「MERY見れなくなってさみしい、何見たらいいの?」「明日から女子になれない!」
12月7日、女性向け情報サイト「MERY」がすべての記事を非公開化した。
人気モデルや女優を起用した紙の雑誌も発行していた「MERY」。メインの読者は、スマホ世代の10〜20代の女性だ。アプリやブラウザで習慣的に読んでいたユーザーも多い。
Twitterで検索すると「MERY見れないとだいぶキツイ」「早く再開しないかな」などの悲しみの声が多数見られる。
数あるキュレーションメディアの中で、なぜMERYはこれだけ多くの女性に愛されていたのだろう? 彼女たちにとって、どんな部分が魅力だったのか?
もちろん、権利的に問題がある箇所は改善する必要があるが、人気と認知度が抜群に高かったのも事実。スマホ時代のメディアがどうやってファンを獲得していくかのヒントになるかもしれない。
BuzzFeed Newsは、MERYを愛読していた20代の女性3人に話を聞いた。
- カスミさん:22歳、大学生
- ツバサさん:22歳、大学生
- ナナさん:24歳、社会人
電車の中で何したらいいの?
――MERYが非公開になってから数日経ちました。毎日見ていたサイトがなくなるというのは……。
ナナ:もう……とにかく悲しいです。 毎日朝晩電車に乗るとアプリを開いていたので、今は「この時間何すればいいの!?」ってなってます。
ツバサ:そう、ほんとに手持ち無沙汰な感じでさみしい。私も電車に乗ってる時や大学の休み時間にスキマ時間で見てることが多かったですね。とりあえず開いて何かないかな〜って。
カスミ:うんうん、パッと空いてる時間に見てましたよね。私は寝る前によく読んでいたので、なんだか落ち着かない。
――「何かを知りたい」じゃなくて、なんとなく開いているんですね。
ナナ:そうですね。最初は検索でよく引っかかるサイトだなぁと名前を知って「こんな情報まであるんだ!」が積み重なってどんどん「MERY、使えるじゃん」って信頼していくようになりました。
ツバサ:うんうん、デザインもピンクでかわいくて覚えやすいですよね。「かわいいサイト」のイメージが最初だった気がします。
「こんなのないよね」が絶対ある
――「MERY、使えるじゃん」と思った記事って例えばどんなものですか?
カスミ:「アイシャドウの派手な色、どう使ったらいいの?」とか。大きなパレットだと緑とか青とか、普段使いできないものも入ってるんですよ。MERYで「緑 アイシャドウ」で調べると絶対ほしい情報がある。
しかも一重用、二重用で分かれているのでほしい情報が1ページで抑えられるのが助かります。雑誌で同じような特集があったとしても、モデルさんはみんなきれいな二重だったりするので、マネしにくい。
ツバサ:新宿のカフェ、もMERYで探してたな〜。食べログやNAVERまとめもあるけど、友達と行けるおしゃれなカフェを検索で探すのは面倒くさい。MERYなら、自分たちのような女の子向けの情報がちゃんとある安心感がありました。
ナナ:私は就活の時にお世話になった覚えがあります。「黒髪でも重くなりすぎない髪型」とか「リクスーで面接があった夜に遊びに行くための変身ポイント」とか「マスクをつけてもメイクが崩れない方法」とか。細かいことだけど就活生の女子にとってはすごく大事。
カスミ:わかります、正解がほしいんですよね。内定先に行く時、オフィスカジュアルって言われても……と思って検索しました。普段着てるコートでいいのかな? どれくらいのメイクにすべき? って、自分じゃわからないのでMERYに聞きました。
ナナ:そういうピンポイントにほしい情報があるから「あった〜! ありがとうMERY!」ってなる。「MERYにないものはない」の信頼感ですよね。
ツバサ:それが知りたかったんだよ〜、がちゃんとあるんですよね。私が覚えてるのは「去年の福袋の中身の写真まとめました」。
――福袋の中身……?
ツバサ:福袋、あけたら「こんなの入ってた!」ってみんな写真をあげるじゃないですか。初売りセールの前に、去年のInstagramやTwitterの投稿をまとめてくれてたんです。自分で1個ずつ検索しても出てくるんだけど、まとまってると楽だしうれしい。
ナナ:私も見た覚えある。このブランド毎年ショボいな、ってね。
ツバサ:自分がこれから検索しようとしてるものを先回りしてまとめてくれていて「わかってる!」てなりました。
ナナ:「明日かわいくなるために」「クリスマスまで1カ月でかわいくなるために」みたいなリスト記事も結構好きだったな〜。
「夜お風呂で湯船に浸かる」「ちゃんと寝る」なんて当たり前のことなんだけど、気分を上げるためのおまじないのような気持ちで読んでました。「よし、明日はお休みだけど早起きしよう!」とか、そんなレベル。
「雑誌って、重くないですか?」
――本当に生活に密着してるんですね。みなさんファッション誌は買ってないですか?
