【不動産のプロに聞いた】敷金はいくら返ってくる? 退去時の出費を最小限に抑えるワザ
敷金は返ってくる?退去時のうっかり出費を防ごう!
引越し時に気になるのは、賃貸物件を退去するときの修繕費や清掃費。どこまでが入居者負担? そもそも物件を傷付けずに済む方法は?
今回、そんな疑問を解決してくれるのは不動産のプロ・エイブル武蔵小山店の金子史明店長。正しい知識を身につけて、退去時もお得に乗り切ろう!
敷金は返ってくる?そもそも敷金とは
敷金とは、入居者が物件や設備を破損させたり汚したりした際の修繕費用や、家賃の支払いが滞った際の費用に充てるお金のことだ。もし家賃も滞納しておらず、修繕する必要がない状態で退去すれば、退去時に入居者のもとに戻ってくる。
一方、礼金は大家さんへの感謝の気持ちを込めて渡すお金で、敷金とは違って一度払うと戻ってこないことが多い。
敷金はいつ・どのくらい返ってくる?
入居者が物件や設備を破損することなく、家賃の滞納などのトラブルもなければ、敷金は丸々戻ってくるのだろうか。敷金は退去時に返還されるのが通例で、以下のような計算で返還額が決められる。
- 敷金の返還額=支払った敷金−退去費用
退去費用とは、次の入居者を迎えるのに必要な部屋の修繕や清掃にかかる費用のこと。退去費用がかからなければ敷金は全額返還してもらえることになる。しかし実際のところ、支払った敷金が全額戻ってくるケースは少ない。
また、ハウスクリーニング費用を退去時に負担することを条件にしている物件も多い。ハウスクリーニング代として最低でも2万円前後は敷金から引かれると認識しておくと良いだろう。
返ってくる敷金の金額を左右する「原状回復費用」の負担基準
また、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表し、原状回復の費用負担のあり方についての基準を示した。ガイドラインによると「怠けて・わざと」部屋を汚したり損傷したりした場合は、修繕費用を入居者が負担するべきだとしている。一方、経年劣化や自然現象などによる「自然な消耗」が原因の場合は、費用は大家さんが負担するように基準を定めている。
なお、2020年4月の民法改正により賃貸借終了時の原状回復のルールが定められ、「通常損耗や経年劣化については原状回復義務を負わない」ことが明記された。 改正前は敷金の返還が退去時のトラブルにつながることが多かったが、改正によって基準を明確にしたことで敷金の返還が行われやすくなった。
「怠けて・わざと」は入居者負担、「自然な消耗」は大家さん負担
入居者が掃除を怠けたり、わざと壁に穴を空けたり汚してしまったりした場合は、修理費用は入居者が負担することになる。入居者には賃貸物件に対して原状回復する義務があり、入居したときと同じ状態にできるだけ戻して退去しなければいけない。
それに対して、通常使用による経年劣化や日焼けなどの自然現象が原因ならば、修理費用は大家さんの負担となる。物件を入居者が丁寧に使っていても、使い続けていれば多少の汚れや劣化は必ず起きるからだ。
部屋の箇所別 負担区分一覧表
部屋の箇所別に、原則として、入居者負担となる項目、大家さんが負担する項目を一覧表にまとめてみた。この表と照らし合わせて、自分の部屋を今一度チェックしてみてほしい。
入居者負担となる項目
退去時の修繕費用で入居者負担となる項目は以下のようなケースだ。
項目 | 具体例 |
---|---|
畳 | ・タバコの焼け焦げ(カーペット・フローリングも同様) ・飲み物をこぼしたことによるしみ・カビ |
フローリング | ・キャスター付きの椅子などによるフローリングの傷、へこみ |
カーペット類 | ・飲み物をこぼしたことによるしみ・カビ ・家具の設置による床・カーペットのへこみ、跡 |
壁 | ・壁などのくぎ穴、ねじ穴、落書き ・結露の放置により拡大したしみ・カビ ・タバコのヤニ、臭い ・エアコンなどの水漏れを放置したために腐食した壁 |
天井 | ・天井に直接取り付けた照明器具の跡 |
柱 | ・飼育ペットによる柱などの傷・臭い |
水回り、設備 | ・空焚きによる風呂釜の破損 ・長期間掃除しなかったことによるエアコンの故障など ・ガスコンロ置き場・換気扇などの油汚れ、スス汚れ ・風呂・トイレ・洗面台の水垢、カビなど |
やはり判断材料となるのは「怠けて・わざと」という点で、通常の生活をしている中で起こり得ないような過失は入居者が修繕費を負担することになる。
大家さん負担となる項目
次に、修繕費用が大家さん負担となるケースについて見てみよう。
項目 | 具体例 |
---|---|
畳 | ・畳の裏返し、表替え (破損はしていないが次の入居者確保のために行うもの) ・畳の変色(日照・建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの。ただし、入居者が通知義務を怠った場合は入居者負担。) |
フローリング | ・フローリングのワックスがけ |
カーペット類 | ・家具の設置による床やカーペットのへこみ、跡 |
壁 | ・テレビ、冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ ・画鋲、ピンなどの軽微な穴(下地ボードの張り替えは不要な程度のもの) ・壁紙の変色(日照など自然現象によるもの) ・壁に貼ったポスターや絵画の跡 |
天井 | ・照明器具設置箇所の黒ずみ(電気焼け) |
柱 | ・入居者の責任ではない破損など |
水回り、設備 | ・浴槽、風呂釜の取り替え(破損はしていないが次の入居者確保のために行うもの) ・設備機器の故障、使用不能 ・経年変化により、使用するのに支障が生じた場合 |
表のように、物件を貸すことで想定できる「自然な消耗」については大家さん負担で修繕費用を賄うことになる。基本的には掃除や手入れなどを定期的に行い、きれいに物件を使用しているなら修繕費用を請求されるケースは少ないと言えるだろう。
修繕費用の目安
どんなに気を付けていても、うっかり傷を付けてしまう場合もあるだろう。修繕費用のおおよその目安はどのくらいなのだろうか? 代表的なものをいくつか取り上げてみた。
次のページでは、退去時に押さえておくべき掃除のポイントを紹介!