まだすぐには没落しそうにないですけどね...
いよいよ日本でもiPadの販売開始が正式にアナウンスされ、おまけに「iPhone 4G」新モデルへの買い替え時期も迫ってきて、なんだかアップル祭り一色だよなってギズ読者の皆さまも少なくないのではという世の中ですが、そんなアップルの勢いにガツンとクギを刺す不穏な動きが水面下で始まってきてますよ。
なんかこのところダークサイドな面も際立つと大批判のスティーブ・ジョブズCEOではありますけど、もしかすると単なるブーイングだけでは済まされなくなるやもしれませんね。最悪のシナリオは、あのやたらとWindowsでもInternet Explorer(IE)でも独占禁止法違反訴訟に手足を縛られて、その圧倒的なシェアゆえに、かえって自由な身動きが取れなくなってしまったマイクロソフトのように、せっかくアップルの最大の魅力でもあった尖ってて鋭い切れ味の革新性が、規制の重石で失われてゆくことにもなりかねません。
アップルが、いつの間にか驕る大帝国マイクロソフトみたいになったら...? そんなの考えたくもないよってファンの皆さまには残念な知らせですが、もうその変貌の第一歩は踏み出されつつあるのかもしれませんよ。その悲劇の3ステップのシナリオを、どうぞ続きからご覧くださいませ。ジョブズよ、それだけはヤメテおくれ~
1. 規制当局による予備調査着手どこのだれが喚きたてたのか、あるいはそれとも当局自らが動き始めたのか、「どうやらこのところ飛ぶ鳥も落とさんばかりの勢いで発表製品が当たりまくっているアップルの商慣習には、ちょっといかがわしい部分があるのではないか?」という疑念が本物なのかどうかを真剣に確かめようという噂が、すでに水面下では現実のものとして始動しだしてるようです。
そもそもの発端となっているのは、あのアドビが超問題視した「iPhone OS 4.0 SDK」のライセンス規約の変更ですね。特に3.3.1項において、iPhoneやiPad向けのアプリケーション開発には、アップルが定める4つのプログラミング言語(Objective C、C、C 、JavaScript)しか認めない方針が明記されており、Flashベースでのアプリ開発への道も完全に閉ざされてしまいました。
それに怒ったアドビが申し立てを行なったからなのかどうかは、まったく現時点では明らかになっていませんが、ついに米司法省(DOJ)および米連邦取引委員会(FTC)が動き始め、この件に関して、独占禁止法に違反していないかを予備的に調査する機関の選定に着手していると報じられてしまいました。
果敢にも米GIZMODO編集チームは、もう少し詳細なる情報を入手するため、DOJとFTCに事実関係を問い尋ねてみましたが、公式に発表できる段階ではないと門前払いに...。当然ながら、アップルに突撃インタビューを試みるも、なんの音沙汰もないですね。
あくまでも「予備的に」調査するに過ぎず、その「調査機関の選定」に着手し始めたところであり、まだ一体どこから調査に入っていくのかすらも分からないという、スタートもスタートの狼煙が上がろうとする第1ステップではありますけど、すでにこの段階には進んでしまった感が強そうです。
2. アップルのシェアが圧倒的に伸びまくるここがまだクリアされてないので、どうやらDOJもFTCも、まだそんなに強気には出られないというのが本音なのかもしれませんよね。だって、そもそものアップルに突きつける罪状容疑が「独占禁止法違反」というのであれば、圧倒的に市場を独占的に支配してしまうくらいの証拠も、かなり必要になってくるでしょうからね。
例えば、確かに売れに売れまくっているiPhoneではありますけど、スマートフォンOSの最新シェアデータで見てみますと、まだアップルのiPhoneなんて25%に過ぎません。グンと大きくアップルを引き離し、ダントツのトップシェアを維持し続けてきてるのは、RIMのBlackBerryでございまして、少しずつ落ちてきてはいるものの、今でも一社で42%ものシェアを占めてますよ。明らかに独禁法違反で問題視されるまでに至るには、もっとアップルの市場における位置関係が圧倒的なものに伸びまくらないとダメかもね?
