「(良いピッチと悪いピッチの)差がありすぎる」(板倉滉)。“ピッチ・オブ・ザ・イヤー”に見るドイツならではの芝事情
遣欧のフライベリューフリッヒ#9
「欧州へ行ってきます」。Jリーグの番記者としてキャリアをスタートさせ、日本代表を追いかけて世界を転戦してきた林遼平記者(※林陵平さんとは別人)はカタールW杯を経て一念発起。「百聞は一見にしかず」とドイツへの移住を志した。この連載ではそんな林記者の現地からの情報満載でお届けする。
今回のテーマは「ドイツの芝」。一般的に、日本ではドイツのプレー環境は非常に良く、国全体で整っているイメージが浸透している。ただ、そもそも寒い国ということもあり、“芝”に関してはそうでもない。日本人選手たちによる実際のプレーフィーリングも含め、リアルな現場の実状をお伝えする。
想像以上の“悪さ”
ドイツの冬は寒い。
11月頃から平均気温が6度前後と低くなり、夜間は氷点下になることも増えてきた。都市によってはすでに雪も降っており、ドイツの冬がやってきたことを実感する次第である。
この時期、ドイツの試合取材に向かうと特に感じることがある。雨や雪が増えることによる影響なのだろうが、どこのスタジアムに行っても、総じてピッチ状態が悪いのだ。
記者席から見ていても芝のハゲ具合が明らかなほどで、会場によっては砂が舞っていたり、凸凹していたり……。
「(良いピッチと悪いピッチの)差がありすぎる」と言ったのは日本代表DF板倉滉だった。特に冬のドイツの”芝”は環境的に難しい状況にあると言える。移住する前は5大リーグの1つに数えられるドイツの環境は素晴らしいものだと思い込んでいた部分もあるのだが、ある意味、驚いた実情の1つと言っていいだろう。
印象的な2つのシーン
今回、芝について取り上げようと考えるきっかけになった印象的な場面が2つある。
1つは先日、プレミアリーグのサウサンプトンとリバプールの試合を観戦したこと。
その日は強い風と時折雨が降っていたのだが、多少の凸凹具合や滑らなさこそ感じたものの、ピッチに対してドイツほどの悪さを感じなかったのだ。
実際、イングランドとドイツはそこまで気候的に変わるわけではない。そういう状況下にもかかわらず、スタンドから見ていても芝のハゲ具合が気にならなかったため、普段見ているスタジアムとの違いが明白だった。
そして、もう1つ印象的だったのが、ブンデスリーガ第10節のボーフム対レバークーゼン戦だ。……
Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。