「スティーブとはもう20年以上、口も聞いてないんです。」
アップルの元CEO、ジョン・スカリーが、Daily Beastのインタビューで語りました。彼は1985年、そのCEO時代に、スティーブ・ジョブズをアップルから追い出したのです。今になれば悔やまれるのでしょう、痛々しいくらいです。インタビューの記事タイトルは「私がジョブズを辞めさせた理由」となっています。本当に、何を思ってジョブズを切ったのでしょうか?スカリーはその「理由」を洗いざらい話してはいませんが、何が起こったのかは記録に残っています。スカリーは外部からの雇われCEOで、ジョブズのお目付け役を果たすはずでした。が、ジョブズは案の定反発し、対立が起こり、そして最終的にジョブズが切られたのです。
インタビューでスカリーは「なぜ辞めさせたか」ではなく、「こうすればジョブズを追い出さずに済んだのではないか」と話しています。
ジョブズがCEOでスカリーがプレジデント、ということは、ジョブズが上に立つということです。25年が経って、スカリー自身もその間にアップルを去ることとなり、さらにジョブズのアップル復帰を境にアップルが復活していったのですから、これだけ譲歩してみたくもなるのでしょうね。思うに、スティーブと私が違う役割を担うことにしていれば、決別はしなかったのではないかと思います。彼がCEOで、私がプレジデントという分担にすべきだったかもしれません。そんな体制なら、時代に先行してうまくいっただろうし、良い経営陣とは本来、そんな決断ができてしかるべきだったと思います。
が、インタビューでは、逆の設問、つまり「ジョブズがとどまっていたら、どうなったか?」には触れられませんでした。もしジョブズが追放されなければ、現在の、傲慢なほどに自信満々のアップルが、もっと何年も早く実現したのでは...そう思いたくなる誘惑は確かにありますが、それは無責任な考え方でしょう。ジョブズは10年間もアップルから離れていたのです。もし、ジョブズとスカリーが対立を抱えたままアップルに残っていたら、または、お互いに譲りあっていたら、どうなっていたかなんて誰にもわかりません。
また、追放されたジョブズが、その間にiPodやiTunes、iPhoneなどの構想を練っていたんだろうとかも、考えるのは面白いんですが、これも非現実的でしょう。当時はジョブズも、というか他の誰も、アップルの10年後、20年後に関して、はっきりしたビジョンは持ち得なかったでしょう。10年とか20年というタイムスケールは、特にアップルのような業界では、大きすぎるからです。
というか、ジョブズを追い出したことが、実は正解だった、という可能性もないわけじゃないのです。もちろん、スカリーや当時のアップル経営陣が意図した通りの「正解」ではありませんでしたが...。
[Daily Beast, image via AllAboutSteveJobs]
John Herrman(原文/miho)