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リモートワークはやっぱりイノベーションを阻害する。『ネイチャー』の大規模調査が示唆、在宅勤務時代の働き方の最適解

Aki Ito原文編集・常盤亜由子

Jan 15, 2024, 7:00 AM

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Andrea Chronopoulos for BI

コロナ禍以前、ほとんどの経営者は在宅勤務が生産性を低下させると考えていた。オフィスに出社させてきちっと管理しなければ、従業員は自宅でパジャマ姿のままくつろぎ、ネットフリックス(Netflix)に夢中になって何もしないだろうと思っていたのだ。

だが、リモートワークと出社を混合させたハイブリッドワークが3年半にわたって実施されたことで、今ではこの考えが間違っていたことが分かっている。実際、ある研究によると、ホワイトカラーの専門職は、在宅勤務をすることで、仕事量を減らすどころかより多くの仕事をこなせることが確認されている。

しかし、生産性は労働の尺度の1つに過ぎない。しかも、それは限定的な評価だ。日常的に労働者がこなす仕事の「量」は、その仕事の「質」とは大きく異なる。

例えば、1時間あたりのアウトプットからは、イノベーションがあったかどうかは分からない。ここでいうイノベーションとはつまり、将来を大きく変えるようなイノベーティブな製品やサービスに発展するような新しいアイデアを、チームが生み出したか、というようなことだ。

生産性は、短期的にはビジネスを回していくうえで重要だ。しかし、刻々と変化する経済において、企業が生き残り、勝ち残る力をもたらすのはイノベーションだ。

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ブレイクスルーが生まれやすいのはどちらのチーム?

それでは、在宅勤務は社内の協力関係を阻害し、イノベーションを妨げるのか。多くの経営幹部はそう信じているが、それを証明する優れた研究はあまり見当たらない。

結局のところ、リモートワークが大規模に行われるようになったのは2020年以降であり、新しいアイデアを現実世界で応用して展開するには、数十年とは言わないまでも数年はかかる。まだ起こっていないことを評価するのは難しい。

しかし、先ごろ学術誌『ネイチャー』に掲載された新たな大規模研究では、リモートワークがイノベーションに及ぼす影響について、新たな分析が行われた。

この研究の核心部分では、優れた手法が用いられている。リモートワークが企業で実施されたのは比較的最近のことだが、科学者や発明者は何十年にもわたって遠距離間で協力し合ってきた。そこで、オックスフォード大学とピッツバーグ大学の研究者たちは、世界中の過去半世紀にわたる2000万件の科学研究と400万件の特許申請を精査した。ブレイクスルーを実現して、より優れた成果を挙げたのは、遠隔で共同作業したチームと、同じ場所で一緒に働いたチームのどちらだったのか?

この研究者たちの発見は、注目すべきものだ。それは、経営者、特に事業が一瞬にして重要性を失うかもしれないシリコンバレーの経営者にとって重大な示唆を含んでいる。

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