3Dプリンタで成形したカスタムデザインの梁、強度はなんと鉄筋の1万倍

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3Dプリンタで成形したカスタムデザインの梁、強度はなんと鉄筋の1万倍

ヒントは人間の骨。中身スカスカなのにあれだけの重みの体を支える、その秘密はフラクタルパターンにあります。

そこに着目したヨーロッパの研究チームが、重みを支えるのに最適な「階層構造」を計算する手法を開発しました。これを応用して用途に特化したカスタムデザインのビーム(梁、横材)を3次元プリンタで成形すれば、鉄より軽くてケタ違いに強いビームができるようです。巨大ビルの密度がガクンと減りますね!

この手法は、英ノッティンガム大学講師ヨン・マオ(Yong Mao)博士が同僚たちと共同で開発したものです。実現にあたっては新技術単体ではなく、いくつかの新技術をバンドルしています。

まず最初は空洞のビームからスタートし、「これぐらいの重さには耐えて欲しい」と思う荷重を加えてテストします。これはもちろん折れますよね。そこで、高度なソフトウェアを使って折れたビームを分析し、その重みを支えられるような内部のフラクタル構造をデザインし(ここで人間の骨にヒントを得た構造を応用)、3Dプリンティングしてやるのです。で、泡立ててすすいで、またそれを繰り返す、と。

すると、繰り返すたびごとに内部のフラクタルは小さく小さくなってゆき、ビームは1桁、2桁の単位で強度を増してゆきます。しかもこの間、加わる重量はほぼ無視できるレベル。こうしてビームも(プリンティングを3回繰り返して)3代目になると、強度は鉄筋のなんと1万倍になるのです。

ただし、どれぐらいまで強度を高めることができるかについてはひとつ大きな制限が...。すべてはプリンタがどれぐらいまで忠実に再現できるかにかかっているんですね。

また、用途が最初にあって、それに合わせて特別にデザインするので、予め想定した重量を上回る荷重には耐えられません。あんまり遊びの余裕がないのでメッシュが完璧にデザインされてないと困ったことになる恐れも。

でも、3Dプリンタが今より改良されてゆけば、もっと大きなスケールで成形できるので少々アラがあっても問題にはならないだろうし、成形をもっと何代も重ねることも可能に。そうなれば信じられないほど強く、信じられないほど軽い構造物も実現できそうですよ。ヒントと言わず、いっそ新しい骨もこれで刷ってくれたらいいのにね。

Physics World

satomi(Eric Limer 米版