民主党は9日午後、福島県郡山市の会場で2014年度定期大会の本会議を開いた。各界からの来賓を代表して佐藤雄平福島県知事と神津里季生日本労働組合総連合会(連合)事務局長があいさつ。内海太大会議長(宮城県議)が代議員定数281人中260人の出席により大会が成立している旨を宣言したのち、海江田万里代表があいさつを行った(写真上は大会本会議オープニング、南会津の子どもたちの劇団息吹によるパフォーマンス)。
佐藤知事は2011年3月の東日本大震災と福島第1原発事故からの復旧・復興のなかで、「原子力に依存しない持続可能な福島をつくっていこう、全国から支援いただいている皆さんの気持ちを一つにして復興に当たっていこう」という復興ビジョンのもとで取り組んでいると話す一方、特に風評被害の継続と震災・事故の風化を懸念しているとし、「まず福島に来てもらって、このような状況をしっかり見てもらって事実を発信してもらうことが福島の復興・再生につながる」と党大会の福島開催を歓迎した。
神津連合事務局長は、今年の春闘を通じて「徹底して月例賃金の引き上げ、底上げにこだわる」と述べるとともに、安倍政権が一方で賃上げで経済の好循環を目指すと言いながら、派遣労働などの雇用法制の改悪を目指しているとして懸念を表明。「統一自治体選や次の国政選挙に向けて各地域で地方連合や地協組織との密接な連携を図ってほしい。一強多弱の政治で割を食うのは国民や働くもの。民主党の力をますます磨いて再び政権奪取してほしい」と呼びかけた。
同じく来賓の日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長、結いの党の小野次郎幹事長、生活の党の小宮山泰子国会対策委員長も紹介された。
海江田代表は、福島で党大会を開催した意図について、「民主党が政権を担っていた当時の『福島の再生なくして日本の再生なし』という言葉を民主党に集う一人ひとりが再度胸に刻むこと、東日本大震災のすべての被災地の復旧・復興、原発事故に関わる汚染水や廃炉対策、除染、子どもたちの健康、被災された皆さんの生活再建などの課題を、自らのものとしてしっかり確認し、これからも行動し続けることにある」と強調。この定期大会に提案している活動方針や規約改正の狙いについて、「2015年の統一地方自治体選挙の勝利なくして民主党再生はない」「安倍政権と厳しく対峙し『いのち、雇用、暮らしを守る』政治を全党員が一丸となって進める」の二つの重点課題を共有することにあると表明した。あいさつの要旨は次の通り。
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民主党2014年度定期大会 海江田万里代表あいさつ(要旨)
■謝辞
民主党の第10代の代表の海江田万里であります。党大会に当たり、ひとことごあいさつを申し上げます。
まずもって、全国各地から、そして各界からご多忙の中、あるいは悪天候の中、民主党大会にご臨席いただきましたことに心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。
また本日は、ご来賓として、ただいまごあいさつをいただきました佐藤雄平福島県知事、そして神津里季生・日本労働組合総連合会事務局長にご臨席いただき、ごあいさつを賜わりました。ご厚情、そして叱咤激励に対し民主党全議員、全代議員、そして党員を代表して御礼を申し上げます。
また、お忙しい中、日本維新の会・松野頼久国会議員団幹事長、結いの党・小野次郎幹事長、生活の党・小宮山泰子国会対策委員長にお越しいただきました。心から感謝を申し上げます。
さらに本日は、労働団体、各種団体、自治体の皆さま、そして駐日外国公館の皆さまにもご来賓としてお越しいただいています。この方々にも御礼申し上げます。
そしてここ福島での党大会開催にご尽力いただいた民主党福島県連の皆さま方に、この場をお借りしてあらためて感謝を申し上げます。
■福島での大会開催の意義
「福島の再生なくして日本の再生なし」
これは、私たち民主党が政権を担当していた時に、国民の皆さん、福島の皆さんに約束をした言葉です。
