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【24年秋ドラマ】『全領域異常解決室』第9話 人間は2つに分かれる、このドラマを見ているか見ていないか

藤原竜也(GettyImages)

 第5話の終了後に流れた予告で興玉さん(藤原竜也)が「僕も、神です」と言い出し、何もかもをひっくり返してきたドラマ『全領域異常解決室』(フジテレビ系)も最終回前の第9話。最終回の予告では、同じ興玉さんが「僕がヒルコです」とか言ってましたね。

 もう、なんなんだ。

 振り返りましょう。

■この世の人間は2つに分かれる

 もう、この世の人間は2つに分かれると言っていいでしょうね。『全領域異常解決室』というドラマを見ているか、見ていないか。そこに大きな断絶があるのです。

 どういう断絶かというと、例えば見ていない人が私たちに「今やってる藤原竜也とアリスちゃんのやつ、どういう話?」「なんかネットで盛り上がってるみたいじゃん」などと聞いてきた場合、私たちはそれを正確に応える言葉を持ちません。

「あのね、神様なんだよ……」

「人間はもうダメだ、ダメなところまで来ているっていう……」

「それが超おもしろいんだよ、フフフ……」

 完全にやべーやつの出来上がりです。かろうじて「ユースケ・サンタマリアもいい味出してるよ」くらいにとどめておくのが妥当でしょう。

 さて第9話。首元に呪符を貼り付けられて意識を乗っ取られた局長の宇喜之さんこと宇迦之御魂神(小日向文世)が、ヒルコに操られて興玉さん(興玉神だと思っていたら実は天石戸別神だった人)を消しにかかります。

 向けられた銃を払ってなんとか制圧したかに見えた興玉さんでしたが、スキを突かれて呪いのペンみたいなやつで背中を刺され、出血が止まらなくなってしまいました。以前、小夢ちゃんこと天宇受売命(広瀬アリス)もこれでやられて瀕死の状態になりましたが、そのときは佃さんこと月読命(石田ひかり)が月夜の光を借りて時間を戻し、なんとか一命を取り留めることができた。その月読命は前回、人間の愚かさに絶望して自ら神様としての生涯を閉じてしまいましたので、興玉さん大ピンチです。

 そこで召喚されたのが、病気平癒の能力がある建速須佐之男命、スサノオですね。現世ではスサノオは小学生の男の子をやっており、どうしようもない父親にDVを受けていました。

 興玉さんはスサノオの手によって息を吹き返しますが、スサノオはお父さんにお酒を買って帰らないとまた殴られるから、家に帰ると言います。神様は互いの人間としての日常生活に干渉できないので、誰もスサノオを父親の暴力から守ることはできません。殴られに帰るこの小さな男の子を、ただ見送ることしかできない。人間を守るための神様が、人間に殴られるために家に帰るしかない。まったく人間ってやつはもうダメなんです。ダメなところまで来ている。

 それでも神様たちは人間のために、ヒルコとの戦いに挑んでいきます。目下、ヒルコの正体と見られていたIT会社社長の寿正(野間口徹)までたどり着いた興玉さんたちでしたが、神の能力を知り尽くした寿によって身柄をとらえられてしまいました。

 そして、寿がヒルコの最終目的にいよいよ着手します。「もう止められない」。ヒルコの話題に夢中の人間たちが年中チェックしているSNSに細工を施し、彼らの意識をハックしたようです。

 街には、人の雨が降りました。

 警察署でも、次々に職員たちが自分の頭を拳銃で撃ち抜いています。

 そんな中、警察側からヒルコ捜査に参加していた二宮のの子(成海璃子)が、小夢っちと対峙していました。

「ネットに夢中になって、SNSでくだらないウワサやウソを見て、全部わかったつもりになってるバカたち。愚かな人間たちを選別して、新たな世界を作らなければならないんだよ」

 のの子の口から語られたのは、ヒルコの言葉でした。

「おめでとう、おまえには新しい神になる資格がある」

 のの子は小夢っちの首元に呪符を貼り、2人は新世界の構築へと歩き出すのでした。

 これ、ずっとネタバレを書いているわけですが、全然ネタがバレている感じがしないね。なんかピンとくるところがあったら、FODなりNetflixなりで全話見られるので、どうぞ、こちらの世界へ。楽しいよ。

■それは意志なのか

 そこらへんのバカを全員自殺に導き、新世界を作ろうというヒルコ。その本当の正体というのが最終回を前に残された最大の謎になるわけですが、ポイントはそこに何者かの意思が介在するかどうかというところだと思うんですよね。

 2005年に公開された『エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?』というドキュメンタリー映画で、巨大電力会社の不正が描かれたことがありました。エンロンという会社は電気料金を吊り上げるためにカリフォルニアに大停電を起こしたり、むちゃくちゃな額の粉飾をやったりというひどい有様が明るみに出て倒産したわけですが、このドキュメンタリーは「主に誰が悪かったのか」という視点で作られたものでした。

 結果、みんながみんな「株価」という実体のない、なんの意志も持たない単なる数字に従って動いていたというラストは、露骨に資本主義社会の脆弱性を描き出しています。誰かの悪意や、誰かの欲よりも怖いものがある。誰もが気づかずに、そうしたものに付き従って動いていることがある。実際に、あった。

 フィクションとドキュメンタリー、神様と資本主義、このドラマとは真逆と言っていい映画でしたが、そういう匂いを今回の『全領域異常解決室』から感じました。

 あと、ずっと気になってる第1話のモザイクスプレーなんですが、あれはなんだったんだろう。ここまで見てきて、あんな変なポカをやるような脚本家とは思えないんだよな。もしかして、あれも何かの目的を持った何かだったのかもしれないと思うと、ちょっと背筋が寒くなりますね。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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最終更新:2024/12/12 13:00
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