っていて、正常に孵化できるか調査されるそうです。いよいよ宇宙進出という感じがしてきます。
中国の狙い
各種の貴重な科学データを集めることに加え、中国はアチコチ偵察をしつつ、月への有人船着陸のために必要な技術を開発しています。さらに北京は、最終的に月面基地を建設したい旨を公表しています。
確かに、中国はついに宇宙対応可能な国家としての地位を主張し始めており、そしてそれは急速にアメリカ、ロシア、そしてEUに追いついています。新たな競合が参入するのは、この業界に新たな刺激になることでしょう。マジで『星珠大戦』を起こして、月の裏側を狂気の暗黒面にしない限りは、ですけれども。
Source: AP, CNN, INDEPENDENT, The Telegraph