死刑囚が死刑執行で失敗の多い薬物投与の代わりに銃殺を懇願

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    死刑囚が死刑執行で失敗の多い薬物投与の代わりに銃殺を懇願
    image: CA-SISS / Shutterstock
    死刑囚が死刑執行で失敗の多い薬物投与の代わりに銃殺を懇願

    薬殺刑はスムーズに死ねないイメージが定着。

    ここ数年、アメリカでは薬殺刑に使われる薬物がすぐに効かず、長時間苦しみながら死ぬという事例が発生しています。そんな中、ジョージア州・アトランタの刑務所に収監中のJ.W. Ledford Jr.死刑囚が、銃殺による死刑執行を裁判所に要請しました。Ledford死刑囚は1992年、彼が20歳のときに近所に住む老人を刺殺。現在45歳になり死刑が言い渡されていました。

    アメリカでは、州によって薬殺刑のみと薬殺刑か銃殺を選択できる州があり、この死刑囚がいるジョージア州は薬殺刑のみの実施となっています。彼は長い間「痛み止め」を服用していたため、執行に使用される薬物が効かずに苦しむかもしれないと主張していたようです。

    彼の弁護士によると、Ledford死刑囚が神経痛のために服用していた痛み止めはニューロンチンというもので、これを服用していると薬物投与後の苦痛が増すとのことでした。

    アメリカでは薬殺刑に使われる薬物が不足しており、これが最近の薬殺刑による惨劇の原因を招いているようです。2014年に起こったケースでは、薬物が効かずに43分間も苦しみ死亡に至ったとのことで、それを見ていた人は「まるで激しい拷問のようで壮絶な最期だった」と話しています。またThe Atlanticによると、アーカンソー州では2017年4月の内8日間で4名もの死刑が執行されました。その理由は在庫として残っていた薬物の使用期限が切れそうだったからというものです。そのうちの1名の執行には問題があり、死刑囚はのけぞり、痙攣を起こして咳き込み、身を悶えるという状態が20分も続いたとのこと。まるで地獄絵巻です。

    現在、ミシシッピ州、オクラホマ州、ユタ州だけが銃殺刑を認めています。しかしCNNによると、2010年6月にユタ州で行なわれて以来、アメリカで銃殺刑は執行されていないとのこと。ジョージア州では銃殺刑は認められていないため、なおさらこの死刑囚の要求は受け入れられない見込みでした。また、ジョージア州のとある弁護士はCNNでこのように述べています。

    原告は死刑執行の直前に、「痛み止めを飲んでいたため薬物が効かない恐れがある」と言いました。「薬殺刑ではなく銃殺刑を」という要請は執行数日前ではなく、何年も前にできたはずなのに。

    The Washington Timesによると、現地時間の2017年5月16日にLedford死刑囚は死刑が執行されました。結果的に彼の要求は棄却され薬殺刑が行なわれたとのことです。

    アメリカは先進国で死刑をおこなっている数少ない国のひとつ(日本もです)。 Live Scienceによると、ヨーロッパにはかつてアメリカに薬殺刑用の薬物を輸出していた国々がありましたが、現在は輸出が禁止されています。これはアメリカの死刑制度に反対の姿勢を表しているんだとか。

    ですが、いくら極悪人でも死をもって罪を償うわけですから薬殺の失敗といった拷問のように壮絶な最期を遂げることがあってはなりません。これからのアメリカの死刑制度、どのように変わっていくのかまた議論が生まれそうです。

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    top image: CA-SSIS / Shutterstock
    source: CNN, Live Science, The Washington Times

    Matt Novak - Gizmodo US[原文
    (岩田リョウコ)