お金について、多くの大人が知らない3つのこと。金融リテラシー講座の元スタッフの視点から

Allison Nichol Longtin原文翻訳・小森谷美江子、編集・長田真

Feb 25, 2023, 12:00 PM

PV8,771
X
shutterstock_1576327759
大人の多くがお金の管理法を学校で学んだ経験がない。
metamorworks/Shutterstock
  • 金融リテラシーを教える非営利団体で働いていた筆者は、そこで自身もお金に関して多くのことを学んだ。
  • そのうちの1つは、大人は助けを求めることが苦手で、ほとんどの人が学校でお金に関する勉強をしていないということだ。
  • さらに「良い借金」と「悪い借金」の違いと最も有効な貯金の方法も学んだ。
30代までに学んでおきたい、「資産形成」5つの鉄則。経済的自立の実現のために

30代までに学んでおきたい、「資産形成」5つの鉄則。経済的自立の実現のために

「確定申告の方法ではなく、平行四辺形の勉強をしておいて良かった。この時期になると、特にこの知識が役に立つ——」

確定申告のシーズンになると、このフレーズを記した画像やツイートがよく拡散されている。もちろん、これは皮肉だ。学校では実用性のない平行四辺形については教えてくれるが、確定申告の方法は教えてくれないという意味である。これに心底共感している人は、私だけではないだろう。

私は大学院を修了している。そんな私の両親には、金融リテラシーや先見の明があり、私のために教育費を確保する財力もあったようだ。私が生まれてすぐに教育資金のための貯蓄プランで貯金を始め、大学で最初の学位を取得するための学費を出してくれたのだから。おかげで、私は学生ローンをほぼ抱えることなく学位を取得することができた。そのため、大学院の修士課程に進んだ時の学費は、自分で賄うことができたのだ。

その後、私は30歳にして、金融リテラシー関連の全米規模の非営利団体で働き始める。そこで、実は自分がお金の管理について、ほとんど知識がなかったことに、はじめて気づいた。その時の驚きを想像できるだろうか。お金の管理法は、この世界で成功を収めるために、非常に重要な知識だ。しかし、不思議なことに、私だけに限らず、多くの人にとって謎に包まれたままなのだ。

私の仕事は、ワークショップの進行係や金融リテラシー講座の講師と、あらゆる分野から集まった受講者たちを直接つなぐこと。さらに、金融リテラシー講座のポートフォリオの管理まで、プログラムの全てを把握することだった。

その業務の多くは、金融リテラシーの必要性への関心を高めること。そして、生涯学習の提唱に関わることだ。私はすぐに、リテラシーはさまざまな分野に幅広く存在するという考え方を受け入れた。つまり、誰にもリテラシーの高い分野もあれば、知識の乏しい分野もあるということだ。

このNPOでの仕事を通して、私は自分の金融リテラシーが十分ではないという事実を受け入れ、お金の管理に関するスキルを向上させるべく行動を起こした。その過程で学んだ、特に重要な3つを紹介しよう。

1. 多くの大人が金融知識の欠如を恥じていること

世の中には、重要なことでありながら、ほとんどの人が学校で教わったことがなく、試行錯誤しながら徐々に身につけていくものがある。有効なお金の管理法もその1つだ。

生活に直結したスキルを学ぶ教科の中には、家政学や公民のように学校で必須科目になっているものもある。だが、金融リテラシーが履修科目に入っている学校はほとんどない。私は家庭科でパイの焼き方やクッションの作り方を学び、技術の授業で本棚の作り方を教わったが、お金に関してはほとんどすべて、苦労しながら地道に学んだ。

誰もが知っているはずのことを知らないのは恥ずかしいことだ。学校でお金の管理の仕方を学ぶ機会に恵まれなかった私たちの大半は、助けを求めることも恥ずかしく感じてしまう。

仕事を通して大人の受講者や講師と接する中で、私は似たような話を何度も繰り返し聞いた。彼らはお金の管理法を学校で学んだ経験がなく、それを認めることを恥ずかしいと思っていた。金融の専門用語、金融サービスやその仕組みに関する不明瞭な説明、クレジットカードなどに関する間違った理解から生じる誤った消費行動が、多くの非営利団体が人々の金融リテラシーを向上させるための教育コンテンツを企画するきっかけとなっている。

