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梅崎、町田、長沢、渡邉の攻撃陣4人が退団。大分が直面する「核になるFW」を探す勝負のストーブリーグへ

2024.12.05

トリニータ流離譚 第19回

片野坂知宏監督の下でJ3からJ2、そしてJ1へと昇格し、そこで課題を突きつけられ、下平隆宏監督とともにJ2で奮闘、そして再び片野坂監督が帰還する――漂泊しながら試練を克服して成長していく大分トリニータのリアルな姿を、ひぐらしひなつが綴る。

第19回は梅崎司、町田也真人、長沢駿、渡邉新太の攻撃陣4人が引退や契約満了で退団が決定、それぞれの想いと今後の大分のチーム編成はどうなっていくのかについて思いを巡らせたい。

ラストゲームを白星で飾り、梅崎司は指導者の道へ

 今季のホーム最終戦となるJ2第37節・群馬戦を翌日に控えた11月2日。クラブから梅崎司の契約満了が発表された。その時点では「契約満了」という形であり「現役引退」ではなかったが、群馬戦をラストゲームとしてベンチ入りし、チームメイトたちの頑張りもあって90+1分にピッチに立った梅崎の、ホーム最終戦セレモニーでのスピーチは、引退を示唆するものだった。

J2第37節・ザスパ群馬戦後にマイクの前に立つ梅崎(Photo: OITA F.C.)

 クラブから契約満了を告げられたのがその週に入ってからのことで、すぐには現役引退を決意することができなかったのがその理由だという。3日間ほど、周囲のいろんな人たちと話をして、考え、決断に至った。現役引退の発表は、最終節・仙台戦の翌日にあらためてクラブから公式にリリースされることになる。本来であればホーム最終戦後に引退セレモニーを行って、生え抜きのレジェンドを盛大に送り出したいところだったが、2016年からクラブの強化セクションの責任者を務めてきた西山哲平GMの退任がシーズン終盤になって決まり、吉岡宗重スポーツダイレクターとの任務の引き継ぎが急がれる中で、契約満了選手への告知が遅れてしまったことが残念だった。

 とは言っても「体がシグナルを出していた」と梅崎。37歳のアタッカーは昨季終了後もクラブハウスに通い、「おじさんだからこのくらいやらなくちゃ」と負荷の高い個人トレーニングを継続していたが、今季はリハビリからのスタートに。昨季務めたチームキャプテンの任から離れたことで、もう一度、1人のプレーヤーとしてアグレッシブにサッカーと向き合いたいと期していた矢先のことだった。

 「苦しいんですよ。苦しいんだけど、自分を鼓舞して『まだできる、絶対やれる』と、葛藤がありながら自分に言い続けて。でも不安がずっとあって」。チームが残留争いをしていた10月には「最後は自分が活躍するイメージを持ってトレーニングを続けている」と話していたが、その姿勢の陰には壮絶な自己との闘いがあった。

Photo: OITA F.C.

 梅崎のラストゲームの1週間前の第36節、群馬では、浦和や年代別代表でともにプレーしてきた同い年の細貝萌がスパイクを脱いでいた。梅崎は契約満了にあたり、その細貝にも連絡を取って、こう言われたと明かす。……

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Profile

ひぐらしひなつ

大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg

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