2015 民主党国会レポート

強くしなやかな社会をつくり再び政権交代を

第2章『次の内閣』の活動

10 厚生労働

 厚生労働部門は、安倍政権の労働法制改悪を阻止するための問題点の洗い出しや「漏れた年金情報問題」の全容解明等に全力を挙げて取り組んだ。

労働者派遣法の改悪に厳しく対峙

 安倍政権は、2014年に二度にわたって廃案となった「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」(いわゆる労働者派遣改悪法案)を2015年の189回通常国会に提出した。民主党は、他の野党と「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案」(同一労働同一賃金推進法案)を提出するとともに、“生涯”派遣で働かざるを得ない若者を増やす等の労働者派遣改悪法案の深刻な問題点を厳しく指摘して、強く反対した(詳細)。

残業代ゼロ法案の審議入りを阻止

 安倍政権は労働法制改悪の第2弾として、「労働基準法等の一部を改正する法律案」(いわゆる残業代ゼロ法案)を189回通常国会に提出した。民主党は、(1)創設される「高度プロフェッショナル制度」では、労働者の心身を守るために設けられている「1日8時間・週40時間」という基本的な保護さえ与えられず、残業代や深夜割増賃金も支払われないばかりか、健康確保措置も不十分で、過重な長時間労働を合法的に強いられるようになる、(2)営業職等への裁量労働制の拡大は、年収要件も無く、多くの人に長時間労働を強いることになる、(3)2014年の186回通常国会で民主党が提唱して成立させた「過労死等防止対策推進法」を反故にし、過労死を招く法案である、等の問題点があると追及し、審議入りを阻止した。結果、本法案は継続審議となった。民主党は「過労死ゼロ」を目指して、「残業代ゼロ」を阻止すべく、引き続き全力を挙げていく。

年金情報流出の全容解明に全力

 2015年6月1日、日本年金機構(以下、「機構」という)がサイバー攻撃により、約125万件の年金情報を流出させたことが明るみになった。行政機関が大量の個人情報を流出させた前代未聞の事態であり、厚生労働部門は漏れた年金情報調査対策本部と連携し、政府に対して問題の全容解明や、迅速かつ的確な対応等を求めた。
 34回にわたる民主党の会議の中で、機構の杜撰な個人情報管理だけでなく、(1)サイバー攻撃が起きてすぐに、厚生労働省が機構に対して、機構のパソコン全てをネットから遮断するよう指示しなかったため、年金情報の流出を招いた、(2)機構に対するサイバー攻撃よりも前に類似の手口の攻撃が厚労省年金局になされていたが、厚労省はその事実を隠蔽し、対外的に公表することはおろか、同じ年金業務を行う機構に知らせることすら怠ったため、機構がサイバー攻撃に備える機会をみすみす逃した、という機構を監督する厚労省の対応の不手際が明らかになった。
 厚生労働部門は、情報流出の根本的な責任が厚労省とその責任者である塩崎厚生労働大臣にあると断じ、厳しく追及した。

介護報酬の大幅引き下げに反対

 安倍政権が2014年に介護報酬引き下げの検討を開始して以降、民主党は厚労省に対し、引き下げ検討撤回の申入れを2度にわたって行った。しかし、政府は民主党の要請に聞く耳を持たず、平成27年4月から介護報酬を大幅に引き下げた。障害福祉報酬も、物価高を勘案すれば、実質的にマイナス改定であった。
 介護・障害福祉分野は、給与が低いために既に人材不足であるにもかかわらず、介護報酬等が引き下げられれば給与をカットしなければならず、人材不足に拍車がかかってしまう。民主党は、社会保障の充実・安定化のために消費税率を引き上げたにもかかわらず、安倍政権が社会保障を切り捨てたことを厳しく批判した。厚生労働部門は、団体ヒアリングや介護施設の視察を通じて介護報酬引き下げに対する見解を把握するとともに、政府に問題点をただした。

医療の安定化を図る

 安倍政権は189回通常国会に、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」を提出した。法案の内容は多岐にわたり、対応を検討するため、7団体からヒアリングを行った。ヒアリングでは、後期高齢者支援金の全面総報酬割で生み出される財源の使途に反対する意見や患者申出療養の創設に対する強い懸念等が示された。
 民主党はヒアリング結果等を踏まえ、法案には評価できる内容が含まれているものの、(1)高齢者医療制度の抜本改革が盛り込まれていない、(2)国保の効率化が不十分な現時点で、後期高齢者支援金の全面総報酬割で生み出される財源を国保に充当することは、負担が増える被用者保険の被保険者の理解が得られない、(3)患者申出療養では、医薬品の審査が適切に行われるか、患者が適切な医薬品や治療法を申し出ることができるか疑問が残る、との問題があることから反対したが、与党等の賛成により法案は成立した。
 また、厚生労働部門では、消費税率の引き上げに伴って負担が大きくなる医療機関等の控除対象外消費税の問題を解消する方策を検討するため、医療機関等の控除対象外消費税問題解消ワーキングチームを設置し、検討中の素案について13団体からヒアリングを行った。WTでは、ヒアリング結果等を踏まえ、さらに検討して法案化を進めていく。

GPIFの改革先送りに反対

 安倍政権は2014年10月、年金積立金の株式運用を倍増させた。それにより、国民の財産である年金積立金を毀損しかねない状況になってしまっている。塩崎大臣は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)について、運用の改革とガバナンスの改革は車の両輪としてきたことから、運用方針に見合うガバナンス改革を併せて行うべきであった。しかし、安倍政権は189回通常国会に提出した「独立行政法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備等に関する法律案」でGPIFの理事を一名追加等するだけで、誰が見てもガバナンス改革とは言えない、極めて不十分な内容でお茶を濁そうとした。そのため、民主党は株式運用倍増に強い懸念を表明した上で法案に反対したが、与党等の賛成により成立した。


2015.6.12 衆議院厚労委員会での労働者派遣改悪法案の審議強行に民主党などが抗議
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2015.6.2 漏れた年金情報調査対策本部・厚生労働部門合同会議
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