仮設校舎なんかに使われるイメージのあるプレハブ工法ですが、意外なコトに一世紀も前から存在する建築工法です。住宅の大部分を工場で組み立て目的地へと出荷するというこの工法は、今、建築やデザイン業界で熱いトピックになっているようで、ドイツの出版社タッシェンからプレハブ住宅の歴史を振り返る大判本が発売されることになりました。
その名もPrefab Housesは、単にプレハブ住宅の歴史をまとめただけの本ではありません。プレハブ工法というコンセプトが大衆の意識からどのように発展していったのか、デザインは年月を重ねるにつれてどのように変遷していったのか、などといった内容も網羅しています。
低コストで環境にも優しい。さらにヘリコプターで輸送できるので、家ごと新しい土地に引っ越せて便利。もしかしたら、プレハブ住宅は21世紀の住まいなのかもしれません。それでは書籍からのハイライトをご堪能ください。
Kupferhaus(1929)
1930年代に人気が高まったKupferhaus。デザインを手掛けたのは建築家Robert KrafftとエンジニアのFriedrich Förster。初期のプレハブ工法で生産された住宅ですが、その見た目は従来の方法で建てられた住宅とさほど変わらないものでした。Kupferhausには9種類のモデルが存在し、全てに銅を使っています(Kupferhausはドイツ語で「銅の家」)。しかし残念なコトに、ヒトラー政権のドイツで銅の使用が制限されることになり、1934年に生産が終了してしまいました。
Techbuilt House(1956)
ウィスコンシン出身、ハーバード卒の建築家Carl Koch氏は、プレハブ住宅を広めた第一人者であり、彼のTechbuiltシステムは素晴らしい伝説となっています。広さ2400平方フィート(約223平米)4寝室のTechbuilt Houseは、最初マサチューセッツ州ケンブリッジに建てられ、それが住宅建築に対する人々の考え方を変えました。
Maison "Bulle" a Six Coques(1964)
このプレハブ住宅の名前は、フランス語で「6つシェルで出来た「バブル」の家」という意味。由来は一目瞭然ですね。デザインしたのはフランスの建築家Jean Manevalで、プラスチック製の6つのシェルから出来ているため、現場で六面体の「バブル」の家が組み立てられるわけです。周囲から浮きそうなデザインゆえでしょうか? 売れたのはたったの30戸だけだったそうな。
Futuro(1968)
続いてはFuturoと名づけられた建物。強化プラスチック製で空飛ぶ円盤のようなデザインは、思い返せば1960年代後半から70年代初頭にかけてのスペースエイジの伝説的な代表作となりました。未だに100戸ほど世界中に散らばっているそうですよ。この住宅はヘリコプターを使っての輸送もできます。それこそ空飛ぶ円盤を使うのもアリでしょうか。
Kunsthoffhaus FG2000(1970)
名前に「2000」と入るとグッと未来的な感じがします。Wolfgang Feierbachがデザインを手掛けた住居は、大量のファイバーグラスを使って組み立てられ、寝室に円形のベッドが鎮座し、開放的な空間を誇っています。オリジナルの家具はかの有名なディーター・ラムス氏がデザインしたそうですが、道理でアップル製品を彷彿とさせるような、させないような…。
Easy Domes(1992)
サスティナブルなプレハブ住宅をいち早く生産し始めたのはデンマークの人たちのようです。デンマークの建築家Kari ThomsonとエンジニアのOle Vanggaardが設計したEasy Domesは、地表をモチーフにしたドームのようなプレハブ住居で、屋根の芝生がとってもグリーンな感じ。モデルによっては2階建て2寝室の間取りもあるとのこと。上の画像は、デンマーク、フェロー諸島に佇む様子。
WeeHouse(2003)
「Wee」には小さい以外にも幼児語でオシッコという意味もあるので、このネーミングは如何なものかと思いますが…それはさておきWeeHouseは、ミネソタ州を拠点にするAlchemy Architectsが製造する小さなプレハブ住居。同社はここ10年くらいで増えたカスタマイズ可能なプレハブ住宅を提供する会社の一つで、環境にも優しい家です。
Livinghome RK1(2006)
こんなにも美しく複雑な構造の大邸宅がプレハブ住宅だなんてあり得るの? それがあり得るんです。というのも、これがプレハブの未来だから。もはやプレハブ=トレーラーハウスではないのです。Ray Kappe氏は美しいデザインだけでなく、ゼロインパクトの住宅を目指しているんだとか。製造している工場ですら、廃棄物を最小限にするように作られているそうです。
The Loftcube(2007)
スタジオAisslingerが製作した LoftCubeは、なんだか誤解を与えそうなネーミングです。面積が420平方フィート(約39平米)というだけで、ロフト(屋根裏部屋)でもなければ、厳密にいうとキューブ(立方体)でもないんですから。それでも床から天井まで伸びる窓に、一週間で組み立てられる手軽さを考えると、ロフトやキューブと言いたくなるのも無理はありません。もちろん、ヘリコプターでの輸送も可能です。
みなさんはどれに住んでみたいですか?
Adam Clark Estes - Gizmodo US[原文]
(たもり)