ついにこの日がやってきました。Apple Payを日本で使える日が。
今日10月25日であろうことは、SuicaとiDのメンテナンスが行なわれると発表されたことからかなり予感が高まっていました。でも、10月からサービスインすると発表されたiPhone 7/7 PlusとApple Watch Series 2のスペシャルイベントから待っていた、そしてAppleのデバイスで非接触による決済が日本でできるのを待っていた身からすると、ようやく!というのが正直なところです。
もっともApple製品を愛する国のひとつである日本に対して、AppleはNFC(近距離無線通信技術の国際規格)を搭載したiPhone 6や第1世代のApple Watchと同時ではなく、この時期まで温めていました。その目玉がSuicaへの対応です。つまり、日本で本格普及させるためにはSuicaへの対応が必要だと感じていたのでしょう。
これによって、電車に乗ったりSuicaを使って買い物をすることもできるようになりました。もちろん、ほかの国のようにクレジットカードをApple Payに登録しての店舗やウェブ上での買い物もできます。
実際に体験してわかるスマートさ
実際に前日の10月24日にApple Payを体験できたので、その様子を紹介しますよ。まずはApple Payを使ったタクシーでの支払い。
受信端末のFeliCaマーク(上の写真ではテンキーの5と6の間の下部)に、iPhoneの上部を近づけることで決済できます。メインのカードとして登録されているカードを使用する場合は、Apple Payの画面を立ち上げておいたりディスプレイを点灯させておく必要はなし(逆に、別のカードを使いたい場合は画面を立ち上げて選択できます)。Touch IDに登録した指を乗せて、端末を近づけるだけでOKです。
めちゃくちゃスマート。タクシーを降りる際にあたふたするなんてことはないわけです。
また、画面を立ち上げずに使える機能も便利でした。これはSuicaとして使う際にも利用できるので、改札前でまごまごしてほかのお客さんに迷惑をかける心配もありません。
次に体験したのはTSUTAYA TOKYO ROPPONGI。
ちょっと文具とか本を買っておこう、みたいなシチュエーションです。メモ帳を買ってみました。取材前の慌ただしいときにサッと買うこともできるわけで、こういうときに財布を出さずに済むのっていい感じです。
カードの登録方法
Suicaの登録は非常に簡単。
まず、SuicaカードかSuica定期券の上にiPhone 7を置きます。するとカード内の残額や定期券情報が転送され、利用可能な状態になり、カード購入時に支払ったデポジット金も含めて転送されるんです。物理的なカードは不要になるため、持ち歩く必要がなくなります。
Apple Watch Series 2でSuicaを使いたい時は、iPhone 7のWatchアプリから追加可能(SuicaのカードはiPhoneとApple Watchで共用できないので別のカードを準備する必要あり)。Suicaのカードをつくりたい場合は、JR東日本のSuicaアプリケーションから作成可能です。
Suicaへのチャージも簡単です。Apple Payに登録したクレジットカードを使ってチャージできます。対応しているクレジットカードは以下の通り。
主要なイオンカード、オリコカード、クレディセゾン、JCBカード、トヨタファイナンスのTS CUBIC CARD、ビューカード、三井住友カード、楽天カード、Docomoのdカード、KDDIのau WALLETクレジットカード、ソフトバンクカード(三菱UFJニコスカードも今後対応予定)。
また、American Express、MasterCard、JCB、iD、QUICPayに対応しています。
こう書くと、VISAは対応していないの?となりますが、例えば三井住友VISAカードの場合、Walletに追加するとiDのカードとして使えるようになり、店舗での買い物が可能になります。ただし、オンラインとアプリケーションの決済ではAmex, JCB, MasterCardだけでVISAは使えないので、ウェブ、アプリのApple Payやウェブ決済であるSuicaのチャージには使えません。
クレジットカードの登録は、すでに登録済みのものを使用する方法のほか、上記のようにカメラで読み込むか、手動で入力することで完了します。
9月8日に発表されたiPhone 7/7 PlusやApple Watch Series 2でないとApple Payを使えないと思ってしまいがちですが、そのほかの端末でもフル機能というわけにはいきませんが使用できます。
特に標準ブラウザのSafariであれば購入する際に、iPad Pro、iPad Air 2、iPad mini 3以降や2012年以降に発売されたMac(Apple Pay対応のiPhoneまたはApple Watchと組み合わせる必要あり)で、Apple Payに登録したクレジットカードで支払ったり、登録してある住所に配送してもらうこともできます。これらは、対応しているECサイトのみですが、複数のECサイトを使いこなしている場合に、それぞれで入力する必要がなくなるのでかなり便利に感じられそうです。
セキュリティはどうなの?
決済が絡むということで気になるのがセキュリティ。そこで、来日中のApple Pay担当バイスプレジデント、ジェニファー・ベイリーさんに聞きました。
「安全性と個人情報の保護はApple Payの基礎となる重要な要素」と前置きした上で、まず安全性について。
iPhoneやiPad、Apple Watchを紛失した場合でも、「iPhoneを探す」機能で紛失モードに設定していただくことで、簡単にApple Payのご利用を一時停止することができます。リモートワイプ(遠隔消去)を実行していただくことで端末に保管されるApple Payを含む個人情報をすべて消去することもできます。iCloud. comにログインし、Apple Payの支払いを停止することもできます
つまり、物理的なクレジットカードを落とした場合はカード会社への連絡が必要になるのに対し、Apple Payを使っていて物理カードを家で保管している場合なら、一時停止や個人情報の消去を自分で行なえるだけでなく、「iPhoneを探す」で見つけられる可能性もあるわけです。しかも、Suicaの残高をiCloudから回復することも可能なんだそう。
そして、個人情報保護について。
Apple PayをiPhone等の端末に設定した場合も、お客様がお持ちのクレジットカード番号はお客様のデバイスやAppleのサーバーに保管されることはありません。お客様の端末には、各デバイス固有のアカウント番号が発行され、暗号化された状態で安全にデバイス内のセキュアエレメントに保管されます。Apple Payをご利用いただく際、お客様のクレジットカード番号が、加盟店に通知されることはありません
個人情報保護について先進的かつユーザーオリエンテッドな取り組みをしてきたAppleの姿勢が現れているといえます。
そのほか気になること
そのほか、実際に触ってみてわかったことなどをまとめました。
・マップアプリが使いやすくiPhone純正の「マップ」アプリを使用して経路検索をした際に、電車賃とともにSuicaの残額が表示され、残額が足りない場合はお知らせしてくれるようになりました。
・バッテリーが切れたらどうなるの?残念ながらバッテリーが切れてしまうと、iPhone、Apple WatchともにApple Payは使えないようです。しかしながらこれまででもっともバッテリー持ちがいい最新モデルであればその心配は少ないはず。
・クレジットカードがiDやQUICPayに対応していない使っている物理的なクレジットカードがiDやQUICPayの機能を搭載していなくても、カード会社が対応していれば、iDかQUICPayのいずれかに割り振られるので、利用可能。
などなど。このほかの使い勝手についてはこれからも触ってみて記事化するのでお楽しみに。
日本でようやく始まったApple Pay。体験してみて思ったのは、ハード、ソフト、サービスを統合してユーザーのことを考えたサービスになっていたこと。これは、Appleが日本をスペシャルな市場であると本気で捉えていることの裏返しでしょう。
source: Apple Pay - Apple(日本)
全国タクシー / TSUTAYA TOKYO ROPPONGIで撮影
(執筆:松葉信彦、撮影:K.Yoshioka)