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『エースコンバット04 シャッタード・スカイ』20周年!敵機や無線で至高のシューティング体験を与えた名作を振り返る【特集】

『エースコンバット04 シャッタード・スカイ』20周年!なぜこのタイトルはシリーズファンから愛されるのか振り返る

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『エースコンバット04 シャッタード・スカイ』20周年!敵機や無線で至高のシューティング体験を与えた名作を振り返る【特集】
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ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)からPlayStation 2向けに発売されたフライトシューティングゲーム『エースコンバット04 シャッタード・スカイ』は2021年9月13日に20周年を迎えました。

1999年6月に発売された『エースコンバット3 エレクトロスフィア』は、シリーズ3作目にして重厚なストーリー展開や、アナログスティックに対応したキーマッピングなど、2021年現在からの視点から見ればシリーズの基礎を完成させたタイトルでした。

前作がポストサイバーパンク+アニメという形式で物語を展開していたのに対し、『04』は止め絵によるサイドストーリーとプレイヤーが関わったリアリティある戦争で物語を展開するなど、前作に引き続いて更なる変化が起きた作品だったのです。シリーズとして今でも人気が衰えない『04』を振り返ります。

パッケージにも対比的な表現が施されている。表紙はF-22が、パッケージの説明書には黄色のSu-37が描かれている

またしても巨大な転換点となった『エースコンバット04』

『エースコンバット04』のストーリーは、小惑星ユリシーズ(1994XF04)がユージア大陸に落着した大災害による経済恐慌と難民問題から、エルジア共和国とユージア諸国との亀裂で勃発した「大陸戦争」の1年後が舞台。プレイヤーは、ユージア大陸の端に追いやられ敗北寸前となったISAF(独立国家連合軍)の空軍パイロット“メビウス1”となり大陸戦争に参加することになります。

『04』のグラフィックはフォトリアルを追求しつつも、現実に無い物体などが登場することから、菅野昌人氏が挙げたのが背景コンセプトの“ストレンジリアル”です。公式サイトAC04Web(現在は閉鎖)で同氏は「今までにないリアリティレベルを実現する事」と「見たことはないが、実際にはそうなのだと感じ得る事」の二面性の意味を持つことが“ストレンジリアル”であると語っていました。また当時としての世界観は、「地球ではない何処かしかし同じ現代”を過ごす大陸ユージア”」であると説明されていました。

ストレンジリアルは今日において作品の世界観を示す言葉となっていますが(世界観として用いられたのは2011年の『エースコンバット アサルトホライゾン』の河野氏インタビューから)、『04』の時点ではデザインコンセプトの意味しかありません。一方で当時アートディレクターだった河野一聡氏は同公式サイトで、「対比」や「コントラスト」、そして「ギャップ」を『04』のグラフィックコンセプトとして意識したと挙げています。

新技術・新システム導入による変化はゲームの内外で現れました。PS2へプラットフォームが移ったことから60fpsでの動作するようになったほかにも、通常のミサイルに加えて爆弾や高性能なミサイルを使用出来る特殊兵装、コックピット視点、敵味方入り乱れる無線などがゲーム内における変化です。開発や広報面では、航空自衛隊と協力しアフターバーナーの音などのサウンド収録やロッキード・マーティンとのライセンス契約、衛星写真の利用、厚木基地のフレンドシップデーにおけるプレイアブル出展などにも及びます。

ミッション1に登場するクレーターで過去に大災害が起きたことを知る

『エースコンバット04』の開発がいつから始まったのかは現時点でも言及されていませんが、2000年末に開催された「PlayStation 2 Party」が初発表で、当初『エースコンバット4(仮題)』として2001年夏の発売を予定していました。2001年の東京ゲームショウ春にはプレイアブル出展を行うと共に、2001年3月に正式名称も『エースコンバット04 シャッタード・スカイ』と決定。発売日の情報が出てきたのは同年7月ごろで、発売は2001年9月13日でした。