現在、借金の削減、貯蓄の構築、お金に関する権利の理解、銀行の基本的な活用法などに焦点を当てた無料講座がたくさんある。だから、金融リテラシーを高めたければ、現状の知識レベルに関わらず、まずは自分の銀行に問い合わせてみるといい。大手銀行の多くが非営利団体による講座や教材制作にスポンサーとして関わっている。政府が後援・推薦するプログラムを探してみるのも良いだろう。

2. 借金には「良い借金」と「悪い借金」があること

借金には、良い借金と悪い借金があるというのは事実だ。北米では、銀行や金融システムは信用(クレジット)に依存するように設計されている。家を買うにも、アパートを賃貸するにも、車を借りるにもクレジットが必要で、就職する時でさえ、クレジットが必要な場合もある。クレジットが良いということは、借金を期限内に返済している履歴があることを意味し、クレジットが悪いということは、その逆を意味する。しかし、クレジットを構築するためには、クレジットカードやローンなど、お金の管理能力を証明するものが必要になる。

ほとんどの大人が、借金は全て悪い借金だと考えるが、住宅ローンはどうだろうか? 初めてのマイホームを現金で購入する人はそういないだろう。返済可能な範囲内である限り、一般的に住宅ローンは良い借金と見なされる。時間をかけて安定的に返済し、良いクレジット履歴を蓄積し、お金を貸しても安心な人間だと債権者に印象付けることができるタイプの借金だ。クレジットスコアが良いということは、より可能性が広がることを意味する。

私は約1年前に初めてのマイホームを購入し、都会から小さな街に引っ越した。住宅ローンは、以前住んでいた1ベッドルームの慎ましいアパートの家賃の半分より少し多いくらいだ。家を買うまでは、約10年ほど借金のない暮らしをしていたので、借金をするのが良いことだという考えにたどり着くまで時間がかかった。だが、金融リテラシー教育に触れていたおかげで、借金に対する見方を変えることができた。家を所有するという大きな決断をめぐる精神的・感情的なプロセスを乗り切ることができたのだ。

一方、返済できないほどの金額をクレジットカードで支払ったために溜まってしまった負債は、悪い借金となる。生活費や食費などの支払いにクレジットカードを使うのは、月末毎に完済できる範囲内であれば、良い借金となる。今となっては単純明快に聞こえることだが、恥ずかしながら金融リテラシーに関する仕事に就いた頃の私は、これも知らなかった。

3. 「自分ファースト」で無理なく貯金&投資できること

私が学んだもう1つのシンプルかつ有効なお金の管理の原則は、自分のための支払いを優先するということだ。お金の心理学によると、支払いは痛みを伴う行為であり、何かにお金を払うたびに、我々の脳の痛覚中枢が刺激される。本当の話だ。そこで、苦痛を避け、できるだけ負担を感じずに貯蓄と投資をする最善の方法は、基本的な生活費をカバーできる金額は残しつつ、毎月自分の銀行口座から自動振替する設定にすることだ。毎月自動的に口座から直接振り替えられれば、元々存在しなかったお金、本来使えるお金ではなかったと捉えることができるだろう。

収入に変化があるたびに、私は毎月の自動振替額を調整している。家のリノベ費用のための預金口座と、投資口座への振り替えだ。昨夏、終身雇用で固定給をもらっていたNPOを退職し、フリーランスになった時は自動振替額を減らしたが、自分の平均収入が大体分かってきたので徐々にまた振替額を増やして調整している。

本質的に、お金とは感情的なものであり、ほとんどの西洋文化において、お金の話はタブーである。したがって、学校で金融リテラシーの教育を始め、これほど重要な話題を不快に感じることなく話せるようにならなければ、現状を変えることは難しいだろう。ライター&教育者として、私は金融リテラシーの向上のために働き、提唱し続けるつもりだ。金融リテラシーを高めようと努力する大人たちを支援してきたおかげで、私の自信も高まり、お金の管理に関して自分の判断を信頼できるようになった。

「老後資金」作り、正しく実行するための4ステップ

「老後資金」作り、正しく実行するための4ステップ

X

あわせて読みたい

Special Feature

BRAND STUDIO