今回の党大会を、ここ福島で開催した意味は、民主党に集う一人ひとりが、この言葉を再度胸に刻むこと、そして東日本大震災のすべての被災地の復旧・復興、原発事故に関わる汚染水や廃炉対策、そして除染、子どもたちの健康、被災された皆さんの生活再建などの課題を、自らのものとしてしっかり確認し、これからも行動し続けることにあります。
昨日の現地視察や福島復興特別分科会での討論、そして地元自治体の皆さんとの今朝の懇談会、そして先ほどの佐藤雄平知事のごあいさつ、そして冒頭の子どもたちの舞踏で示された想いをしっかりと受けとめ、全党を挙げて福島の再生、東日本大震災のすべての被災地の復興、被災された皆さんの生活再建に全力を挙げることを全員で誓いましょう。
■今党大会の意義
さて、今回の党大会で全国の代議員の皆さん、そしてご参加いただいたすべての皆さんと確認したいことは2つであります。
一つは、今日2014年2月9日、2011年3月11日から1067日経った今日であります。この日を民主党にとっての反転攻勢の日にするということ。そして、この2014年を民主党にとって再生の年にするということ。このことを皆さんと誓い合いたいと思います。来年2015年には全国で統一自治体選挙があります。私たちは何としてもやはりこの選挙に勝ち抜かなければなりません。この選挙の勝利なくして民主党の再生はないと思っています。ですから、この2014年を民主党再生の年にするということは、この2015年の統一自治体選挙に向けて総がかりで闘う姿勢をつくり上げていくということにほかならないわけであります。
そして二つめは、今や暴れ馬となった安倍政権と厳しく対峙し、「いのち、雇用、暮らしを守る」政治を、国会、地方議会、各地域で、全党員が一丸となって進めることであります。
そのために、あらためて私たちは自らの立ち位置、進むべき道を確認したいと思います。
■未来への責任を果たし共生社会を実現する私たちの道
言うまでもありませんが、民主党は1998年に、幅広い立場と経験を持った多くの方々が結集し、「民主中道の新しい道を創造する」と宣言して結党されました。その後、政権交代の実現を目指して歩みを続け、2009年に政権交代を実現、3年3カ月のあいだ政権運営を担当しましたが、2012年暮れの総選挙で敗北し、下野しました。1998年の結党から16年間歩んできた私たちの道のりは、政権獲得、そしてその後の敗北も含めて貴重な財産であります。
多くの野党が乱立する今、民主党こそが野党勢力の中心に立たなければなりません。私たちは、敗北を総括し党の改革・創生を宣言した新綱領のもとに結束し、未来への責任を果たすために、これまで歩んできた道の先にある、「共生社会」、共に生きる社会の実現に向けて全国の同志とともに歩み続けたいと思います。
■安倍政権と厳しく対峙する
さて、私たちが新綱領を決定してから1年が経ちました。この1年というのは、安倍政権の1年でもありました。果たして日本の社会は、私たちが目指す社会に、1歩でも2歩でも近づいていると言えるのでしょうか?
昨年の臨時国会で秘密保護法を強行採決し、年末には靖国参拝。ダボス会議での英独関係発言や、集団的自衛権の見直しの国会答弁。NHK会長・経営委員の言動などは、私たちが目指す、国民主権・立憲主義の政治、綱領で掲げた「国を守り国際社会の平和と繁栄に貢献する」政治とは真逆のものではないでしょうか。私たちは、ツワネ原則など国際社会で当たり前になっている基準にそった法制度の整備を求め、「開かれた国益と広範な人間の安全保障」を目指して、偏狭な国家主義を正さなければならないと考えます。
アベノミクスで、東京と地方、大企業と中小零細企業、正規雇用と非正規雇用の格差が拡大しています。労働の規制緩和や介護サービスの切り下げは雇用や暮らしの不安を高め、不要不急の公共事業のバラマキは、財政再建を遅らせて将来世代へ負担を先送りして、しかも被災地復興の遅れを招いています。