無線とドッグファイトによって彩られる至高のシューティング体験

『エースコンバット04』において、戦闘機同士のドッグファイトや地上攻撃だけでないゲームプレイに更なるインタラクティブ性を加えたのは無線要素でした。この無線は、小学館より発行された攻略本「エースコンバット04シャッタードスカイ公式ガイドブック」の巻末インタビューによると、プロジェクトディレクターだった一柳宏之氏はプレイヤーに直接褒める言葉を送ることをせず、やるのであれば「すごいプレイヤーがいるということが話題に上がっているよ」という間接的な形での表現にした4Gamer.netでのインタビューで語っています。

こうした表現にした理由は、面と向かって褒められると発言者の内にある無意識な「気に入られたい」という欲があるために真実味を感じられにくいことから、第三者が第三者に向かって自分の事が話題にされているとそうした当事者間の無意識な期待が無く、真実味を感じられるという感覚に由来しています。

それらは味方の無線だけでなく敵の通信も入り乱れる形で表現されることに繋がり、ゲーム終盤においてプレイヤー機の価値は著しく上昇すると、味方からは<<メビウス1が来ていると言っとけ!嘘でもいい!>>と、敵からは<<空軍、リボンの戦闘機をなんとかしてくれ!>>など間接的に頼られ畏怖されるという語り方がされていたのです。

本作のナラティブを成り立たせているのは無線だけではありません。空戦も前作から大きく変化しており、60fpsによるシューティングゲームとしてのレスポンスの良さだけでなく特殊兵装による攻撃、敵機による執拗な格闘戦(ドッグファイト)がもたらされています。

特にドッグファイトは、敵機の挙動をよく観察してみると、敵機が自機を見つけた時に距離を離すか倒されるまで何度も後方へ回り込むような動きを行います。敵に後ろを付かれると、『5』や『ZERO』のように敵機をオーバーシュートさせることも難しいことから、ミサイルが一撃死となる難易度ACEだと緊張感のある空戦となっていました。『04』の時点では、僚機システムや高速旋回可能なハイGターンもなく、敵/自機のミサイルの誘導性も高めなことから、スロットルの加減速などを駆使するシンプルながらも複雑な格闘戦になりやすくなっています。

片渕須直監督が描くサイドストーリー、ゲーム本編と無線の3軸が絡む実験的なストーリーテリング

本作のサイドストーリーは、大陸戦争の戦火の影響でサンサルバシオンに住むことになった第三者である少年の目線から、身近な敵である黄色13を含んだエルジア軍の兵士達とISAF、そして戦争の趨勢を見ていくというもの。

本作のサイドストーリーが止め絵による演出(表現としてはフランス映画「ラ・ジュテ」がベース)を導入したのは、『3』が多くの予算を使ったこと十分な予算が無かったことからです。サイドストーリーを担当した片渕須直監督は、一柳氏と、アートディレクターの河野一聡氏がSTUDIO4°Cを訪ねて来たことで、「いつの間にかこの仕事をすることになっていた」とWebアニメスタイルに掲載されている連載コラム「β運動の岸辺で」にて振り返っています。

ゲーム本編においてストーリーテリングは「戦争の流れ」と、「プレイ中の物語(無線)展開」、そして「サイドストーリー」の3つが存在しており(AC04Webのワールドニュースやパッケージ演出を加えれば5つ)、同公式ガイドブックのインタビューで河野氏も「このシナリオ3つが絡まり合って進む、けっこう複雑で実験的なゲームなんですよ」と特殊なものであることを示しています。

ミッション15はサイドストーリーとゲーム本編、そして無線の全てが同一の場所で語られるミッション

このような実験的で複雑なストーリーテリングは、00年代当時としても特筆するものとして挙げられる傾向がありました。2006年に開催された国際大学GLOCOMの「コンピュータゲームにおけるプレイヤーという存在」において、この3視点を融合することで、ゲームの世界を立体的に体験させていくことに繋がると言及されています。

