AIを神として実現する宗教理念。
現在UberとGoogleのWaymoは自動運転車に関する機密情報の盗用をめぐって争っています。その中心にいるのが元GoogleエンジニアであるAnthony Levandowski氏です。Levandowski氏は自動運転トラック会社であるOttoの共同ファウンダーであり、そのOttoは2016年にUberに買収されています。Google在籍時の機密情報を盗んでOttoでの自動運転トラックの開発に利用した、とGoogleに訴えられて業界で大きな話題になり、今年5月にはUberからも解雇されています。
そんなLevandowski氏が「Way of the Future」という宗教団体を創立していたことが、この度WiredのBackchannelの報道で明らかになりました。団体のミッションは次のようになっています。
人工知能(AI)に基づいたGodheadの実現を促進し開発すること、そしてGodheadの理解と崇拝を通して社会をより良くすることに貢献すること。
抽象的な表現になっていますが、人工知能を活用してGodheadなる神的な存在を実現するということでしょうか。
人工知能の出現には多くの起業家や科学者たちが警鐘を鳴らす一方で、社会をより良くするテクノロジーとして楽観的に捉えている人たちも多く存在します。既存の宗教とどう折り合いを付けられるのか分かりませんが、社会を改善するための究極の存在としてAIを崇拝するLevandowski氏の考えに同意するエンジニアはシリコンバレーには多く見つかる...のかもしれません。
「AIを神として崇拝する宗教を元Googleエンジニアが創立した」というセンセーショナルなニュースは多くの海外メディアも飛びついています。英Guardian紙は映画「エクス・マキナ」に言及しながら、「新しいテクノロジーと科学的な発見は常に宗教に変革を与え、古い神を殺し新しい神を作り出してきた。これは歴史が語っている」と壮大な文脈で語っています。The Vergeの報道によると、Way of the Futureは宗教団体として税金の免除を受ける申請はまだ行っていないとのこと。
Levandowski氏はUber元CEOのTravis Kalanick氏とのメッセージのやりとりで「ボットひとつずつ、我々は世界を征服するんだ」という発言もしており、リスクを恐れない野心家であることも知られています。Way of the Futureも本格的な活動はまだ表面には出てきていませんが、何らかの目的があって設立されたことは間違いなさそうです。
WaymoとUberの裁判においては、企業秘密の窃盗に当たる可能性があると連邦検事に証拠の一部が送られています。これによってLevandowski氏が刑事訴訟と実刑判決の対象になる可能性も出てきています。
source: Wired Backchannel, The Guardian, The Verge,
(塚本 紺)