雑誌WIREDの最新号の表紙が、米国ネット上のあちらこちらで物議をかもしているそうです。
トップの画、これが最新号の表紙です。彼女の名前はLimor Fried。ユニークな電気系DIYキットを制作・販売・紹介しているAdafruit Industriesの天才女性エンジニア。さらにWIREDの表紙をかざった初の女性エンジニア。なかなか美人ですよね。この表紙のどこに問題が? 問題なのは、表紙の彼女がなかなかの美人であるということ...。
この表紙を見るやいなやGood誌が記事にしたのは、なんでこんなに見た目を修正するんだ!? とプライベートのFreidさんの画像まで引っ張りだしてきての表紙に対する反論でした。
Good誌曰く...「WIREDが表紙に載せたのはLimor Fried氏ではない。普段の彼女の写真(ネタ元に写真あり)にもあるように、天才的な頭脳を持ってはいるが、彼女は口ピアスをした普通の若い女性である。WIREDが表紙に載せたのは、まるでアニメのようにPhotoshopで修正された女性である。友人ですら同一人物と気づかないような画なのである。」
さらには、このGood誌の記事をうけてFriedさん本人からコメントがありました。
本人曰く...「ここにある普段の私という写真は、20時間のフライト後に日本に着いた時のもの。髪だって短い時です。今回の表紙写真ではスタイリングはしてもらいましたが、これは本当の私です。この写真は本人とわからない程過度に修正されたものではありません。メガネを外して、髪の毛を下ろして、メイクをした私はこの表紙のように見えます。もちろん、プロの照明を使ってプロのカメラマンに撮影してもらったので、普段よりも艶のある見た目にはなっています。でも、編集で大きくいじられているのは背景色と持っているツールの部分だけです。確かに普段の私とは違って見えると思います。でも、時にはオシャレをすることがありますし、雑誌の表紙になるということは、もちろんそのたまにオシャレする時の1つにはいります。口ピアスも撮影時はつけていませんでした。もし、この表紙写真に対して、私自身がこれは私だと言い満足しているなら、それでいいのではないでしょうか?」
なるほど。この元記事と本人のやりとりも関連して米国ネット界が大騒ぎだったようです。ここでちょっと考えてみると、Good誌がすぐに「これは大幅Photoshopの仕事だ!」と言いだしたのもわからなくはないです。だって雑誌ではこんなに修正はいるのが普通のようですし。美の追求とは果てしなく、時に日常生活に害をもたらすのではないかと懸念されるほどです。
しかし今回の問題でより注目すべき点は、超天才女性エンジニアに対してある特有のステレオタイプイメージが存在している、ということではないでしょうか。Good誌の記事を見ると、Friedさんひいては天才エンジニアや科学者たちはWIREDの表紙のような魅力的な見た目のはずはない、と暗に決めてかかっているように思えます。そこにあるのは、知性と美の間にある大きな溝。まさかこの2つが共存することはないという考え方。知的だ、天才だと言われる女性の外見が魅力的であるとわかった時の驚き、または美しい女性が知性に溢れているとわかった時の驚き。逆にいうと、頭のいい女性の外見が魅力的であるはずがない、魅力的な女性は賢くないというステレオタイプな見方が今回の騒動の発端にあるのではないでしょうか。これは、もちろん天才エンジニアだけでなく、いわゆるギークや腐女子と呼ばれる女性にも共通のことかもしれません。もっと言えば、オタクと呼ばれる男性でも思い当たることでしょう。
その他にも注目すべき点として、今号のWIREDで初めて女性が表紙になったということがあげられます。WIREDが1993年1月に創刊して約18年間、女性が表紙を飾ることが今までなかったのです。WIRED編集長のChris Anderson氏によりますと、「今までテクノロジー業界で表紙になるほど興味深く有名な女性がいなかった」のがその理由だそうです。
表紙1つでたくさんの人の物の見方が表にでて大騒動となった今回の件。米国の話とは言え、なるほどと思い当たることがたくさんあります。性別やそれに付随するたくさんのことは、一朝一夕で考え方が変わることではないのですものね。少しずつ多くの人の認識が変わっていくものなのですね。
ということで、もっと前へギーク女子!
[GOOD, Xeni Jardin, Thanks Anna Holmes]
そうこ(Matt Buchanan 米版)