シリーズおいて新たなるスタンダードとなった『エースコンバット04』

発売された『エースコンバット04』の評価は高く、インターネットに現存する当時のレビューや感想を読んでみると、美麗になったグラフィックや間接的に褒められる無線だけでなく、機銃の使いやすさ、コックピット視点、音楽/サウンドが高い評価を生んでいました。さらに前作『3』を受け入れ辛かったユーザーからは『2』路線の延長線上とも捉えられる作風に戻ってきたことも高い評価の一つです。

描写回数は少ないがリアルタイムカットシーンも導入されている

一方で、空戦ミッションの少なさや1ミッションが長い(10分以上かかる)こと、地表の荒さ(テクスチャーなど)、分岐の無さ、味方機の頼りなさ、サイドストーリーの淡泊さなどが当時の気になる点/短所として挙げられていました(これは、最新作『7』でも似た傾向だった)。

本作の影響力は大きく、後のシリーズでも「サイドストーリー」と「無線」を使ったストーリーテリングは踏襲されていました。後の作品に「黄色中隊」スキンや「メビウス」スキンが実装されるだけでなく、『エースコンバット5』では自由エルジアを武装解除させるために“メビウス1”が復帰して戦うアーケードモード「オペレーション・カティーナ」で再び操作できていました。

他にも、『エースコンバットZERO』のSPミッション「THE GAUNTLET」で条件を満たすと敵として出現。最新作『エースコンバット7』のVRモードでは、またも復活した自由エルジアと戦う“メビウス1”を再々度操作するなど、“メビウス1”に関わる物語は最新作まで続いています。

ストーンヘンジは『7』にも登場する

他にも本作が発売されたのは、現実世界が大きく動いた日である2001年9月11日の米同時多発テロから2日後の「2001年9月13日」であることを忘れてはいけません。このテロの影響は大きく、「飛行機」や「ニューヨーク」、「ビル」など事件に関連するものが事件を想起させるデリケートな存在となってしまったことから、『エースコンバット04』のCM放送が自粛されたことや、同じく飛行機を扱ったマイクロソフトの『Flight Simulator 2002』が発売を延期することなどゲーム分野においても無視出来ない影響が現れていました。

このテロが起きた恐怖については2011年の公式Twitterにて菅野氏が語っており、これによってAC04Webのユージアニュースに掲載されるコンベース港の戦艦タナガーが撃沈された瞬間のイラスト背景が修正されています(これはPDFにアーカカイブされたAC04Webの34ページで見られる)。ある意味で「戦争など遠い国の出来事、テレビの中の物語に過ぎなかった」ものが現実となって襲ってきた瞬間だったのです。

ある意味で戦艦タナガーはテロの影響を色濃く受けてしまった

『エースコンバット04』は、現時点においても他のハードに移植されたことが無く、今から遊ぶにはPS2実機が必要なためハードルは高め。そのため、ファンの要望も多くあることからなんとか現行機/PCへ移植、もしくはリメイクして欲しいというのが筆者の切なる願いです。また公式では、20周年に合わせた壁紙やミュージックプレイリストなどを公開しています。

『エースコンバット04』は、後のシリーズにおいてスタンダードになったゲームシステムや演出を確立していますが、本編の3軸で語られる物語や抑え気味な演出、間接的に褒められる無線など、特殊な用法も導入していることから、ある意味で『3』と同等以上の特殊なタイトルであることに気付かされます。特殊で実験的な施策が大きな成功として繋がったことも含め、後世にも語り継がれる「奇跡の作品」と呼べる唯一無二のタイトルです。

今回の記事執筆にあたってかつての攻略本を参考にしました。
《G.Suzuki》

ミリタリーゲームファンです G.Suzuki

ミリタリー系ゲームが好きなフリーランスのライター。『エースコンバット』を中心にFPS/シムなどミリタリーを主軸に据えた作品が好みだが、『R-TYPE』シリーズや『トリガーハート エグゼリカ』などのSTGも好き。近年ではこれまで遊べてなかった話題作(クラシックタイトルを含む)に取り組んでいる。ゲーム以外では模型作り(ガンプラやスケモ等を問わない)を趣味の一つとしている。

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