カスミ:うーん、ちゃんと買ってたのは中学生まで……? ニコラやSeventeen。高校生になってスマホを持ってから、雑誌読まなくなっちゃいました。
ナナ:私もほとんど読まないなぁ、どうしても見たい特集がある時、好きな芸能人が載ってる時くらい。
カスミ:毎月買うと結構な出費になっちゃうし。
ツバサ:私はちょこちょこ買ってますけど、ほとんど付録目当てですね。「美人百花」が多いです。自分より年上の女性向けなので、服の系統は正直好みとはちょっと違うんですが……買ってもちゃんと読まないことも結構あります。
――なるほど、それでも買うんですね。
ツバサ:はい、ほしいのは付録なので。だって……雑誌って重くないですか?
ナナ:うん、スマホよりは重いよね(笑)。
ツバサ:家に置いて、持ち歩くものじゃないから、情報源としてはいまいち使いにくいです。買いたいものが何も決まってないまま、ふらっと「なんか冬服ほしいな〜」くらいで買い物に行くことも多いので、その場で調べたり見たりできないのはちょっと……。
カスミ:あと、単にいらないページが多すぎる。スマホで調べてピンポイントな情報を読めるのになれてると、余計なものが多くて見にくい、ってなります。
カスミ:雑誌の特集って「へえ、そういうのもあるんだ」って受け身になりますよね。たまに読むのは楽しいんだけど、基本的には自分の好みとつながるものをこっちから探しに行く方が楽しいです。
「この色の服、ほしいけど手持ちの服と合わせられるかな?」「このスキニージーンズを中心にコーデしたい」ってアイデアを広げていく感じ。MERYだと、タグを使って他の記事に飛べるのが便利でした。
隅から隅まで「かわいい」世界
――キュレーションメディアやまとめサイトは他にもあると思うんですが、MERYとは違いますか?
カスミ:うーん、ピンと来ないですね。
ツバサ:なんか違うよね。
カスミ:NAVERまとめ、コスメやファッションに関するちゃんとした情報、そもそもあんまりないです。内容と関係ない上に、ダサい写真が多いのもテンション下がります。外国人のお姉さんの写真も、植物や空のイメージ写真も、絶対いらない。
ナナ:写真、本当に大事ですよね。私もMERYがなくなっちゃったから他のサイトも見たけど、どれもそんなに惹かれなかった。
MERYはデザインも文章も隅々までかわいかった、世界観の完成度が高かった、って改めて思いました。私、役に立つ情報というより、かわいい世界が見たかったんだ〜、って。
ツバサ:うんうん、公式Instagramもピンクでトーンが揃ってていつもかわいかった! かなり見てました。大学の休み時間に「見て、これかわいくない?」ってやるのはMERYでした。
――SNSでシェアするんじゃなくて、直接見せるんですね。
ツバサ:そうです、そうです。あとはスクショを送る。
「これ、怪しいな」もあったけど
――この記事本当なのか怪しいな、と思ったことはありますか。
カスミ:ダイエット関連は怪しいのもありました。「食べても絶対太らない食材」とか「ここに絆創膏を貼ると痩せる!」とか。言い過ぎでしょ、って言うのはちらほら。
ナナ:でもそういうのって、ぶっちゃけ普通の雑誌にもあるよね。だから特別MERYの情報が怪しいとは思ってなかったな。
――無断転載や著作権の問題については何か感じていましたか。
カスミ:うーん、正直言って、あんまり意識してなかったですね……。でも今こうなってるということは、問題のある記事もあったんですよね。クリーンになってまた再開してくれたらいいな、と思っています。
ツバサ:InstagramやTwitterの引用も多かったけど、それもどこまでOKだったのか、今もよくわかってないです。「紹介されました」と喜んでいる人も多かったですし、私もMERYをきっかけにフォローした人もいます。
カスミ:医療情報は人の生死や健康に関わる専門的な情報ですし、間違いがあっては困るのはわかります。ファッションやメイクはいろいろな視点があっていいと思うし、MERYにはまた復活してほしいです。
ナナ:MERYの「かゆいところに手が届く」信頼感は特別だったので、なくなってほしくないです。いろいろな問題が解決して、また再開してくれる日を待っています。
ここまで読んで、彼女たちの著作権への意識が低いともやもやする読者もいるかもしれない。
そのことは否定しないし、再三指摘されているように、実際の誌面に写真の無断使用や文章のひょう窃など問題がある記事があったのは事実だ。
しかし「WELQはよくないと思うけど、MERYが閉鎖したのはよくわからない」は、個人的には自然な感想だと思った。作るプロセスに権利侵害があるかもしれない、と読み手に疑わせる必要がある状況が、そもそもおかしい。
当たり前だけど、読者に余計な心労をかけてはいけないと思う。コンテンツを信じてくれている人に、作り手が一方的に“共犯関係”を強いるのはずるいと思う。
女の子たちの嘆き悲しむ声をTwitterでスクロールしながら「MERYは私たちの味方」と愛着を持っていた人がこれだけいたんだ、と感じた。彼女たちが寄せている愛と信頼は、SEOでは買えない。
何度も言うけど、もちろん問題がある部分は改めなくてはいけないに決まってる。その上で、もっとたくさんの人が幸せになれる形があるんだと思う。あってほしい。そういうインターネットを私は信じたい。