第2章『次の内閣』の活動
14 環境・エネルギー
エネルギー・環境分野では、地球温暖化対策、エネルギーミックス、再生可能エネルギー導入拡大、自然保護等の課題に積極的に取り組み、政策の取りまとめ、議員立法の提出を行った。
エネルギー政策の深化
エネルギー政策については、福島第一原発事故を契機に国民的議論が起こり、民主党政権時に革新的エネルギー・環境戦略として取りまとめた。エネルギー総合調査会では、それを深化させるため、有識者ヒアリングや現地視察を行い、省エネルギー、熱の有効利用、再生可能エネルギー、火力発電所の効率化に焦点を当て、2014年6月に中間報告を取りまとめた。中間報告の概要は、以下の通り。
(1)省エネルギーは、1990年以降の日本の努力が不十分であり、大企業は「見える化」により、中小企業は省エネルギー診断の義務化により、大幅な省エネルギーを実現する。また、全建築物の断熱義務化、性能表示義務化によりエネルギー消費を大幅に削減する、(2)熱については、バイオマス・地中熱などの再生可能熱の利用促進、コジェネレーション(熱電併給)の普及拡大、廃熱の有効活用を行う。老朽化火力発電所は、早急に最新式に建て替え効率化する、(3)再生可能エネルギーは、固定価格買取制度(FIT)に関し、小規模優先原則の確立、認定取消制度の創設、接続義務の確実な実施、送電網の整備を行う。また、国・自治体の関与の強化、国・自治体施設への導入を義務化する、(4)上記の政策実現のため、分散型エネルギー推進基本法、熱エネルギー利用促進法、公共施設省エネ・再エネ義務化法、エネルギー協同組合法などの法整備を行う。新たな2030年目標として、省エネルギーは2010年比原油換算-1億kl程度、電力消費-110億kwh程度とする。
接続保留問題への対応
九州電力管内では2014年3月に太陽光発電接続申込が殺到したことで、9月には接続の回答が保留され、事業者等が大混乱に陥った。総合調査会では、対策チームを設置し、現地調査を行い、11月に提言を取りまとめた。
短期的課題として、即時の接続保留解除、地域間連携線運用ルールの見直し、接続保留要件の厳格化、受け入れ容量計算の見直し、事務対応能力強化等を求めた。
中長期的課題として、系統強化、再生可能エネルギー導入目標の法定、地産地消型エネルギーの普及、太陽光発電買取価格の細分化、バックアップ火力発電所への支援、蓄電池の技術開発、水素貯留による系統負荷軽減などを求めた。
エネルギーミックス・地球温暖化対策
政府の「2030年のエネルギーミックスと省エネ、温室効果ガス削減目標」は、民主党政権時代と比べ、原子力と火力の比率が高く、再生可能エネルギーの比率が低い。また火力について、短期的コストの優先により石炭火力の比率を高めたために、温室効果ガスの削減目標が低くなっている。
しかし、先進各国は温室効果ガス削減の長期目標として、2050年に80%以上の削減を目指している。さらに、IPCC第五次評価報告書では、温室効果ガス排出量を2100年にはゼロまたはマイナスにしなければ2℃目標を達成できないとされている。
総合調査会では、2014年の中間報告をベースに議論を進め、地球温暖化対策の長期目標と整合的な排出抑制が必要であり、温暖化対策こそが最良の防災・減災対策であるとの観点から検討を進めた。そして、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限導入を大前提とするエネルギーミックス・温室効果ガス削減目標の民主党案を取りまとめた。
(1)省エネルギーは、老朽化施設更新や建物断熱義務化等により2010年比-1億kℓの省エネを行う、(2)再生可能エネルギーは、電源の30%を導入する、(3)火力発電については、高効率天然ガス発電を当面の基幹電源とする、(4)原子力発電については従来通り2030年代原発稼働ゼロを目指す、とした。このことにより、温室効果ガス削減は、1990年比-30%を目標とした。4月23日に宮沢経済産業大臣に「エネルギーミックスに関する提言」を提出した。
電源構成表示問題への対応
電気小売業への参入全面自由化に伴い、政府内で電源構成表示の検討が行われたが、当初案では表示を義務化せず、FIT電気は「環境への負荷の低減に資するものである旨説明してはならない」とだけしていた。再生可能エネルギーの普及拡大のためには、消費者の電力選択機会の保障が必要であり、総合調査会で政府と議論を行った結果、FIT電気であることを明示した上で、再生可能エネルギーとして表示可能となった。表示義務化は、政府で引き続き検討中である。
琵琶湖保全・再生法が成立
わが国最大の湖であり、近畿圏1500万人の水がめである琵琶湖の自然を守り再生するために、国が琵琶湖の保全・再生に関する基本方針を策定し、滋賀県が基本方針に基づき琵琶湖保全・再生に関する計画を策定する「琵琶湖の保全及び再生に関する特別措置法案」を民主党単独で2014年の186回通常国会に提出したが廃案となった。189回通常国会でも同法案を提出した。その後与党との協議が行われ、ほぼ同様の内容の「琵琶湖の保全及び再生に関する法律案」が成立した。
瀬戸内法改正の成立
かつては汚染が激しかった瀬戸内海も、水質の改善が進んでいる。しかし、一部海域では環境回復が不十分であり、地域の実情に応じた対策が必要となっていた。
与党が186回通常国会に提出した「瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正する法律案」は、基本理念を定め、関係者から意見聴取の機会を設けた点は評価できるが、富栄養化防止規定の削除や公共事業偏重等の問題があった。環境部門会議では、関係者ヒアリング等を行い、富栄養化防止規定の復活、計画策定時の住民意見の反映、生物多様性配慮規定の追加等の方針を取りまとめた。与党と協議の結果、民主党の主張が全面的に採用されたことから、民主党も提出会派となり、189回通常国会で成立した。
2015.4.23
経済産業大臣に「エネルギーミックスに関する提言」提出
2015.9.28
日本原燃六ヶ所原子力燃料サイクル施設視察