PingにApple TVにGame Centerと新サービスも続々のApple。
Appleは常にインターネット上ではいまひとつもの足りないものでしたが、今回新たに加わったPingやApple TVの新モデルでその物足りなさも減るのではないでしょうか。
クラウド化するにあたって、Appleの最も強力な武器になるのは何か? それはiTunesのIDです。このIDがAppleのサービス全てをつなぐ役割を果たしてくれたら...と何百万人というユーザーは思っているでしょう。iTunesのIDがMobileMeのアカウント(しかも無料ならなぁ。)とつながって、それがAppleの持つ全てのサービスで使えるスーパーIDになってくれたら! Facebookがweb上でのアイデンティティの総元になるように、iTunes IDもそうなればいいのにと思いませんか。
がしかし、そうなればいいのになぁ、は今現在ではただの夢の話。どうやらAppleはそう思っていないようですから。先日、iPhone、iPad向けにGame Center、iTunesにはPingという2つのソーシャルネットワークサービスを発表したAppleですが、どちらもiTunes IDに結びついてはいるものの、連携しているわけではありません。この2つのサービスではそれぞれ違うアイデンティティを持つ事ができるからです。Game CenterではGame Center用のニックネームを選ぶことが可能です。
例えこれがあえて2つのネットワークを結びつけないため(ゲームの趣味が合うからって音楽の趣味があうとは限らないですものね。)に考えられていたとしても、...いや、やはり解せません。なぜAppleは同社が運営する2つのサービスの間を1人のユーザーとして行き来できない仕様にしているのでしょうか。2つのネットワークが個々なことで、2つのネットワーク管理があり、2つのステイタスがあり、2つのアイデンティティ=プロフィール等の管理があるわけです。1つにまとめることができたらどれだけ簡単でしょう。Googleはその点、1つのID、1つのアイデンティティで数多くあるGoogleサービスをまとめることができるようになっていますものね。
AppleはFacebookやTwitterと相互作用のある仕様もとりいれていません。こうしてみるとAppleはただ他のソーシャルネットワークサービスの猿真似をしているだけにも見えます。友人や有名人をfollowして、Likeやらイイネ! やら、コメントしたりステイタスをアップデートしたり、と。それだけなら、他のソーシャルネットワークサービスをすでに間に合ってるのですけど? そちらのアップデートで忙しいのですけど? と言われてしまってもしかたありません。
また、Pingがどこか道程の半分どまりで他のソーシャルネットワークサービスあるし、と言われてしまいそうな理由はストリーミング不可にもあるのではないでしょうか。もしもPingがストリーミングも可能なネットワークなら、それこそPingの可能性は無限に広がると思います。確かに多くの人が毎日iTunesを使っています。ただiTunesから頻繁に購入しているか、と言うとそうでもないでしょう。つまり、Pingはせっかく音楽に特化したソーシャルネットワークサービスであるにも関わらず、ユーザーが音楽と触れ合う日々の方法とうまく重なっていないのではないでしょうか。
さらに、Pingという新たな面が加わりましたが、iTunesそのものに変化はありません。テレビや映画はとにかく、音楽の部分は全く変化なく昔のままです。インターネット経由でどんなiOSにも曲をおくれたら素晴らしいですよね。もしiTunesがストリーミング可能になれば、それこそPingを通して友達と曲を共有したり新たな曲を知るきっかけがより広がること間違いなしです。夢のようです。これこそ、日々音楽を聴くスタイルに入り込んでくる音楽に特化する意味のあるソーシャルネットワークだと思います。しかし、iTunesそのものはやはり変わらない。いちアプリケーションで、ダウンロードされた音楽はハードドライブの中にどんどん溜まっていくのです。
新iTunesで残念なのはスーパーIDの強さが使われていないところと、Pingのソーシャルネットワークとしての弱さでしょう。それ故に半分どまり...。
一方Apple TVの新たな動きはとても興味深く、今回の発表では1番の注目だったと言えます。(日本関係なくて残念です。)これからのApple製品もモデルとなりうるかもしれません。手のひらサイズの小さなプラスティックの黒い箱。新Apple TVはコンテンツをダウンロードしません。テレビ番組も映画も所持することはできません、レンタルオンリー。 Netflixからストリーミングすることも可能。小さな変化に見えますが、実に大きく深い1歩だと言えます。お金を払ったコンテンツを所持するのではなく、そのコンテンツを見るためのライセンスを所持、または借りるとう形へシフトしてきました。所持しない、テクノロジー哲学とも言える考え方ではないでしょうか。
そう、これこそがiTunesのPingにも必要なものではないでしょうか。コンテンツをダウンロードすることに慣れ親しんだ人にはなかなか受け入れにくいかと思いますが、ワンクリックでダウンロードはもちろんPingの大きな要素にはなっていますが、それでも、コンテンツ=ファイルを所持するのではなくストリーミングする方向へ進むのは、これからの効果的な正しいやり方だと思います。
Apple TVとAirPlayの合わせ技に、これからでてくるであろうリモコンアプリ達が加わればなんとも便利な世界が待っていることでしょう。AirPlayを使ってiOS端末からApple TVへ音楽や写真をストリーミング。アプリによってiPhoneやTouchはマルチタッチな便利なリモコンに早変わり。Apple TVとiOS端末の相性はまさに抜群。この環境に囲まれることこそMacに囲まれるということ。Macファンの心をつかむMac天国。とするとiOS端末と従来のApple製品の間に溝ができるのではないか、という心配もでてきますね。
さて、このMac天国の中での注目はTouch。実にiPhoneから電話機能をはずしたTouchは、今回のApple TVとAir Playの発表によってMac天国な環境を操るベストな端末として、iOS端末の中で地位を向上させたと思います。
半分までやってきたPingの今後に期待をもちつつ、新Apple TVの登場でユーザーにとってより快適な環境が整うのは間違いないでしょう。Appleクラウド化の芽は今後どれほど育っていくのでしょう。
Original Art by 米GIZMODO ゲストアーティスト Chris McVeigh (AKA powerpig):flickr/twitter
matt buchanan(原文/そうこ)