読もうか迷っているなら……まずは1巻だけでも!
SF漫画「BLAME!」を筆頭に独創的な漫画の多くには読者と作品との相性が存在し、好き嫌いは分かれます。しかし苦手と思いながらも読み進めるうちに大ファンになっていた!ということもよくある話です。
今回は、アニメ「シドニアの騎士」や劇場版「BLAME!(ブラム)」予告編を見て漫画「BLAME!」に興味を持った人、しかし自分に合う作品か不安で手を出せずにいる人のため、「BLAME!」にハマる可能性の高い人10タイプを紹介します。
その前に、「BLAME!」とは
弐瓶勉氏による漫画「BLAME!」は超未来を舞台にしたSF作品。探索者・霧亥(キリイ)が世界を正常化する鍵を求めて超巨大都市構造内を旅する物語です。
この作品を手に取るきっかけで多いのは「SFが好きだから」というものでしょう。中でも「ポストアポカリプス世界に惹かれる」人達と、「建物や化け物が好き」な人達は、表紙とあらすじだけで衝動買いして即ハマる可能性が非常に高いはずです。ベン図にまとめてみました。
ご覧の通り「ポストアポカリプス世界に惹かれる」かつ「建物や化け物が好き」な人達は確実に「BLAME!」にハマると予想されますので、騙されたと思って今すぐ読んでみてください。講談社の作品ページでは試し読みが可能です。
今回の記事では
1、「最初から必殺技出せよ」と思いがちな人
「今回も侵入者が使用した兵器で直線状に七十キロの長さの穴が開いたわ」LOG.39 第一種臨界不測兵器 より
重力子放射線射出装置についてプセルの報告
オススメエピソード:LOG.32 振動
キリイの武器である重力子放射線射出装置はハンドガンサイズながら威力絶大のロマン武器です。何であろうと絶対に貫通し、強めに撃てば敵を背後の建物ごと消し飛ばします。
そんなオーバーキル兵器をポンポン撃ってしまうのが「BLAME!」の凄さ。ボスだろうと雑兵だろうと消し飛ばして進む爽快感はたまりません。
重力子放射線射出装置による超長距離狙撃戦シーンだけで、ご飯何杯でも食べられます。(なお、武器が無くてもキリイ自身が超強いです)。2、言葉だけでは伝えきれない想いを持つ人
「…………」
LOG.38 集積蔵 より
ヒロインの女性科学者シボを心配するキリイ
オススメエピソード:LOG.2 大地の記憶
「BLAME!」は一般的な漫画に比べて台詞が全然ありません。その台詞の少なさたるや、単行本10巻の総ページ数232ページに対して、台詞の吹き出しがあるページは32ページだけ。
主人公のキリイがろくに返事もしないほど無口ですし、広大な階層都市では滅多に人に出会えず会話が生まれないんですよね。でもその沈黙こそが「BLAME!」の欠かせない魅力。言葉で語らない分表情や行動に滲み出る想いを汲み取り、共感することでどんどん主人公達を好きになっていく漫画です。
無口なキリイが見せる一瞬の驚きの表情や、寂しげな横顔がけっこう可愛いんです。
3、普通のヒロインじゃ満足できない人
「少しずつ この体の使い方が分かってきたわ」
LOG.22 東亜重工 より
女性科学者シボが不適な笑顔で一言
オススメエピソード:LOG.26 飛散空洞
旅にはシボという女性科学者が同行して無口なキリイの代わりに喋ったりしてくれますが、驚くべきことに作中で何度も体がチェンジします。髪型が変わるとかではなくボディごと替わるんです。ヒロインなのに。
シボの外見を漠然と説明すると、かなり痩せた女性→長身美女→短髪黒髪少女→髪が白くなって伸びる→再び長身美女→……という感じで変化していきます。今もファンの間で語り継がれる常識破りの初登場シーンは、是非マンガで確認してみてください。
ちなみにヒロインが普通じゃない作風は後の弐瓶作品で更に加速していき、「シドニアの騎士」には男でも女でもない中性、かわいい触手、クローンの11人姉妹、七百歳越え、アンドロイド、クマなど多彩な女子達が登場します。
4、よく「サバサバしている」と言われる人
「それとそっちにオレの腕が落ちてるはずだ見つけたら拾っといてくれ」
LOG.47 侵入 より
ドモチェフスキーの通信
オススメエピソード:LOG.60 オーガニカル
SFアクション漫画「BLAME!」は刹那を描くスピード表現でもファンの心を掴みます。しかしアクション漫画が苦手でも読めてしまうのも特徴です。何故なら良い意味で、命のやり取りが淡白だから。目的達成のためダメージもかえりみず黙々と戦い続ける儚く荒涼とした空気は、優先順位をはっきり持つサバサバした人にとって心地良いかもしれません。
そしてそんな痛みが表出しにくい世界だからこそ、主人公達の感情が深く読者の胸に迫ります。(霧亥はそこそこ不死身なので多少刺されても大丈夫です)。
5、数字から意味を読み解くことを楽しむ人
「ここは球状の空間で 直径は平均十四万三十キロメートル」
LOG.57 観測者 より
観測者の一言
オススメエピソード:LOG.37 非公式超構造体
超未来ではスケール感も私達の想像を大きく超えています。さらっと登場する数値から垣間見える世界観に、きっと心をくすぐられるはずです。
