強力かつ高速なので、患部以外が被爆しません。
アメリカ合衆国エネルギー省が所有するSLAC国立加速器研究所と、スタンフォード大学によって開発された新しい加速器ベースの技術が、ガン放射線療法にかかる時間を数分から数秒に短縮することにより、副作用を減らそうと新たな治療装置を開発しています。
FutureTimeline.netによりますと、この技術は「PHASER(フェイザー)」という名が与えられたとのこと。将来的には小型の医療機器に組み込まれ、放射線治療をより身近なものにしてくれます。
装置のブロンズ色の部分が、SLACで開発中の新しい高出力加速器です。
研究チームの目的
ガン治療で狙った腫瘍以外をなるべく被爆させないよう、ガン細胞のみを超高速かつピンポイントで爆砕させる、というものなんです。
チームは現在、X線を使用するプロジェクトと陽子線プロトンを使用するプロジェクトの2つのプロジェクトを進めるため、いずれも大きな資金提供を受けています。
「PHASER」
スタンフォード大学医学部の放射線腫瘍学にいるビリー・ルー准教授はこう話します。
1回の治療で、1秒以下の照射を1度だけ行ないます。これにより動いている臓器に放射線が当たることを防ぐのです
とはいえ高強度の放射線を充分かつ効率的に照射するためには、今日の技術よりも数百倍強力な加速器構造が必要とのこと。なので受け取った資金が、開発の大きな助けになるのだそうです。
今日の医療機器では、電子は長さ約1mの管状構造の加速器を通過し、そのとき高周波フィールドからエネルギーを得て、X線に変換される仕組みになっています。ですがチームは、特別な形状の新しい加速器を試作し、シミュレーションで予測通りに動作が確認されているのです。これが従来より小型なのに、パワフルな結果を残しています。
今後は「PHASER」を3〜5年後に臨床試験で使用できるレベルにし、技術が抱えるリスクをテストするとのこと。
プロトン治療機
X線ではなく陽子線を使う装置は、体内のより狭い容積に腫瘍を殺すエネルギーを蓄積するため、X線よりも健康な組織にあまり有害ではありません。しかし陽子線療法は陽子を加速させ、そのエネルギーを調整するために大きな施設を必要とするだけでなく、数百トンの磁石を使用して、患者の体の周りをゆっくりと移動し、ビームをターゲットに誘導する、大変に大掛かりな装置なのです。
チームはこれについても助成金を得たので、「PHASER」のように新たな加速器構造の設計、製造、テストを始めるとのことです。
これらの装置が実用化されれば、安価で省エネの放射線療法となり、しかも既存のシステムと互換性のあるものになるそうです。
患者にも医師にも、使用のハードルをグっと下げることを目標に、SLACチームは日々努力を重ねているのです。頼もしいですね。
Source: YouTube via FutureTimeline.net via SLAC