(CNN) シリア反体制派は今週、北部アレッポに続き、政府から中部の要衝ハマも奪取した。反体制派武装勢力を率いる過激派組織「シャーム解放委員会」(HTS、旧ヌスラ戦線)のジャウラニ指導者はその最終的な目標について、独裁的なアサド大統領を打倒することだと語った。
ジャウラニ氏はCNNとの独占インタビューで、国際テロ組織「アルカイダ」の分派組織から形成されたHTSの野望は、アサド政権を終わらせることに他ならないと断言。同氏は制度に基づく政府と「国民が選んだ評議会」を創設する計画について語った。
ジャウラニ氏は現政権の打倒という目標を達成するためにあらゆる手段を使うのは自分たちの権利だとしたうえで、「政権の破滅の種は常に政権内にあった。イランは政権の復活を試み、時間を稼いだ。その後ロシアも政権を支えようとした。しかし真実は変わらない。現政権は死んでいる」と述べた。
軍用車に乗りながら歓喜の声を上げる反体制派の戦闘員=5日、ハマ/Abdulaziz Ketaz/AFP/Getty Images
ジャウラニ氏はインタビューで、戦争で荒廃した国に対する異なるビジョンを描き出した。
反体制派連合体が前進し、支配下に置く領土と人口が拡大する中、ジャウラニ氏は反体制派が支配する地域の管理について、民間人が恐れることはほぼないと主張した。「イスラム統治を恐れる人々は、その誤った実施方法を目にしたか、正しく理解していないかのどちらかだ」
ジャウラニ氏は反体制派がアサド政権の打倒に成功すれば、「統治、制度などの状態」に移行するとの見方を示した。
HTSは、シリアの10年に及ぶ内戦で過激派や聖戦主義者による迫害を受けた民間人や団体を安心させるために活動していると述べた。また、キリスト教徒やその他の宗教的、民族的少数派に対し、HTSの統治下で安全に暮らせることを公に伝えるために尽力しているという。
少数派の安全に対する懸念について聞かれたジャウラニ氏は、「混乱期には特定の個人による彼ら(少数派)への侵害もあったが、我々はこれらの問題に対処した」と答え、この地域では各宗派が何百年も共存してきており、他の集団を消し去る権利は誰にもないと語った。
一方で人権団体や現地の監視団は、HTSがイドリブ県で抗議活動に対して厳しい弾圧を行い、反対派を拷問し、虐待したと主張している。ジャウラニ氏は、刑務所での虐待事件は「我々の命令や指示の下で行われたものではない」とし、HTSはすでに関係者を処罰したと語った。
ジャウラニ氏はまた、HTSが米国、トルコ、国連、その他西側諸国からテロ組織に指定され続けていることについて、「主に政治的なものであり、同時に不正確」だと反論。他の聖戦主義組織の過激なイスラム主義の慣行やより残忍な戦術の一部には反対であり、これらの組織と関係を断つに至ったと主張した。また、民間人への攻撃に個人的に関与したことは一度もないとも訴えた。
CNNの取材班が同日アレッポを訪れると、町は平穏に見えた。反体制派が先週、同市を奇襲し占拠したにもかかわらず、市場は開いており、人々は通りを歩き、生活は続いていた。親アサド政権のロシア軍機による爆撃によって反体制派の支配地域で多数の死者が出た後でさえもだ。
アサド政権による国内の締め付けは協力国によって強化されている。2011年に発生した民主化運動「アラブの春」の影響で反体制派の勢力が拡大する中、イランの革命防衛隊と同国の代理勢力であるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは地上で反体制派武装組織との戦いを支援。空ではロシア軍機がシリア空軍を支援した。
ジャウラニ氏は外国軍がシリアから撤退することを望んでいる。シリアには現在、米国、トルコ、ロシア、イランの軍隊に加え、イランの代理組織が駐留している。同氏は「この政権が倒れれば問題は解決し、シリアに外国軍がとどまる必要はなくなると思う」と話す。
ジャウラニ氏は「シリアは一人の支配者が恣意(しい)的な決定を下すような統治システムではなく、制度的な統治システムに値する」と語る。アサド家は1971年以来、53年間にわたり権力を握っている。統治を維持するため政権は数十万人を殺害し、反体制派を収監し、国内外で数百万人に避難生活を強いてきた。
ジャウラニ氏は「我々はもっと大きなプロジェクトについて話している。シリアの再建について話しているのだ」と続けた。「HTSはこの対話の一部に過ぎず、いつでも解散する可能性がある。それ自体は目的ではなく、この政権に立ち向かうという任務を遂行するための手段なのだ」