「家賃3万のNFTシェアハウス」が予想以上の大成功。開始1年、成功の鍵は“報酬トークン”

土屋咲花[編集部]

土屋咲花[編集部]

Oct 12, 2023, 8:15 AM

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外観
Roopt神楽坂 DAOの外観。左がキッチンやワークスペースを備える母屋、右が居住棟。10人が寝泊まりできる。築60年前後の物件をリノベーションした。
撮影:土屋咲花

意思決定をする人や機関が存在せず、組織内のメンバー一人ひとりによって自律的に運営される組織「DAO(分散型自律組織)」のような仕組みに基づいて運営されるシェアハウス「Roopt神楽坂 DAO(ループトかぐらざかダオ)」が、2022年9月のオープンから1年を迎えた。

物件の管理運営はオーナーが行うのが一般的だが、Roopt神楽坂はNFT(非代替性トークン)を活用することで、入居者と他の出資者が自律的に運営に関与するのが特徴だ。

仕掛け人である、ソーシャルメディア事業などを展開するガイアックスと、空き家を活用したシェアハウス事業などを手がける巻組が、1年間の成果を発表した。

▶関連記事:神楽坂で「NFTシェアハウス」が始動。住まいの権利を3万円で買う…ガイアックスらが仕掛け人

売り上げは想定の1.7倍

内装
母屋の1階。コワーキングスペースとして利用できる。
撮影:土屋咲花

Web3とか、DAOとか、それって儲かるの?という懸念があるんじゃないかなと思いますが、無事1年経ったので今日発表させてもらいます」

ガイアックスの上田祐司社長は冒頭でこう切り出した。

「Roopt 神楽坂 DAO」は、巻組が空き家からリノベーションした木造の一軒家。運営の仕組みはこうだ。

まず、240個のNFTがあらかじめ発行されている。NFTの価格は1個につき3万円で、1トークンを購入すると1カ月の賃貸居住か、7泊8日の宿泊滞在のいずれかの権利を得られる。

さらに、トークンの購入者はDiscordというチャットアプリに招待され、ここで物件の管理や運営についての議論に参加する。保有するトークン数に合わせて、議決権を持つ。

実際、1年間運用してみた結果はどうだったのか。まず、家賃収入など売り上げは想定を1.7倍上回った。利益率は37%だった

巻組の渡邊享子代表取締役は、次のように話す。

「元々赤字の物件だったので、最初は『(入居者が)6割くらい埋まればいいかな、利益も4%くらいで』と考えていました。

でもDAOという組織を運営することによって、不動産の売り上げにも貢献したことが大きい成果だったのではないかと思っています」

入居率が8割程度と高い状態で推移したことに加え、入居者が運営に携わるDAOの仕組みによって運営コストが低減でき、高い利益率を実現できたという。

渡邊さんによると、シェアハウスの運営はコミュニティの維持費用にコストがかかる。Roopt神楽坂では掃除や内見対応など、計205時間分のシェアハウス運営の仕事をDAOメンバーが自発的に担った。巻組によると、205時間は掃除を外注した場合で換算すると、4年分に相当するという。

住人による運営の結果、巻組が運営する通常のシェアハウスでは年間30回程度スタッフが内見対応や状況確認のために訪問するのに対し、Roopt神楽坂では3回で済んだ。これらが管理コストの低減につながった。

「一般的に、巡回したり、掃除を外注したりして運用すると、10人規模の家だと(月に)15万円から20万円くらいは維持管理費がかかってきてしまいます。そこが半減したような形になります」(渡邊さん)

DAOで善意を持続可能な形に

渡邊さん
巻組の渡邊享子代表。
撮影:土屋咲花

とはいえ、掃除などは他のシェアハウスでも住人の善意によって行われるケースはある。

DAOが異なるのは、居住者が運営に貢献した場合「報酬トークン」が得られる点だ。

家の掃除や内見の案内など、担った仕事に応じて「報酬トークン」が付与される。入居者とトークンの保有者はDiscord上で議論しながら家の運営について決めていくが、この報酬価格もその議論を通して決められたという。

例えば、内覧対応をした場合は報酬トークンが4トークンもらえる。これは現金で1000円相当という。「報酬トークン」は3万円相当貯まると家賃に充当できる仕組みになっている。

運営への貢献を居住者の善意で終わらせず、報酬トークンという明確なインセンティブをもって評価することによって、持続可能性をもたらしている。

現在、報酬トークンの付与は都度アナログな作業で行われているが、今後はブロックチェーン上に書き込まれたプログラムに基づいて契約を自動的に執行する仕組み「スマートコントラクト」によって対応していきたい考えだ。

入居者は20代中心、協業も生まれる

住人
住人の一人、司東海秀さん。2022年11月から入居し始めて、もうすぐ1年になる。
撮影:土屋咲花
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巻組からは運営費として100万円が拠出され、Discord上の議論で使い道が決められた。写真のスマートスピーカーも、住人らの議論で導入が決まった備品の一つ。
撮影:土屋咲花

Roopt神楽坂は、入居対象を「学生起業家」を中心に募集した。結果的に、入居者は企業を志す20代の学生が大半を占めている。その他はエンジニアや個人事業主で、NFTを使った運営の仕組みを採用していることもあり、ITリテラシーの高い人たちが集まったという。

入居者同士の交流から協業が生まれるなど、コミュニティとしても機能した。

2022年11月から入居する会社役員の司東海秀さん(19)は、このシェアハウスで出会った住人がきっかけでAIメディアの運営に役員として携わるようになった。

「責任を分散して、 みんなでこういい場所を作っていこうっていうような気持ちが自然と生まれてるんじゃないかなっていう風に思います。入居者を通じて仕事が得られたり、DAOのコミュニティの方に誘われて一緒にタイに旅行したりと、ここは僕にとって聖地のような場所」

と話す。

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