第2章『次の内閣』の活動
5 総務・地域主権
総務・内閣(地域主権改革・地方再生)部門では、総務省所管法案や内閣府地方創生関連法案への対応のほか、放送、郵政問題に取り組み、党政治改革・国会改革推進本部と連携して選挙制度の課題などに対応した。
公共放送の資質疑われるNHKを追及
NHKは放送法において、「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行う」とされ、主な収入は国民からの受信料で成り立ち、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによる表現の自由の確保」という目的遂行が高く求められる公共放送機関である。
しかし、今のNHKでは、放送法の目的や、存在意義が疑われる事案が相次いでいる。籾井勝人会長は就任会見の際、「政府が右と言うことに対して左とは言うわけにはいかない」と発言するなど、政府におもねる姿勢をとり、不偏不党をうたう放送法の目的と趣旨に反するとの疑念が持たれた。
受信料の使途にも問題が発生した。籾井会長が新年のゴルフ大会へ私的に参加するため利用したハイヤー代金が、公用のハイヤー利用代金と区別されずに経理処理されたことが判明した。NHK監査委員会の調査でずさんな伝票処理が指摘されたが、籾井会長が最初から私用目的と表明して対応したのか、監査委員会が徹底した調査を行ったのか不明である。また籾井会長が設置した「NHK関連団体ガバナンス調査委員会」への調査依頼の方法や費用算定については、外部から見て明朗な過程を経て適正な契約が行われたのか等について、疑問が残る。
さらに報道番組「クローズアップ現代」では、番組スタッフによるいわゆる「やらせ」問題が指摘され、報道の信頼が揺らぐ事態が起きた。これらの問題について、部門会議では籾井会長を含めたNHK執行部及び経営委員会を招請し問題点をただすとともに、放送受信料という公金が組織として適切に使用されていないのではないか、NHK全体が体質的にガバナンスを確立できていないのではないかなどを指摘した。
国会での全会一致による承認が慣例とされているNHK予算については、現会長の下で国民からの受信料が適切に執行できるか不透明であることから民主党は反対したが、与党等の賛成により承認された。
また、こうしたNHKの現状にかんがみ、民主党は社民党と共同で、会長人事選定の適正の確保、外部理事の任命や重要業務の執行について決議を導入するなど理事会の役割強化、監査委員の理事会出席による経営委員会の機能強化等を内容とする「放送法の一部を改正する法律案」を189回通常国会で衆議院に提出したが継続審議となった。
地方創生3法案への対応
189回通常国会では、政府から地方創生関連法案として、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(第5次地方分権一括法案)、「地域再生法の一部を改正する法律案」、「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案」(国家戦略特区法等改正案)の3法案が提出された。
「第5次地方分権一括法案」は、提案募集方式による地方公共団体等からの提案を踏まえ、国から地方への事務・権限の移譲について関係法律の整備を行うもの。「地域再生法改正案」は、生活・福祉サービスを一定のエリア内に集め、周辺集落交通ネットワーク等で結ぶ「小さな拠点」づくりを総合的に支援するもの。「国家戦略特区法等改正案」は、各府省にある規制について、国家戦略特区及び構造改革特区で規制の緩和措置を設けるものである。
3法案は各府省にまたがる規制改革であることから、総務・内閣(地域主権改革・地方再生)部門が中心となり、各関係部門から改正項目について意見募集を行い、協議した。その結果、「第5次地方分権一括法案」と「地域再生法改正案」に民主党は賛成し成立した。
一方、「国家戦略特区法等改正案」については、国家戦略特区に盛り込まれる一部項目の削除を求める等の意見が関係部門から出され、委員会審議を通じて修正案の提出や附帯決議の検討を行った。しかし、与党と折り合えず、民主党は総合的に判断して反対したが、与党の賛成により成立した(詳細)。
郵便法・信書便法改正案に反対
189回通常国会で政府から提出された「郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案」は、郵便・信書便分野における規制の合理化を図るため、郵便・信書便料金の届出手続を緩和するとともに、大型信書便及び高付加価値サービス分野の特定信書便での取扱範囲を拡大させるものである。
部門会議では、法案について総務省から説明を受けるとともに、日本郵政グループ労働組合から意見を聴取し、審議を行った。その結果、日本郵政が全国一律のユニバーサルサービスを担う一方で郵便事業の経営が必ずしも順調とは限らない状況の中で、特定信書便事業のマーケットだけを拡大する今回の方策は、郵便事業の収益に大きな影響を与え、日本郵政が負うユニバーサルサービスの確保を揺るがしかねないとの観点から、反対した。
投票機会・選挙運動拡大に向けて
2014年の186回通常国会で成立した「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律」附則で、選挙権年齢等の引き下げの検討条項が設けられ、超党派による選挙権年齢に関するプロジェクトチームで公職選挙法改正の検討が行われた。189回通常国会で18歳選挙権年齢引下げに合意し、全会一致で可決、成立した。18歳選挙権年齢引き下げは、2016年参議院通常選挙から適用される(詳細)。
党政治改革・国会改革推進本部では、選挙運動および投票機会・投票方法の拡大の観点から公職選挙法の見直しを検討し、(1)区域内の大規模小売店舗などで投票ができるようにする等、選挙当日の投票区外投票の解禁、(2)期日前投票所の増設と開閉時間の弾力化、(3)洋上投票の対象拡充、(4)投票所への子ども同伴が可能であることの明確化、(5)地方議会の選挙運動用ビラ配布の解禁、(6)要約筆記者への報酬支払の解禁等を内容とする「公職選挙法及び日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」を総務部門との合同会議で決定し、189回通常国会で衆議院に提出したが継続審議となった。
2015.3.18
NHK予算等について籾井会長らからヒアリング
2015.9.16
投票機会拡大等公選法改正案を衆議院へ提出