あとDOJとFTCが注意深く見極めたいと考えているのは、本当にアップルの定める規約などで、アプリケーション開発者が締め出されてしまい、独占的に対応アプリの世界を支配してしまうことになるのかという点のようです。例えば、App Storeに提供されている有名なアプリの中には、実は対抗する他のスマートフォンOSでも利用できるようにクロスプラットフォームで提供されているものも少なくないのが現状です。開発側がプログラミング言語を各プラットフォームに合わせて選び、必要とあらば、提供先のOSに対応する言語で書き換えることを強いられるのは、独禁法違反と呼べるほどの不当な要求なのだろうか? ここをめぐっては意見が分かれてるんだとか。
「われわれの提供するプラットフォームと、そこに対応するアプリケーションを作る開発者との間に、なにか他のサードパーティー製のソフトウェアレイヤーが入り込むことで、最も苦い思いをしてきたのはわれわれだ。われわれは開発者が、サードパーティー側の対応を待つことなく、ダイレクトに高度なプラットフォームを最大限に活用できる環境を整えたいと願っており、それゆえに厳しいライセンス規約を定めている。最初からわれわれのプラットフォームへと完全に対応するネイティブツールを用いてアプリケーションを開発することこそ、最善の選択肢とされるべきものだ」
アップルはFlashを憎んでいるのか...という世間で沸き起こった批判に対して、珍しくジョブズCEOが沈黙を破ってアドビに書簡を突きつけた中で、上記のような方針が説明されたんですが、このポリシーには称賛の声も出てきてるのが事実であり、アップルが求めるプラットフォーム環境ゆえのライセンス規約の変更であったのであれば、そこへ独禁法違反を適用してまで厳しい規制や取り締まりを要求するのはどうか? そんな意見との兼ね合いも十分に検討されねばならないのでしょうね。
3. 本格調査への召喚状ここまで来ると、もう規制当局としても簡単には後戻りしない強い意思表示を出しちゃったことになりますけど、水面下で進んでいた予備調査で大いにクロに近い疑惑の数々が問題点として浮き彫りになり、ついに独禁法違反訴訟での提訴へと踏み切るための証拠を整えるべく、いよいよ本格的な調査に乗り出すため、アップル側に疑念を晴らすように詳細情報の提出などを命じる召喚令状が出されることになりますよ。
なんかこういう展開になったら、それはそれで歴史的なことかもしれません。だって、どちらかというとアップルは、驕る帝国のマイクロソフトを相手に独禁法違反だぞと気勢を上げては立ち向かい、そんなマイクロソフトが気に入らない人々からの支持をも集めてきた存在ですからね。それがいつの間にか他社を汚い手段を使ってでも排除して独占的なアップル帝国の地位を築くと批判され、そのことで当局から目をつけられるまでになっちゃうんですからね。ジョブズよ、ついに上り詰めてきたなって感じでしょうか。
ちなみに3ステップまで一気に進む可能性は、まだかなり現時点では低いとのことですが、このところアップルの支配に泣きを見ている人が増えてきたという意味では、なんとなくアップルの驕りも無視できないレベルにアップし始めているのかもしれません。
例えば、先の問題視されたライセンス規約の変更によって、もうiPhoneやiPad向けのアプリケーション開発からは撤退し、他のプラットフォームに専念することに決めたソフトウェア企業も少しずつですが増え始めているようです。また、これまた先のジョブズCEOによるアドビへの反論書簡が公開された瞬間、一気にアドビの株価が落ち込むという影響まで報告されてますよ。
アップルよ、どこへ行く? ジョブズが帝国驕りに加速していく姿だけは見たくないですよね...
[NY Post]
matt buchanan(原文/湯木進悟)