「司法クーデター」に救われたタイ・プラユット政権の「一寸先は闇」

執筆者:樋泉克夫 2022年10月25日
タグ: タイ
エリア: アジア
首相職に復帰したプラユット氏(C)EPA=時事
憲法裁判所から「任期継続」とのお墨付きを得たプラユット首相は、再び「司法クーデター」に救われた格好だ。2000年代半ばから続く王室・官僚・財界・国軍の既得権益層を中心とした「タイ式民主主義」と、タクシン派をはじめ対抗勢力の溝は深まる一方だ。

 

 9月30日午後、タイの憲法裁判所は、任期問題によって首相職務を停止していたプラユット・チャンオーチャー氏に関し、6対3の評決によって「任期は切れていない」との判断を下した。プラユット氏の任期は、「任期上限8年」を定めた現行憲法が公布された2017年4月6日から起算すべきであるとし、任期は2025年4月まで継続するとの判断だ。

 この結果、「2014年5月のクーデターを経て8月に暫定首相に就任した時から起算し、2022年8月の時点で『任期上限8年』に達した」との国会内外の反プラユット陣営の主張は退けられ、プラユット氏は首相に復すこととなった。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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