福島県立医科大学 研究成果情報

英国雑誌「Communications Biology」掲載(10月11日オンライン)(2024-10-25)

KIF1C facilitates retrograde transport of lysosomes through Hook3 and dynein

KIF1CはHook3とダイニンを介してリソソームの逆行性輸送を促進する

佐事 武 (さじ・たけし)
生化学講座 助教
        
研究グループ
佐事武、西田満(福島県立医科大学生化学講座)
遠藤光晴、南康博(神戸大学大学院医学研究科)
岡田康志(理化学研究所生命機能科学研究センター、東京大学大学院医学系研究科・理学系研究科・ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN))

概要

論文掲載雑誌:「Communications Biology」(October 11, 2024)


リソソームは、細胞内の不要物質を分解・リサイクルする小さなオルガネラであり、オートファジーやエンドサイトーシスといった正常な細胞のプロセスに欠かせない役割を果たしています。また、その機能異常が神経変性疾患、がん、免疫疾患などの発症や進行に関与していることも知られています。リソソームが適切に機能するためには、細胞内で正しい位置に配置されることが重要です。一般に、オルガネラの配置は、細胞内の「レール」ともいえる微小管に沿って、モータータンパク質が輸送することで制御されています。モータータンパク質のなかでも、キネシンは順行性(細胞の中心から辺縁方向)の輸送を、ダイニンは逆行性(細胞の辺縁から中心方向)の輸送をそれぞれ担当します。これまで、キネシンの一種であるKIF1Cが、特定のタンパク質やRNA、小胞の順行性輸送を担うことが知られていましたが、リソソームの輸送との関連は不明でした。

今回の研究で、KIF1Cがダイニンと協力してリソソームの逆行性輸送を促進することが明らかになりました。この輸送にはKIF1Cのモーター機能を必要とせず、むしろモーター機能はリソソームの逆行性輸送を抑制することがわかりました。つまり、KIF1Cはモーター以外の部分でダイニンによる逆行性輸送を活性化させながら、同時にモーター機能を使ってダイニンと「綱引き」を行い、その輸送にブレーキをかけるという二重の制御機構を持っていることが示されました。このような緻密な制御によって、リソソームは適切な位置に配置され、正常に機能することが可能となります。(佐事 武)


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