未来への責任を持つために、チルドレンファーストで子ども手当や高校授業料無償化を推進し、非正規労働の処遇改善や社会保障の充実、農業戸別所得補償制度で地域経済・地域社会を活性化させ、「すべての人に居場所と出番」のある「共生社会」を目指してきた私たちといま正反対の政策が進められているわけでございます。
安倍政権の問題点をただし、説得力ある対案、そして確固とした政策を国民に提示する民主党の姿を、国民に示すことが今求められています。少子高齢化が進むなかで社会の連帯を強め、政府への依存を減らす「新しい公共」を大事にする勢力、それこそが私たち民主党であります。
昨日議論いただいた総合調査会、暮らしを守る研究会の議論を早急に取りまとめ、反転攻勢する民主党の政策、めざすべき社会像を国民に提案してまいります。
与党に擦り寄ることが「責任野党」ではありません。安倍政権の暴走に対して、国民の立場に立ち、国民の「いのち、雇用、暮らしを守る」ために、もうひとつの選択肢を示すことこそが、今求められる「健全野党」の姿だと思っています。
現在開かれている国会で、われわれは、現場主義、対案主義、そして改革主義の原則に則って、他の野党とも協力を重ねて、国民の期待に応えたいと思います。
■2015年統一地方自治体選挙を勝ち抜く全党総がかりの態勢を
そして全党総がかりの体制で全党を挙げて取り組むべき当面する最大の政治決戦は、2015年の統一地方自治体選挙であります。先ほど私は、2015年の統一地方自治体選挙での勝利がなければ民主党の将来はないと申し上げましたが、そのような決意に立って、今皆さま方にこうしてお話しをしているわけであります。
今年の党大会では、都道府県連、総支部、行政区支部の在り方を大きく見直す党規約・組織規則の改正を提案しているところです。
活動方針では、統一地方自治体選の勝利に向けて、党員サポーター30万人達成計画の策定、都道府県議選・政令市議選の空白区解消、女性候補の擁立に向けた計画、党地域での地方自治体選挙対策本部の設置などの選挙対策を推進し、国会議員・総部長、県連・地方議員、地域が総がかりで闘う態勢づくりを提案しています。
また、女性委員会から出された2020年に女性議員比率30%を目指す提言については、党代表としてしっかり受け止め、女性候補擁立指針を策定し、女性候補擁立の取り組みを加速させます。
2015年統一地方自治体選挙を勝ち抜くことこそが、民主党再建の強固な基盤となり、国政選挙での反転攻勢の先陣となります。
この大会で、全党総がかりの闘う態勢を実現したいと思います。
安倍政権と対峙する民主党の戦いは、国会の戦いだけではありません。統一地方自治体選挙に向けて、地域の介護や医療・教育・防災・議会改革など、「いのち、雇用、暮らしを守る」活動を、全国の民主党地方支部、地方議会の民主党系会派で取り組んでいただきたいと思います。国会議員と民主党県連、地方議会会派が協力して、国・都道府県・市町村で、「いのち、雇用、暮らしを守る」政治を推進しましょう。
■まとめ
昨年の党大会で、私は「靴底減らし運動」を提唱しましたが、私自身、全国を2巡して、今年から3巡目に入っています。しかし3年3カ月の民主党政権時代に失った国民の信頼をもう一度取り戻すためには、さらに地域を回って、一人でも多くの国民の皆さまの生活の現場で、話を聞くことが絶対に必要です。
私なりに誠意を尽くして信頼回復の努力をしてまいりましたが、信頼回復はまだ道半ばであるというのが現状だろうと思います。そのことは昨年夏の参議院議員選挙の結果をみても明らかです。
これからもさらに「靴底減らし運動」が必要です。今日お集まりの国会議員、総支部長、そして自治体議員の皆さんもぜひこの運動を続けていただきたいと要請する次第です。
統一地方自治体選挙の勝利に向けて、全国の都道府県連・総支部・地方支部で、国会議員・総支部長、地方自治体議員・候補者が、靴底を減らして国民との対話を重ね、国民の「いのち、雇用、暮らし」を守り、何がなんでも民主党を再生する2014年にしましょう! イギリス労働党のトニーブレア党首は、選挙演説の最後を必ず「教育! 教育! 教育!」と連呼して締めくくりました。私は、「いのち、雇用、暮らしを守る!」と申し上げます。
ともに全力で頑張りましょう!