「社会をより良くするために、ユーザー目線でプロダクトの改善を続けてきた。それなのに私達社員に対してはこんな冷たいのか…」
グーグルの日本支部である「グーグル合同会社」の社員が労働組合を結成し、2023年3月2日、都内で記者会見を開いた。
グーグルは2023年1月、全世界で1万2000人を解雇すると発表。
日本のグーグル合同会社においては、「2週間以内に退職を決めた場合、退職金を増額する」などとしたメールが一部の社員に届いたという。
一方的な解雇に対抗するため、グーグル合同会社の社員が労働組合を設置。今後、人員削減の合理性があるのかどうか、解雇を回避する努力をしたのかどうかなど説明を求めていくという。
社員50人以上が労組に加入予定
1万人以上の解雇方針の後、日本のグーグル合同会社では、社長名で「3月に何らかの通知をする」と全社員を対象に通知があったという。
この通知を受けた社員が、東京管理職ユニオンに相談し、グーグル・ジャパン・ユニオンを結成した。
ユニオンでは説明会の開催などを続けており、3月にはユニオンに加入する社員は50人を超える規模になる予定だという。
この日の記者会見にはユニオンに加入する9人の社員と東京管理職ユニオン代表が参加した。
9人の社員は日本人に加え、外国籍の社員もいた。会見に参加したアメリカ国籍のキャシーさん(29)は次のように話した。
「就業ビザで働いているため、仕事を失ったら日本にいられなくなってしまう。日本を第2の故郷と思っているのに、今の生活を失うのは怖い。毎日不安を感じてる」
社内の転職によって来日し、10年以上グーグル合同会社で働いているというドイツ国籍の男性は次のように話した。
「日本のグーグルでスキル的にぴったりなポジションがあった。安心して働ける環境だと信じてたのに、世界で職を失う社員が続出している」
いきなりメールで「退職金の積み増し」提案
労働組合を結成した社員らが求めている一つが、解雇についての説明だ。
記者会見では、会見当時の朝に組合員を含む、一部の社員宛てに届いたという、退職の条件などを示す「退職パッケージ」についてのメールも公開された。
メールでは、直接解雇である旨を伝えたり、退職に応じてほしいとする内容ではないものの、以下のような内容が提示されていたという。
- 3月2日から5月31日までの90日間の期間、給与が支払われる
- 解雇の手当を支払うが、今日より14日以内(3月16日まで)に退職に合意すると多く支払う
- 未使用な休暇についての支払い
- 再就職斡旋サービスの利用
- ビザのサポートや、メンタルヘルスサポート
このメールは一部の社員にのみ送られているといい、メールを受け取った社員からユニオンへの問い合わせも複数あるという。
ユニオンでは今後、日本における解雇の規模などを明らかにし交渉につなげるという。
「日本では許されない」
この通知について、会見に参加した社員からは「一方的にメールをうけとり、日本の労働法を知らなければ、退職に応じるしかないと考えてしまう人もいるのではないか」と話した。
東京管理職ユニオンの神部紅書記長は「組合としては退職パッケージに応じるつもりはない」とし、次のように話した。
「アメリカではGAFAなどで大規模な解雇が起きているが、日本においてはそんなことはできない。ちゃんと解雇の理由を答えさせる必要がある」(神部書記長)
ユニオンではすでにグーグル合同に団体交渉を申し入れており、解雇の合理性などについて説明を求めるという。
また今後、必要に応じてグーグル本社に対しても働きかけをしていくという。
日本の労働者のためにも……
GAFAを始め外資系の企業では、レイオフが頻発して起きる。
働く側も解雇を考慮している面もあるが、神部書記長は「もちろんこれを機に転職する人もいるでしょうし、ユニオンに入るかどうかはその人の選択。私たちとしてはこれまでと同じように働き続けられるように戦っていく」とする。
組合員の1人でグーグルで12年間働いているという橋本良さん(36)は、今回ユニオンに参加した理由について、次のように話した。
「入社後に人事からは『グーグルの入社試験は難しいもので、入社した人材を大事にする会社』だと言われていた。
いまは他国の同僚が突然解雇を告げられ、その瞬間から連絡できなくなるという事例が他の国で起きている。この先の日本の労働者のためにも声を上げていきたい」