ウォール・ストリート・ジャーナル紙が掲載した記事の中で、「アップルはハードウェアの会社? それともソフトウェアの会社?」という興味深い疑問がありました。これを元に米Gizmodoがアップルという会社についてあれこれ考えを巡らせています。Brian記者の思うアップルが売るものとは、アップルは果たして何の会社なのか...。見てみましょう。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「アップルはハードの会社か、ソフトの会社か」という疑問は実に興味深い。iPhoneを売るのか、iCloudsを売っているのか? この疑問の答えは、会社の価値を評価するアナリスト達にとって実に深い意味があるのだ。世界でも屈指の巨大電子機器会社、アップルは今、アイデンティティーを喪失しているのでは、そうアナリスト達は感じているのだろう。
まず言いたいのは、アップルはハードの会社でもソフトの会社でもない、ということ。はたまた、iOSの会社でもなければiMacの会社でもない。アップルは、グーグルやマイクロソフト等と同じ、ただ21世紀を生き抜こうとしている会社にすぎないのだ。21世紀を生き抜くのに何よりも売らなければいけないもの、それはエコシステム。世界で最も力を持つもの、それがエコシステムである。
アップルがどこよりも早く気づいたこと(Amazon、グーグル、マイクロソフトもゆっくりだが気づき、今猛烈に参戦してきていること)、それは電話購入、タブレット購入、コンピューター購入、こういったことがそれぞれ個々の独立した動きではないということ。1つを独立させ、その中で長く過ごしてしまうとそこから抜け出すのは難しくなるだけだ。
例えばiPhone。iPhoneはただiPhoneだというわけではない。それは、何百万というアプリにアクセスできる端末であり、同時に100万を超える本を読むこともできる。しかし、これらのアプリや本はiPhoneに限らず他のアップル製品でも使うことができる。(しかし、AmazonのKindleでは読めない。)また、iPhoneはApple TVのリモコンとなり、音楽や映画を引き出してくることができる。iPhone購入理由に、A6プロセッサやiOS 6をあげる人は少ないだろう。iPhoneはアップル製品だから買うのだ。同じ様に、きっとChromebook Pixelはグーグルだから買うのだろうし、Xboxはマイクロソフトだから買うのだろう。つまり、自分の贔屓の会社の製品だから買うのである。そうすることで、電話はただの電話ではなく、多くのことができるマルチツールとなるのだ。
エコシステム、それは密に繋がり相互作用を生み出す、1度はまれば抜け出せなくなるシステムなのだ。ハード、ソフトという分け方はそこにはもうない。製品、アプリ、サービス、周辺機器、それら全てが分け隔てない一家族なのである。アップルは、その家族形成を他社よりも今の所より上手に行なっていると言える。
もちろん、グーグルだってアップルの最大のライバルとして迫っているし、マイクロソフトだって奮闘している。しかし、一度アップルのエコシステムにはまればそこから抜け出すのは容易ではない。Dell製品やめるわ、という具合に簡単にはいかないのだ。アップルを去るということは、新しいチャージャー(周辺機器)を準備し、アプリを乗り替え、全ての設定をやり直す気力と時間を費やすということなのである。こうなれば、乗り替えは困難だ。
ハード会社か? ソフト会社か? はたまたそのどちらもなのか? そんなカテゴリー分けは、現在では無意味である。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のアナリスト達は、会社の価値を評価するために、カテゴライズしなければというプレッシャーがある。ハードの会社は、消費者の移り気によって大きく攻撃をうける。一方、ソフトの会社は、すばやく何度でもビジネスを繰り返して行なうことができる。こういった点からも、カテゴライズして価値をはかりたいのだろう。
アナリストのために、仮にアップルをハードの会社だとしよう。又は、ソフトも売るハードの会社でもいい。株価が下がるのは、価値が下がるのはそういう目でみるからだ。なぜiPhoneは予想通りに売れなかった、なぜラップトップの売り上げは落ちている。しかし、彼らが見えていないのは、ユーザーが本当に使っているのはそのモノ自体ではなくそれらを取り囲んでいる2次的要素、その環境なのである。
つまり、アップルの価値を量ろうとするならば、従来の物差しではダメなのである。
そうこ(BRIAN BARRETT 米版)