


ソフトバンクグループ(以下、SBG)の子会社で、モバイル事業を展開するソフトバンクは5月8日、ポータル事業大手のヤフーの連結子会社化を目的とした、株式の追加取得を発表した。新株取得額は約4565億円を見込む。
ヤフーが自己株式の公開買い付けを完了し、ソフトバンクがヤフー新株式の取得を完了した場合、ソフトバンクの持ち株比率は現状の12.08%から44.64%になる見込みだ。

なぜ、ソフトバンクが「連結子会社化」するのか?

ソフトバンク社長の宮内謙氏は、ヤフーを連結子会社化する理由を、発表同日に開催した2019年3月期決算会見の中で、3つあげている。
- 新領域(非通信)の強化
- 戦略・サービス・リソースの統合
- ヤフーの成長を加速、シナジーを最大化
今後具体的なシナジーの内容は「まさに戦略」(宮内氏)ということで詳しくは語られなかったが、同氏は新領域の中でも急成長が見込める分野として、PayPayなどのフィンテックや、ビッグデータによるビジネスに言及していた。
また、人材を含めたいわゆる「リソースの統合」については、ヤフーが持つ3000名以上のエンジニアや営業部隊について触れ、「(それらの人材が)ソフトバンク側のエンジニアや営業チームと合わさることで、より早いスピードで成長が見込める」と宮内氏は話した。
宮内氏は質疑応答で、ヤフーの連結子会社化に向けての検討は「2月から始まった」と話している。質疑の内容をきくかぎり、検討のきっかけの1つになったのは、話題のキャッシュレス決済「PayPay」だ。

PayPayはもともとヤフーとソフトバンクが同規模で資本参加をしたジョイントベンチャーとして知られる。PayPayではヤフーの有料会員向けやソフトバンク・ワイモバイル契約者向けにキャッシュバックキャンペーンの優遇などを行ってきた。
しかし、それらの協業の中で宮内氏は「それぞれの利益拡大を目指していく以上に、PayPayのような企業群を持って、発揮すべきシナジーが必要」と感じ、連結子会社化へと舵をきったと語っている。
どの携帯電話事業者にも当てはまるが、既存の通信事業の成長は頭打ちになっている。実際、2019年3月期のソフトバンクの通信サービス事業の売り上げ(モバイルとブロードバンド事業の合算)は、1兆9897億1700万円で、前年同期比では4.4%増。モバイル単体では2.5%増に留まっている。
ソフトバンクは、ヤフーの持つサービスのノウハウや開発力、ビッグデータをさらに活用できる組織になることで、目標とする「営業利益1兆円企業」の達成に一歩近づいた。
(文・伊藤有、小林優多郎)