中でも有名なのが上記の直径143,000kmの球状の空間。旅の途中で通りかかった巨大な空洞の広さですが、太陽系に詳しい人ならばピンと来る数字なのではないでしょうか。「最大倍率23000」「最低でも八百時間」そして衝撃の「2244096時間後」など、細かい数値があちこちで登場する「BLAME!」は、自ら世界観を分析する楽しみが尽きません。
意味のある謎の数字って、ロマンがありますよね。
6、見たことのない景色に心躍る旅人気質の人
「…………私達はいったいどのくらい遠くに来てしまったのだろう…………」
LOG.35 消滅 より
シボの一言
オススメエピソード:LOG.42 超構造体内部亀裂
この作品は“旅”への没入感が非常に強い漫画です。誰とも出会わない移動風景も、旅というスケールでの時の流れを体感させてくれます。例えるなら、スーパーファミコンで「ドラクエ」や「FF」をプレイした時の、村と村の間に広がる何もない空間を歩いているだけで感じた充足感でしょうか。過ぎ行く巨大建造物や謎の機械群といった未知の景色はいつまで見ていても飽きません。
旅に出たくなった時に読む、意外に癒し効果の高い漫画です。
7、“子犬に優しい不良”的キャラに弱い人
「治療者は来た 安心しろ」LOG.7 建設者 より
キリイの優しい嘘
オススメエピソード:LOG.45 複散分子動体
愛想は悪いが困っている人を放っておけないキリイを筆頭に、「BLAME!」に登場するキャラクターの多くは不器用な優しさや天然な部分を持っています。つい女子に優しくしちゃうドモチェフスキーや、直接干渉できないけど見守ってくれる統治局の代理構成体の人など、もう不器用系男子だらけなんです。思い返せば「BLAME!」には、嫌われるようなキャラクターが敵にも味方にも一人も登場しないように感じます。
個性豊かなキャラクターそれぞれを愛でるのも、この作品の醍醐味です。
8、説明過多な現代社会に疲れた人
「たいした事は知らねえけど あれだろ原人が統治局と交信したって話だろ?」LOG8. 塊都 より
ネット端末遺伝子についてのヨシオの知識
オススメエピソード:LOG.11 セーフガード
「BLAME!」の世界は謎だらけ。階層都市は人類の制御を離れて成長し続けており、登場人物も誰一人全貌を把握できていないのだから当然です。戦闘中の一瞬の攻防を説明してくれるモノローグもありませんし、解説キャラが登場しても用語が難しいので読解力が試されます。実際初読後は「なんか凄かった! けどよくわかんなかった!」としか言えないはずです。
でもそれが楽しいんですよね。「BLAME!」の解らなさこそ、ポストアポカリプス世界での旅をよりリアルに感じさせてくれる要素なのかもしれません。
親切な情報に囲まれた日常で「BLAME!」は全くの未知に直面する特別な時間を提供してくれます。
9、モットーが「一期一会」の人
「そいつの銃には当たるな」LOG.6 珪素生物 より
霧亥との世間話を終わりにして戦闘に移行するジェニタリアスの一言
オススメエピソード:LOG.55 再会
舞台である階層都市は太陽系規模の大きさと言われており、そんな広大すぎる世界の片隅で誰かと出会うことはまさに奇跡です。「BLAME!」では人間であれクリーチャーであれ、突然の出会いに驚き見つめ合う一瞬が描かれます。例え一瞬後に重力子放射線射出装置で消し飛ばすとしても、他者との出会い全てを噛み締める様子は現代において新鮮なものとして映ります。
「BLAME!」は敵との邂逅にも感動がある作品なのです。
10、コスパ重視の人
「表示の意味がわかるようになった……」LOG.15 覚醒 より
世界の見え方が変わった霧亥の一言
オススメエピソード:LOG.46 仮接続認証線
同じ旅路も歩くたびに違った感じ方をするように、この漫画には読むたび新しい発見があります。前回は気付かなかった細かい表情や小さな文字を見付け、コマの意味や世界観を少しずつ理解する。それが「BLAME!」を何度も読み返してしまう理由であり、実際何十回読んでも新しい発見があることに驚きます。
一度購入したら永遠に読み返し続けられる、まさに一生ものの漫画である「BLAME!」は非常にコストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか。10タイプのうち1つでもあてはまったなら、あなたと「BLAME!」は相性抜群かもしれません。携帯に便利な単行本「BLAME!」、B5サイズでディテールまで楽しむことができる「新装版 BLAME!」、電子書籍版など選択肢は多様です。多くのクリエイターに影響を与えた傑作SFの強い独創性を、是非体感してみてください。
そして、また私達の知らない形態に変わったシボの姿が確認できる劇場版「BLAME!(ブラム)」は、2017年に公開予定です。
©2008-2016 Kodansha Ltd. All Rights Reserved.©Tsutomu Nihei, KOUDANSHA /BLAME! Production Committee
image by 講談社コミックプラス
source: 弐瓶勉著「BLAME!」, 講談社コミックプラス,「BLAME!(ブラム)」公式サイト, YouTube, 「シドニアの騎士」公式サイト
(勝山ケイ素)