2024年11月に法律が改正され、酒気帯び運転など自転車の罰則が強化された。12月、忘年会シーズンを前に、広島市でおこなわれた警察の取り締まりに密着した。
自転車に乗る人を呼び止め取り締まり
12月のとある金曜日、広島市の平和大通りで行われているのは、“自転車の飲酒運転”の取り締まりだ。
この記事の画像(14枚)車の取締りに使うのと同じ検知器を使うそうだ。取り締まりにあたるのは、広島中央警察署交通第2課の猪田将太巡査部長。普段は白バイを操り、市民の安全を守っている。
時間は午後11時。飲み会帰りらしき人がちらほら増える時間帯だ。猪田巡査部長は、「すみません。こんばんは。中央警察署の猪田と申します」と、前を通る自転車を止め、まずは簡易的な検査をおこなう。
「すみません。すみません!追いかけろ!」
「流し」と呼ばれる取り締まり。帰宅を急ぐ人も多く、呼び止めるのも一苦労だ。
罪の重さは“赤切符”
開始からおよそ15分。猪田巡査部長がひとりの女性に声をかけた。
猪田巡査部長:今、自転車の夜間の飲酒の取り締まりをしていて、ご協力を。飲んでないですかね?
女性:ちょっと飲んでいます。
猪田巡査部長:ちょっと飲んでいる?ちょっと検査だけお願いしていいですか。申し訳ないです。飲み帰り?
女性:そうです。
自ら酒を飲んだことを申し出た女性。簡易検知器で調べるが…
猪田巡査部長:出んすね。
レモンサワーを1杯飲んだということだが、簡易検知器では反応しなかった。念のため、別の検知器で詳しく調べることにした。
飲んでから時間が経っていたのか、またもやアルコールは検知されなかった。
女性:アルコールが出たらどうなるんですか?
猪田巡査部長:50万円以下の罰金。
女性:やば…え、やば…
猪田巡査部長:飲みに自転車で行っちゃだめですよ。
女性:わかりました…
飲酒運転の罪の重さに気づいた女性。繰り返さないことを誓い、その場を後にした。
11月から、自転車でも基準値を超えたアルコールが検知されると、車と同じように「酒気帯び運転」となる。3年以下の懲役又は50万円以下の罰金がかせられることがあり、違反者には比較的重い違反に対して交付される「赤切符」が切られることになる。
基準値オーバーで検挙も
警察官が呼び止めた一人の40代の女性。口からは酒の臭いが…。
今度は簡易検査でアルコールが検知され、詳しく調べることに。
より精密な呼気検査で基準値以上のアルコールが検出され、“赤切符”が切られた。
広島中央警察署 佐々木忍警部補:
中ジョッキビールを2杯飲んだそう。そんぐらい出るかなっていうところですね。女性は、自宅までの距離が近かったんで、大丈夫だろうと思ったそうです。
この日は平和公園付近でも取り締まりが行われ、およそ3時間で合わせて3人を検挙した。
検挙された人たちは「大きな通りを通らなければ警察にばれることはないだろうと思っていた」「車のように捕まるとは思っていなかった」などと話していたということだ。
一方、自転車と車がぶつかり、その事故が原因で自転車の飲酒運転が発覚するケースもあった。
広島中央警察署の猪田将太巡査部長は、「自転車だったら大丈夫という気持ちを持った状態で運転する方がまだ中には多いのかなという印象を受けています。自転車といえども、お酒を飲んで運転したり、危険な運転をするとやはり重大な事故につながる乗り物でもありますので、悪質なものについては厳しく検挙していく必要があると思います」と取り締まりの重要性を強調した。
死亡事故にもつながる恐れのある自転車の飲酒運転。自転車も“飲んだら乗るな”を徹底する必要がある。
“飲んだら乗るな!” 各世代で念頭に
今回密着した平和大通りの取り締まりだけでも、お酒を飲んだということで詳しい検査をした人は4人いた。
酒を飲んで自転車に乗ってしまった人たちは、「厳罰化したことは知っているが、車ほど取り締まりが厳しくないだろう」と思っている印象がある。
一晩で4人。それでは、1カ月となるとどのくらいの数字になるのだろうか。
警察によると、11月の検挙数は“37人”。年代別の内訳は、50代が13人と最も多く、その次が20代の9人となっている。
また、検挙のきっかけは検問のほかにも、「無灯火で乗っていた」「信号無視をした」「交通違反を見つけた警察官の職務質問」などで発覚することが多いようだ。
12月11日には、東京で、自転車で酒気帯びをした男性が逮捕されたというニュースがあったが、広島でも悪質なケースは逮捕に踏み切ることはありそうだ。改めて自転車であっても、「酒を飲んだら乗ってはいけない」ということを徹底しなければならない。
(テレビ新広島)