Japan tax alert 2024年12月24日号
令和6年12月20日に、令和7年度与党税制改正大綱が公表されました。以下、大綱で明らかにされた主要な改正・見直し項目の概要を説明します。なお、今後の与野党間の協議及び国会における改正法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意ください。
法人課税
1. 中小企業者の法人税の軽減税率の特例
以下の見直しを行った上で、適用期限が2年延長されます。
- 所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率が17%(現行:15%)に引き上げられます。
- 適用対象法人の範囲から通算法人が除外されます。
2. 中小企業関連税制
- 中小企業投資促進税制について見直しを行った上で、適用期限が2年延長されます。
- 中小企業経営強化税制について見直しを行った上で、適用期限が2年延長されます。また、関係法令の改正を前提として、「売上高100億円超を目指す中小企業に係る措置」が講じられます。対象資産に建物が追加されます。
- 中小企業の設備投資に係る固定資産税の課税標準の特例が2年延長されます。
3. 組織再編に関連する税制
- 非適格合併等により移転を受ける資産等に係る調整勘定の算定方法が明確化されます。
- グループ通算制度下における完全子会社の税制適格スピンオフ実施の円滑化のために、分配資産割合の計算に係る所要の措置が講じられます。
4. その他
- リース会計基準の変更に伴う所要の措置が講じられます。
- 地域未来投資促進税制が3年延長されます。
- 企業版ふるさと納税制度が3年延長されます。
- 5G投資促進税制とDX投資促進税制が廃止されます。
国際課税
1. グローバル・ミニマム課税
- 軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)及び国内ミニマム課税(QDMTT: Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)の法制化が行われます。適用開始時期は、対象企業の準備期間を確保する観点から、いずれも令和8年4月1日以後に開始する対象会計年度とされます。
- OECDにより発出されたガイダンスの内容等を踏まえ、制度の明確化の観点から所要の見直しが行われます。
2. 外国子会社合算税制
- 外国関係会社の課税対象金額に相当する金額は、その事業年度終了の日の翌日から4月(現行:2月)を経過する日を含む内国法人の各事業年度の所得の金額に算入することになります。
- この改正は、内国法人の令和7年4月1日以後に開始する事業年度に係る外国関係会社の課税対象金額(その外国関係会社の同年2月1日以後に終了する事業年度に係るものに限る)について適用されますが、早期適用が可能となる経過措置が講じられています。
個人所得課税・資産課税
1. 個人所得課税の見直し
- 個人所得課税(国税)における基礎控除の額が58万円(現行:48万円)に、給与所得控除の最低保障額が65万円(現行:55万円)に引き上げられます。いわゆる「年収の壁」が、103万円から123万円になります。
- 特定扶養控除における子の年収要件が150万円(現行:103万円)に引き上げられます。また、高校生年代の扶養控除の縮小は見送られました。
- 以上の改正は令和7年から適用されます。
2. その他
- 子育て世代等に対する住宅ローン控除の借入限度額上乗せ措置について、令和7年も継続されます。
- NISAの利便性向上のための見直しがなされます。個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金の上限が引き上げられます。
- 法人課税信託に受益者等が存することとなった場合の所得金額の計算について見直しが行われます。
- エンジェル税制において、再投資期間の延長が行われます。
- 事業承継税制において、役員就任要件の見直しが行われます。
- 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の適用期限が2年延長されます。
消費課税
消費税の外国人旅行者向け免税制度の見直し
- 不正利用を排除し、免税店が不正の排除のために負担を負うことのない制度とするため、令和6年度税制改正大綱で示された方針を踏まえ、出国時に物品の持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度となります。確認後に免税店から外国人旅行者に消費税相当額を返金する「リファンド方式」に見直されます。
- この改正は、令和8年11月1日以後に行われる免税対象物品の譲渡について適用されます。
防衛力強化に係る税制措置
1. 防衛特別法人税(仮称)の創設
- 課税標準法人税額(課税標準)に対し、税率4%の新たな付加税が創設されます。課税標準法人税額は基準法人税額から500万円(基礎控除額)を控除した金額とされます。
- 令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
2. その他
- たばこ税の増税については、令和8年4月以降、順次実施されます。
- 所得税の増税時期の決定は先送りされました。
納税環境整備
1. 電子帳簿等保存制度の見直し
- 電磁的記録に係る重加算税の加重措置の対象から、一定の要件を満たす
電子データを除外することとします。 - 所得税の青色申告特別控除(65万円)の適用要件が見直されます。
2. e-Taxの利便性の向上
- 地方税において、e-LTAXを経由して電子的に副本を送付する仕組みが導入されます。