朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第16週「1983」
第76回〈2月17日(木)放送 作:藤本有紀、演出:橋爪紳一朗〉
※本文にネタバレを含みます
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ひなた、おゆみ(美咲すみれ)に出会う
「もうあれから20年経たったんや」と錠一郎(オダギリジョー)が『妖術七変化』のポスターを見てつぶやいた。この映画を観て錠一郎はトランペットのコンテストに出る決意をして、るい(深津絵里)とも結婚しようと考えるようになった。このときの敵役・伴虚無蔵(松重豊)に誘われて今、娘のひなた(川栄李奈)が条映撮影所で働き始めた。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜76回掲載中)
ひなたは仕事の合間、条映映画の企画スタッフ・榊原(平埜生成)に『破天荒将軍』のスタジオを見学させてもらって大興奮。現場には五十嵐(本郷奏多)もいた。彼は大部屋俳優の下っ端でまだ出番もなく、ひたすら見学しているだけのようだ。ひなたには上目線の五十嵐が撮影現場では真摯に立って見ている。人は相手によって見せる顔が違うという見本のような五十嵐。現場ではいい子な感じ。ひなたには無愛想。この極端さを本郷奏多が見事に演じている。
ひなた編の出演者はテクニカルな俳優たちが多い。川栄李奈がまずそう。まるでディズニー・アニメのフルアニメのキャラのように常になめらかに表情を変化させていて飽きさせない。
テクニカルなもうひとりは安達祐実。かつて『棗黍之条』シリーズにおゆみ役で出ていた俳優・美咲すみれを演じる彼女は、天才子役として人気を馳せ、大人になっても活躍している。京都撮影所から東京に出たもののあまり仕事がなく、見かねた榊原がイベントの仕事を頼むも「私を誰だと思ってるのよ」とプライドを振りかざす。サインをねだるひなたにはにっこりするが、榊原にはきついことを言っていて、立ち聞きしたひなたはあんな人だったのかと少しショックを受けるような裏表のある人物を安達が鮮やかに演じている。
五十嵐といいすみれといい、俳優は二面性があるようだ。とはいえ安達は切り返しの巧さというのではなく、やっぱりなめらか。例えば、ひなたがサインを求めたとき、一瞬けげんな顔になりかかったところ、ゆっくりにっこり表情を変えていく。余裕のある優雅な女優像を演じようとしている人物を演じているという複雑さ。
本郷も上目線と下っ端顔との単純な切り替えではなく、徐々に上目線のなかに彼の複雑な繊細な表情が見えてくる。とにかく川栄も安達も本郷もいくつもカードを持っている。
映画会社で働きはじめたひなたは、意外と気が回っている。
川栄李奈の素の敏さが出ているようにも思うし、ひなたはやれば出来る子であるのかもしれない。ひなたの履いているふくらはぎの途中までの丈の白い靴下、きっとソックタッチで留めているのだろうなあ。調べたらソックタッチは70年代からあったそうだ。
(木俣冬)
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番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時00分~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時00分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時00分~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時00分(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時00分~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami